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ブックマーク / ameblo.jp/kyupin (59)

  • 『一生住むならどこが良いか?』

    時々、夫婦で、一生住むならどこが良いか?という話が出る。嫁さんは一生住むなら東京なんだそうだ。あまりにも何も考えていない安易なものだが、女性が都会好きに傾くのはわからないでもない。 一応、個人的に海外は論外である。これも嫁さんはわかっていないようだったが、僕が色々話したところ、「海外に住むのは意外に困ることが多い」くらいはわかってきている。(例えば兵役義務がある国←シンガポールに家族で移住した人が唖然としたという) 先日、テレビで大橋巨泉氏が出ており、クイズダービーが放映されていた。期間限定、つまり今回だけである。久しぶりだったし問題も面白いし十分に楽しめた。 現在、大橋巨泉氏は癌で闘病中である。彼は日で治療を続けているが、おそらくオーストラリアで治療を受けた場合、高度医療だと治療費が莫大になることもあると思われる(無料の病院にかかれる資格があったとしてもそうせず有料の病院に行くだろう)

    『一生住むならどこが良いか?』
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    pub99 2015/05/27
  • 『睡眠薬を増やしてくれと言うと、できないの一点張り』

    ある時、ずっと以前はうちの病院に通院していたが、ある事情があり、他の病院に転院していた患者さんが戻ってきた。 うちの病院では、基的に出入り禁止にならない限り、舞い戻るのは可である。 その患者さんによると、睡眠がまったく不安定で、主治医に訴えてもそれ以上増やせないと言われたという。その一点張りだというのである。 現在、昨年10月から向精神薬の処方制限が行われており、眠剤は2剤までに制限されている。そのような理由から、処方できないと言われたのだと思われる。 あまり患者さんは意識しないかもしれないが、不眠は日中の調子が悪いから生じていることも稀ではなく、時にその理由が身体疾患のこともある。(重要) したがって、単に眠剤を増やせば眠れるというわけではない。特にベンゾジアゼピン、ロゼレムやベルソムラのような新規の睡眠薬はそうである。ただし、麻酔薬に近いものは別である。 このようなことから、まず日中

    『睡眠薬を増やしてくれと言うと、できないの一点張り』
  • 『透析前にリボトリール1㎎服薬』

    リエゾンでは、透析患者の苦痛について何とかしてほしいと言ったものがある。また、認知症ないし精神症状があり、透析中の不穏状態を改善してほしいと言ったものもある。 前者は人の希望だが、後者は周囲、つまり医療現場で働く人たちのニーズである。 広いフロアにある透析機器とベッドにいる患者さんの光景は、ちょっと驚く特殊なものだ。非日常で、見慣れない人にはあたかもSF映画のように見える。 過去ログでは、透析患者の透析中の苦痛についての記事がある。「臓器移植と推定同意 」から、抜粋。 腎不全に至り透析を受けざるを得なくなった人の10%はわりあい快適に過ごせる。10%は苦痛が酷いといわれている。日は健康保険制度も関係しているが、先進国中100万人当たりの透析患者数が多い国である。日では500人に1人が透析を受けている。 その時のコンサルト内容は、この10%の人たちの苦痛である。しかもこのケースでは、実

    『透析前にリボトリール1㎎服薬』
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    pub99 2015/01/31
  • 『占い師と患者さんの話』

    一部の患者さんに、占い師好きの人がいる。そのような人は、しばしば遠方の占い師の話を聴きに行く。占い師好きの女性患者さんは時に診るが、男性はほとんど見かけない。 占い師以外には、除霊師とか、占いもかなりできる整体師、有名な霊能者、巫女さんも好きなようである。この人たちの相違はなんとなくだがわかる。 そのような占い師ないしそれに近い人に会ったと言われたら、後学のために見立て、内容を聴いておく。 精神科医であれば、患者さん人がどのようなお告げをされ、その結果、精神面にどのような好影響ないし悪影響を及ぼしたかをチェックしておきたい。 いつも会ったために悪い経過になったのなら、今後控えるように指導することも可能だ。基的に占い師にかかるかどうかは、僕は中立の立場を取っている。つまりノーコメント。 一般的に、占い師に会って良いかどうかを精神科医に聴く人はほぼいない。 僕は、漠然とだが占い師は顧客に積

