――『手のひらの京』は京都に暮らす奥沢家の三姉妹を描いたひさしぶりの長篇となりますが、綿矢さんが生まれ育った京都を小説の舞台にされたのは、本作が初めてでしょうか。 京都を舞台に書きたいという気持ちはずっとあったんですけど、これまではそれに合うテーマが見つからなくて、書きたい内容が特に京都を舞台にする必要がなかったので書いていませんでした。今回、京都の季節と場所を紹介しながら、ひとの心の動きを書きたいと思って、初めてこれなら書ける、と思いました。三姉妹を主人公にしたのは、いろんな性格の女の子たちを京都を舞台に書きたかったからです。 ――おっとりした長女・綾香、恋愛体質の次女・羽依(うい)、自ら人生を切り拓いていこうとする三女・凜、それぞれの目から見た京都の街がとても鮮やかに描かれています。 綾香はなかなか好きな人がみつからなくて、三十歳をすぎてすこし焦りはじめていて、羽依は逆に、自分が本当は
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