危機を察知して、しかるべき行動を取るのは簡単なようで実は難しい。変化を読み取り、惰性に抗うのもまた容易ではない。 「危ないと思っていましたが、まさかこんなにあっけなく潰れるとは思いませんでした」と、田口一郎(仮名)氏は語った。元山一證券人事部の中間管理職。48歳。 「突然、会社が消滅するというショックといったら、大変なものですよ。『冗談じゃない、俺の将来はどうなるんだ!?』という気持ちで一時はパニック状態でした」 驚きと混乱のあとから、怒りと不安がこみあげてきた。しかし、時間がたち、落ち着きを取り戻すと、「なるべくしてなったんだな」と思い始めたと田口氏は言う。 「たぶん、ほとんどの社員が同じ思いではないでしょうか。上司にゴマをするのがうまいイエスマンだけが、出世する会社でした。社員同士の人間関係も、ぬるま湯につかっていて厳しさに欠けていた。経営者だけでなく、危機意識に欠けていた社員