『雨月物語』巻之四「蛇性の淫」現代語訳 1.出逢い 2.太刀 3.太刀 4.捕縛 5.再会 6.正体 7.再婚 8.道成寺 怪異小説の傑作『雨月物語』から新宮近辺を物語の主な舞台とする「蛇性の淫」を現代語訳してご紹介。 いつの代であったか、紀の国三輪が崎(みわがさき。和歌山県新宮市三輪崎)に大宅(おおや。朝廷直轄領に置かれた官吏を尊敬して呼んだ呼称という。ここでは村長の姓として用いている)の竹助という人がいた。この人は海の幸で栄えて、漁夫たち大勢養い、大きいのや小さいのや様々な魚を穫れる限り穫って、家豊かに暮らした。 男の子が二人、女の子が一人いた。長男は素直でよく働いた。二番目の子である娘は大和の人に妻として求められてそこに行った。三番目の子は豊雄といった。人となり優しくいつも雅びなことばかり好んで、自力で生活を立てていく気持ちがなかった。 父はこれをこれを憂いながら、「財産を分け与えて