「約束が違うじゃないですか。ちょっと困るんですよね」。受話器から聞こえてきた怒りを含んだ声。数日前に取材した区役所の担当課長からの電話だとすぐに分かった。子供たちのイベント取材で「顔がわからないように撮影を」と頼まれたのに、うっかり忘れて顔が分かる写真を載せてしまったのだ。電話を受け顔から血の気が引いた。でも、なぜ、顔が写っていてはだめなのか。うかつにもそのときは聞きそびれたが、あとで知ったのは、ほほえましいイベント取材であっても、気を配らねばならないさまざまな事情があるということだった。(社会部 小川原咲) いい写真を撮りたい 記者になって1カ月ほどたった5月。大阪市内の区役所で、地元の園児と小学生が参加して植物の苗を植えるイベントがあることをHPで知り、取材に行った。 その1週間前、植物園で撮影したバラとシャクヤクの写真が、構図を変えて何十枚も撮ったものの、ほとんど使いものにならず、先