はじめに 世界解釈において「分解」ほど人間に愛されたものはないのではないかと思う。幼い頃のアルバム写真に写る背丈の小さな私と無残に解体された玩具。水を電気分解した化学の実験。仕事場でブレイクダウンという声が聞こえる。仕事を小さな粒度に分けることをそう呼ぶらしい。 ただ、単に大きくて複雑な何かを一度に認知できないだけかもしれない。にしても、とかく人間は小さな単位を追い求めるような気がする。だから数学においても、分解という手段に打って出るのはなんら不思議なことではないと思える。 行列を行列で分解する とある正方行列$A$が固有値$λ$、固有ベクトル$p$を持つとしましょう。このとき、これら3つの文字が方程式$Ap = λp$で結ばれます。これが前回の内容でした。 実は1つの行列に対して固有値・固有ベクトルの組は複数存在する場合があります。仮に$n$個の組があったとすると、 $$Ap_1=λ_1