ママが買ってきたから適当に着ているとはいっても、わざわざ表裏から袖口まですべてが深海魚図鑑みたいな魚の絵で埋め尽くされた長袖シャツを選ぶなんて! そこに見えるのは、親から子へと受け継がれた言葉では説明できないセンス。ボクはそういうのは嫌いじゃない。 だって、ちょっと遠慮がちに待ち合わせ場所にやってきた〈カノジョ〉を、そのシャツがとてもセクシーに見せていたんだから。 取材の始まりは1万円札30枚に震える 〈カノジョ〉に出会う少し前、ボクは秋葉原のパソコンショップにいた。平日午後の客の少ない店内。 声をかけてきた店員が「研修中」という腕章を付けているのには、最初ちょっと不安な気分になったけど、要望を聞いてテキパキと案内してくれる様子を見てすぐに安心した。でも、心臓はドキドキしてしまうのだ。 だって、ハードディスクとかメモリの型番が並ぶモニタの中で輝くのは、27万1328円(税込)の文字なんだ。