ヒューマンインタフェース学会誌 Vol.4 No.3 2002 特別寄稿 ユビキタスの混迷の未来 マサチューセッツ工科大学 メディアラボタンジブル・メディア・グループ 石井 裕 ユビキタスの文脈は今ひどく混迷している。「至る所に ある」という「ユビキタス」の辞書的な意味が転じて、日 本のメディアでは「いつでも・どこでも」ネットアクセス できる多様性に富んだモバイル・コンピューティングとい う意味で使われているように見える。一人一台を越えて、 各人がたくさんのコンピュータを使う未来像は、小型情報 通信機器販売促進の旗としては、確かに有効な宣伝コピー ではある。 しかし、「いつでも・どこでも」(any time、any place)は、 何ら新しい概念ではなく、かつて「高度情報化社会」や「マ ルチメディア社会」が華々しく論じられた時に、何度も出 てきたスローガンだった。では、ユビキタスに