今は集落もなく、全くの無人となって久しい山峡の地、尾盛(おもり)。 そんな場所に、まるで捨て猫のように置き去られた「尾盛駅」は、秘境駅となることを最初から宿命付けられていた。 最寄り集落が無いことだけで、もう十分に“秘境駅的”なワケだが、なんと言っても「尾盛駅」をして“最も理想的な秘境駅”たらしめているのは、そこに至る道が無いと公称されていることにある。 少なくとも、最新の地形図には、この駅と外界を結ぶ道は、ただ一本の鉄路のほかになく、また歩いてこの駅にたどり着いたというレポートも、あるかないか…。 私には見つけられなかった。 そして、それゆえに私は“挑んだ”のだった。 その決着は、もう間近に迫っていた。 予感されていた結果ではあったが、尾盛駅は、当初から完全に孤立していたわけではなかった。 現在地は駅のわずか2~300mの手前であるが、隣駅の「接岨峡温泉駅」からここまで、相当古そうな“車