    『占い師と患者さんの話』
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    pub99 2014/03/31
  • 『最も辛いことは、困ったとき相談する相手がいないこと』

    過去ログでは、「精神科医は結局は独学」という恐ろしいフレーズが出てくる。(笑) さすがに、これを最初に聴いたときはショックを受けた。 これはどういう意味かと言うと、精神科では、駆け出しの時ですら、適切な助言をしてくれる先輩がいない環境に置かれることが多いことを言っている。だから、人に頼らず自分で良い選択ができるように独学で学ばなければならない。 創意工夫は、苦境から生まれる。 何か調べものをする際に、注意したいことがある。それは、「統計を信用しないこと」である。もちろん100%信用しないわけではないが、バイアスが常に入っていると言う目で見る。 ちなみに、信用できないとされる3つのものは、確か、 1、新聞の記事。 2、統計。 3、女の涙。 だったと思う。何かの書籍で読んだものだ。これは例えばどのようなことを言っているかというと、過去ログに出てくる抗うつ剤のランキング、 有効性の指標による抗う

    『最も辛いことは、困ったとき相談する相手がいないこと』
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    pub99 2013/09/16
  • 『輪番で来院する患者』

    夜間の精神科患者の診察は、いくらか各都道府県で異なるが、輪番制度を採用している県が多い。これは、各病院で夜間精神科の救急患者を持ち回りで診る制度である。 だから、一般にいかなる精神科病院であっても、夜間に電話をすれば今日はどの病院にかかれば良いか教えてくれることが多い。(輪番病院を教えてくれるという意味) 精神科輪番とは別に、「精神科情報センター」と言う24時間通じる電話窓口があり、ここで聞いても教えてくれる。ただし精神科情報センターは設置されていない県もある。精神科情報センターでは、精神保健福祉士や精神科に勤務する看護師などが対応する。 輪番では、非常に悪化している時は入院治療も受け入れられるように準備しているため、普通、精神科ないし心療内科クリニックはこの制度に入っていない。主に単科の民間の精神病院が携わるが、国立や県立、あるいは総合病院内の精神科も加わっている。 精神科の輪番は普通の

    『輪番で来院する患者』
  • 『病的という言葉』

    研修医の頃、オーベン(指導医)に、症例報告の添削をしてもらっていた。精神科医は精神科医らしく表現すべきで、指導を受けず自由に書くと奇妙な文章になる。過去ログには、今回のような記事がいくつかある。(文学的に書いてはならないなど)。 ある時、「病的」という言葉について注意を受けた。彼によると、「病的」という日語はあまりに漠然としており、精神科医がそう言ってしまうと「何がどう病的なのかわからない」という。 言われてみると確かにそうだと思った。「病的」という言葉には内因性なのかあるいは器質性なのか方向性が見えない。別に見えなくてもかまわないが、もう少し読んだ人が精神症状をイメージできる表現が良い。 その指導が堪えたのか、それ以来、「病的」という言葉を使ったことがない。これは6年以上に渡るブログの中でも1ヶ所も出てきていないはずだ。 彼の意図はたぶん「病的」を安易に使い始めると、細かい表現の工夫を

    『病的という言葉』
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    pub99 2012/10/01
  • 『リストカット痕の治療について』

    過去ログに「現在、受け持ちの患者さんでリストカットがある人が1人もない」と言う内容を書いたことがある。 これは初診患者さんにリストカットがあったとしても、速やかに消失するためである。 現在もリストカットの人は1名もいない。 リストカット痕は見た目が悪いこともあり、人が希望すれば、皮膚科の治療を受けるように勧めている。この治療は自費である(当たり前)。 自費の場合、医院により医療費が決められる。一般的な医療費は知らないのだが、僕の患者さんの話では1回に1万円らしい。(幅があるのではないかと)。 過去にリストカット痕の皮膚科治療を受けた人は、リストカットが再燃した人が1名もいない。 一方、リストカットがいったん終息して、かなり時間が経ち、再びリストカットする人は非常に稀だが存在する。そういう人はその時の病状がかなり重いことが多い。また、再発するような人は以前のリストカット痕の治療をしていない

