こんな話がございます。 これから幾回かに分けまして。 「妲己のお百(だっきのおひゃく)」の悪行譚をお話しいたしますが。 今回、お百はまだ出... (大坂の廻船問屋、桑名屋。先代が斬った海坊主の怨霊が、十数年の時を経て甦る) 大坂に雑魚場(ざこば)ト申す、生魚の市場がございまして。 問屋は軒を連ねており、仲買人も溢れんばかりの賑わいで。 江戸で申せば、まず日本橋魚河岸といったような土地でございます。 この雑魚場の外れに、新助と申す棒手振りの魚屋がございました。 棒手振りを生業トする者は、お得意先がなければなりません。 たらいに生魚を載せて、天秤棒で担ぎますので。 あてどなく歩いていては、あっという間に魚が腐ってしまいます。 ところがこの新助には、お得意というものがまだございません。 その日も、取り敢えず腐らぬうちに売りさばこうト。 あっちへこっちへ、盤台を担いで走り回っておりましたが。 ちょ