わたしは昔から他人の顔色をうかがって生きてきました。 いつも強い子だと言われ、どんなにつらい目にあっても泣かないでえらいと言われ、相手が求める期待通りの子を演じることで、生きている実感を得ていました。幼い頃、家族にさからったことは一度もありません。反抗期もありませんでした。けれど周りから「期待に応える良い子」だと言われるたびに、心がきしんでいく感覚を覚え、それが苦しいという感情だと気づくのに何十年もかかりました。 その性格が理由で、会社をクビになったことがあります。 独立系の小さな会社でした。社長とその奥様が中心となって、わたしの他に営業二名・事務一名の社員がいました。わたしはその中間に当たる営業事務職でしたが、社長がキミには採用人事もやってほしいと言いだして、わたしは前向きにそれを受けることにしました。優秀な人材を採用し、ゆくゆくは会社を大きくしたいという社長の期待に応えたかったのです。