    『リストカット痕の治療について』
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    pub99 2012/09/21
    "「リストカット痕を消そうと思うこと」が、「社会適応に深く関係している」と言う意味である。リストカット痕が生々しくても全く気にならない人はそれはそれで問題を内包している。"
  • 『研修医時代の勉強会』

    僕が研修医の頃、まだ大学病院も土曜日営業していた。ただし、研修医は外来患者さんを原則持たなかったため、もっぱら病棟の雑用である。 土曜日は午前中も結構忙しかったが、午後も勉強会があり終わるのは3時を過ぎていた。大変な1週間である。 当時、勉強会は正式なものと、自然発生的なプライベートなものが混在していた。だから、後者は出ないなら出ないでも良かったような気がする。 しかし、出てほしいと希望される場合もあり、対応に困った。下っ端は、すなわち同期以外のドクターは先輩であり、断りにくいのである。 同期だったとしても、他科から来た人や他大学から引越しして来た人もいて、随分年齢が上だったりする。全く、身の振り方に困った。 ある日、オーベンに尋ねた。 ○○先生に、△△という勉強会に出てほしいと言われていますが、どんなもんでしょう? オーベンはあっさりしたもので、 そんな勉強会は出なくて良い。 と具体的な

    『研修医時代の勉強会』
  • 『ベンゾジアゼピンが潜在的に悪性症候群に効いている(1)』

    今回の1つの大きなテーマに沿って話を進める予定であり、今回はイントロ的なエントリである。(1つの記事が長くなると読みにくいと思うため。連続ではアップしないつもり) ベンゾジアゼピンは悪性症候群に治療的な薬物であり、抗精神病薬服用中は併用することで予防的に働いているように見える。 だから、急激なベンゾジアゼピンの中断は悪性症候群のリスクファクターである。 アキネトンなどの抗パーキンソン薬の急な中断による悪性症候群もこれと同じメカニズムかもしれない。 おそらく悪性症候群はカタトニアの亜型なので、その治療法や治療薬もこれと関係が深いように思われる。 カタトニアに対し、最も効果の高い治療法はECTである。 内服薬では、かつてはフェノバールなどのバルビツレートが推奨されていた。しかし現代社会ではベンゾジアゼピンであろう。バルビツレートに比べ、ベンゾジアゼピンの方がずっと扱いやすい上に安全だからである

    『ベンゾジアゼピンが潜在的に悪性症候群に効いている(1)』
  • 『広汎性発達障害はなぜSSRIではうまくいかないのか?』

    今回のエントリは、「急に部屋を片付けようと思ったら・・」を補足するものになっている。 広汎性発達障害の人はうつ状態ないしパニック、あるいは全般性不安障害、アパシーなどを呈しやすいため、精神科や心療内科に受診すると何らかのSSRIが処方される確率が高い。 しかし、往々にしてうまくいかない。僕は広汎性発達障害ではないにしても、何割かそういう要素が混入している人にはSSRIは処方せず、もう少し工夫をした薬物を使うことにしている。だから、新患でSSRIを処方する確率は、それ以外の疾患を含めても非常に低い。(全く処方しないわけではない。過去ログ参照)。 まず、広汎性発達障害の人で、厭世観、希死念慮、リストカットなどが主訴の大部分を占めているような人はSSRIなんて怖くて処方できない。だって、次の受診日に来ないかもしれないでしょう。(明らかな希死念慮がある人にSSRIを投与するのはリスキーである。)

    『広汎性発達障害はなぜSSRIではうまくいかないのか?』
  • 『研修医時代の夏休み』

    僕の卒業した頃の研修医は夏休みが2週間与えられていた。しかし原則として2週間連続では取れない(新婚旅行などの特別なケースは可)。 その夏休みは概ね7月上旬から9月30日までに取らないと消滅するのである。今日は9月30日なのでまさに最終日であった。 たいてい1週間ずつ前半、後半に分けて休暇を取り、その不在の間は同期の友人が入院患者さんを診ておく。その間は、患者さんも夏休みといった感じである。だから、この時期は積極的には入院を勧めなかったように思う。スタッフが特に手薄になるからである。 研修医のような下っ端は外来患者は持つことはないので、外来患者さんは問題にならない。研修医は外来に行った時は主に雑用をしているのである。また、ポリクリの学生がやってくる時期は、上の先生の指導を手伝ったり、ポリクリ学生の突飛な質問に答えたりするが、たまに嘘を教えてしまうのはやむを得ない。 それでも、たまに上の先生の

