1990年代の「アーティスト」 1983年生まれの僕が渋谷に行くようになるのは、高校生になって以降の2000年代であり、1990年代に渋谷で遊んでいたことはない。したがって、よく言われるようなナイキのエアマックスと援助交際に彩られた渋谷という街は、テレビのニュースで観るような、あるいは映画『ラブ&ポップ』などで観るような、画面越しのものでしかなかった。 もっとも、エアマックス狩りのようなことは自分の中学校でも起きていたし、偽造テレフォンカードもコギャルも身近に存在していたので、なんとなく同時代の空気を吸っていたという思いもなくはない。しかし、当時の僕にとって渋谷とは、電車ですぐに行ける距離でありながらも、基本的にメディアを通してイメージされるものとしてあった。阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件に揺れた1995年前後のことである。 この時期、小学生から中学生になろうという僕は、少しずつ音楽に興