この本、HONZの、そして新潮社の編集者でもある足立真穂から送られてきた。ドミニク・チェン、最近、ときどき目にする名前だが予備知識はまったくない。「ドミニク・チェンって何者なん?」とメッセージを送ったら、「それを聞かれるので書いてもらった一冊です」と返事が来た。さすが敏腕編集者、あざといことを言う。 そして読んだ。ドミニク・チェンが何者かがわかったかと尋ねられると、返事に窮してしまう。もちろん、その経歴や仕事、考えなどについてはある程度知ることができた。しかし、本当にわかったかといわれると、そうとは答えにくい。 コミュニケーションとは、わかりあうためのものではなく、わかりあえなさを互いに受け止め、それでもなお共に在ることを受け容れるための技法である。「完全なる翻訳」などというものが不可能であると同じように、わたしたちは互いに完全にわかりあうことできない。それでも、わかりあえなさをつなぐこと