    『研修医時代の夏休み』
  • 『向精神薬には処方難易度の相違がある』

    精神科医から見ると、処方をする側の薬の「難易度の相違」があるといわざるを得ない。このようなことは過去ログで時々出てくるので、ずっとこのブログを読んでいる人はわかると思う。 比較的新しい薬物では、ルーラン、エビリファイ、トピナ、ラミクタールは難しいと思う。 一方、てんかんや双極性障害に使われるデパケンR、リボトリールなどは処方し易い薬物である。 非定型抗精神病薬6剤のなかでは、リスパダール、ジプレキサ、セロクエルは敷居が低いというか、処方する側から見ると、一見、難易度が低い薬物である。 とりあえず、処方することができる。 という安易さがあるが、この3剤は奥行きがあるので、単に処方し易いと言う表面的なものだけでは片付けられない。 処方される薬物には、効果、副作用があり、またそれが時間の推移によって変化していくからである。当初は易しかったのに、次第に迷宮、つまり難しい局面に入り込むこともある。

    『向精神薬には処方難易度の相違がある』
  • 『医局説明会』

    医学部の卒業前の頃、医局紹介という名の飲み会が催される。 料理は概ね中華料理くらいが多かったように記憶している。ただ希望があれば、2次会、3次会、4次会まで行くことがあるので、酒豪と呼べる人がいないと盛り上がらないと言えた。学生より先に酔い潰れては話にならない。 この会の真の目的は兵隊の確保。 その意味では、米軍の海兵隊の募集とあまり変わりがない。兵隊が不足すると、将来関連病院への派遣が困難になり、ローテーションも滞り、深刻な事態になる。元々、個々の関連病院には、 1、 症例を経験するという点で勉強になるかどうか。 2、 上の先生に優秀な人がいるか。 3、 報酬。 4、 僻地かどうか(つまり暮らしにくさの程度)。 5、 派遣される期間の長さ。 等の点で良し悪しがあった。どこに派遣されるかは多少は希望ができるとしても、最終的には医局の意向が優先される。 精神科の場合、精神保健指定医なる制度が

    『医局説明会』
  • 『このブログを読んで、精神科医になりたいと思う人へ』

    このブログは患者さんだけでなく、その家族や実際に診療をしている精神科医、他科の医師、看護師、コメディカルスタッフ、医学部在学中の学生、あるいは医学部を目指している高校生の人たちも見ていると思う。 今回のエントリでは、精神科医という職業がどのようなものなのか少し紹介したい。 いつかも書いたが、このブログは色々な人たちにもわかる内容に見えるが、一部、実際に診療している人しか理解できないと思われる記事もある。実のところ、あまり啓蒙的なものを意識せず自由に書いている記事もあるからである。 また、最近の記事はなるだけ長文を避けるようにしているが、短すぎると抽象的になり、読者の皆さんにはかえって理解できないようである。(精神科医なら概ね理解できる)どのくらいの長さにするかはいつも思案している。 自分のブログの過去ログを検索すると、全く記憶にも残っていない記事を発見する。同じ内容を書かないように注意はし

    『このブログを読んで、精神科医になりたいと思う人へ』
  • 『精神医療における場所、空間、時間の考え方』

    精神医療、特に薬物療法は、処方するドクターが違うと、効きかたも異なるといったエントリを過去ログにアップしている。 良く言われるのは、内科医や外科医が向精神薬を使っても、精神科医のようには効果が出ないこと。 これはリエゾンをしていると、よくそれを感じる。逆に降圧剤や不整脈の薬などは専門の内科医が使った方が僕たちが処方するより効くのではないかと思う。 新薬の治験で往々にして良好な効果が発現せず、発売まで時間がかかったり、発売が見送られたりするのは、この「慣れない薬を治験する」ということに大きな問題がある。だから、治験は無駄とは言わないが、柔軟な判断が必要とされる。 精神医療は、特に薬物のように明確な薬理作用を背景とする治療ですら、理解できない部分が混入している。 ジェイゾロフトは治験で不調だったため、ファイザーはあまりに弱気に見える添付文書を発行していた。あのような文章だと、患者さんに推奨でき

    『精神医療における場所、空間、時間の考え方』
  • 『てんかんの寛解、治癒の謎』

    いつかも書いたが、一般の精神病院ではてんかんの初診を診ることが非常に少ない。てんかんは子供の場合は小児科、大人でも脳神経外科や神経内科が初診を診ることが多いと思われる。 したがって精神科医はてんかんの人は初診より治療を引き継ぐことが多いのである。(ある総合病院で大変な数の新患を診ていても、初診のてんかんを診ることは非常に少ないと過去ログに書いている) 引き継ぐ理由はいろいろあるが、1つはてんかん性精神病の治療をまかされること。また障害者施設に入所者のうち、てんかんも伴っているケースも同様である。 てんかんだけで精神症状がないか、あるいはないに等しい人たちのうち、けいれん発作のコントロールの良い人たちは、普通に働いている。もちろん、障害年金も受給していない。このような人は車の運転免許も持っており、実際に運転もしている。(自立支援法を受けるのは可能) てんかんで精神症状がないに等しい人たちは、

    『てんかんの寛解、治癒の謎』
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    pub99 2010/06/26
  • 『虐待とラミクタール』

    今回のエントリは「ハワイのロミロミマッサージのおっちゃん」の続きである。 彼女は当初、著しい拒状態で初診している。全く事がとれないので、その日入院させることにした。 子供の頃、虐待を受けていたらしい(細かい内容は謎)。人によれば、良く憶えていないという。嘔気、嘔吐のため、いくつかの内科病院に受診している。なんとか働いているが、体調は最悪で、めまい、嘔気、キーンと言う耳なりの訴えがあった。また、急に変な気分になり叫ぶ。その後、記憶が飛んでいるという。過去には自殺未遂もあった。周期的に特に理由もなく頭や胸が締め付けられる感じがあると言う。 デパケンR  400㎎ リボトリール 1㎎ ドグマチール 100㎎ マイスリー  5㎎ ユーロジン  2㎎ いきなりこの処方で開始する。翌日には締め付けられる感じが減少。20~30分おきにあったのが、2~3時間おきになった。平凡に、点滴とビタミンB12

    『虐待とラミクタール』
  • 『うつ病の「泣き笑いの表情」』

    うつ病には「泣き笑いの表情」という精神所見があるが、近年、この特徴的な表情はあまり診なくなっている。診なくなっているとは言え、稀有と言うほどではない。 泣き笑いの表情は、うつ病で酷い状態なのに表情は「微笑んで見える」ものを言っていると思うが、これは少なくとも教科書レベルでは、深く解説しているものを見たことがない。ひょっとしたら、論文レベルでは見つかるかもしれない。 この泣き笑いの表情は、僕は研修医1年目に、躁うつ病の中年の入院患者さんで初めて診ることができた。助手の先生から、これがうつ病の「泣き笑いの表情」と説明されて、なるほどと思った。言われてみると「泣き笑い」と表現するほかはない。これは真似をしようとしてもできない表情だと思った。 あの表情は、一般的に言われる感情的な「泣き笑い」ではなく、「表情筋の麻痺あるいは硬直」の世界だと思う。表情があのまま固定しているからである。また、この表情を

    『うつ病の「泣き笑いの表情」』
  • 『雑念に惑わされず治療を進める』

    患者さんを観察するのは大切だが、単に長く診察すれば良いと言うものではない。 個人的に、時間よりむしろ接する回数の方が重要と考えている。つまり、効果的な「瞬間」に意味がある。 統合失調症の人では、個々の訴えの内容に意味があるかと言うと、どちらかといえば、たいして意味がないことが多い。 だいたい、僕は幻覚も妄想もない人にも統合失調症と診断することもある。逆に幻覚があっても統合失調症と診断しないこともある。 このブログの読者の人は、僕は一般の精神科医より統合失調症の範囲が狭いのでは?と思っているかもしれない。実は、その逆で、たぶん一般の精神科医より統合失調症の範囲は広いのである(これは過去ログで触れている)。だからこそだが、告知はしないことにしている。 その僕が、「統合失調症が減少している」と言っているのだから、大変な社会的、あるいは生物学的変化が生じているのである。特に、 かわいらしい感じの統

    『雑念に惑わされず治療を進める』