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短篇集の検索結果1 - 38 件 / 38件

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短篇集に関するエントリは38件あります。 小説SF などが関連タグです。 人気エントリには 『今まで意識したこともなかった領域に言葉で触れる方法を教えてくれる、期待の新進アメリカ作家のSF短篇集──『アメリカへようこそ』 - 基本読書』などがあります。
  • 今まで意識したこともなかった領域に言葉で触れる方法を教えてくれる、期待の新進アメリカ作家のSF短篇集──『アメリカへようこそ』 - 基本読書

    アメリカへようこそ (角川書店単行本) 作者:マシュー・ベイカー,田内 志文KADOKAWAAmazonこの『アメリカへようこそ』はアメリカの新進作家マシュー・ベイカーの初の短篇集の邦訳である。どうやらアメリカでは「注目すべきストーリーテラー10人」に選ばれるなど注目の作家のようだが僕は聞いたことがなく、SFの短篇集らしいという前情報だけで読み始めたのだけど、これが読んだらたまげてしまった。 扱っている題材はマインドアップロードから犯罪をおかすと記憶を消される世界の男の話まで奇想系まで様々なのだが、とにかくその筆致、語りは誰かに似ているようで似ていない、オリジナルなもので、他で体験できない心地よさが残る。「これまで意識したこともなかった領域に言葉で触れた」とでもいうような短篇群で、その良さがうまく表現できないのだが、だからこそたまげたのだ。単純明快でわかりやすい作品ではないが、その分、文の

      今まで意識したこともなかった領域に言葉で触れる方法を教えてくれる、期待の新進アメリカ作家のSF短篇集──『アメリカへようこそ』 - 基本読書
    • ケン・リュウによる、中国、日本、米国の歴史と文化を横断的に取り込んだ珠玉のSF短篇集──『宇宙の春』 - 基本読書

      宇宙の春 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:ケン リュウ発売日: 2021/03/17メディア: Kindle版本作『宇宙の春』は、中国と米国、作家と翻訳家を股にかけて活躍する作家ケン・リュウの日本オリジナル短篇集第四弾である。独立した話の短篇集なので、もちろん本書から読んでも問題ない。第二弾、第三弾の短篇集が分厚かったことの反動か、今回は300p全10編とコンパクトになったが、その分シンプルに質の高い作品が揃っている。第一〜から第四冊までを並べた時に、第一と並ぶぐらい好きな巻となった。 作品の発表年としては2011〜20年のものが揃っている。全体をざっくり紹介しておくと、詩的に宇宙の壮大なスケールを歌い上げるような作品もあれば(「宇宙の春」)、未来のシミュレーションを行うSFプロトタイピング的な作品あり(「充実した時間」)、731部隊を「過去に起こったことを一度だけ実体験できる」特

        ケン・リュウによる、中国、日本、米国の歴史と文化を横断的に取り込んだ珠玉のSF短篇集──『宇宙の春』 - 基本読書
      • 韓国SFに多大な影響を与え、現代韓国で「最もSFらしいSFを書く」といわれる作家のSF短篇集──『どれほど似ているか』 - 基本読書

        どれほど似ているか 作者:キム・ボヨン河出書房新社Amazonこの『どれほど似ているか』は韓国の作家キム・ボヨンのSF短篇集である。「文藝」に掲載されたされた「赤ずきんのお嬢さん」や「SFマガジン」に掲載された「0と1の間」など断片的に作品が紹介されてきたが、一冊丸々の翻訳はおそらくこれが初。 ペ・ミョンフンの『タワー』、チャン・ガンミョンの『極めて私的な超能力』など近年翻訳される韓国SF短篇集の質は非常に高く、本作にもかなり期待をしながら読み始めたが、これが既訳の韓国SF作品群に負けず劣らずおもしろい! (翻訳されてくる)韓国SFの特徴の一つは韓国社会の苦境や実際の事件などが作品に反映されていることが多い点にあり、本作でもそうした面は多々あるのだが、超能力/能力バトルものからAIを扱ったミステリといった多彩な題材がそうした社会問題的なテーマと鮮やかに結びついている。池澤春菜さんの解説で、

          韓国SFに多大な影響を与え、現代韓国で「最もSFらしいSFを書く」といわれる作家のSF短篇集──『どれほど似ているか』 - 基本読書
        • 『三体』の劉慈欣を代表するような作品が集められた、同時刊行の短篇集2冊──『流浪地球』『老神介護』 - 基本読書

          流浪地球 (角川書店単行本) 作者:劉 慈欣,大森 望,古市 雅子KADOKAWAAmazonこの『流浪地球』と『老神介護』は、『三体』で知られる中国を代表する作家劉慈欣の短篇集である。なぜ同時に二冊出てるんだ、と思うかもしれないが、KADOKAWAが翻訳権を得た劉慈欣の短篇11篇(原著者側のセレクトによるもので、最初の英訳版短篇集とほぼ同じ)が、分量的に1冊で収まりきらなかったので分冊したようだ。 よって、分冊というか、上下巻みたいなものなので今回は同時に紹介しよう。いちおう作品傾向ごとに分けられていて、『流浪地球』(6篇収録)は全宇宙規模の物語が中心で、『老神介護』(5篇収録)は、地球を舞台にした作品が多い。繋がりのある短篇は一冊でまとまっているので、どちらを読むか、どちらから読むかは完全に自由だ。 すでに劉慈欣の短篇集としては早川書房から刊行の『円 劉慈欣短篇集』があるが、そのすべて

            『三体』の劉慈欣を代表するような作品が集められた、同時刊行の短篇集2冊──『流浪地球』『老神介護』 - 基本読書
          • 魔術的闘争と共にアメリカの黒人差別の歴史を描き出す、ドラマ原作にもなったホラー連作短篇集──『ラヴクラフト・カントリー』 - 基本読書

            ラヴクラフト・カントリー (創元推理文庫) 作者:マット・ラフ東京創元社Amazonこの『ラヴクラフト・カントリー』はファンタジーや幻想系の作品で知られるマット・ラフによるホラー・幻想の連作短篇集となる。まだ黒人差別が色濃く残る1950年代を舞台に、黒人中心の登場人物らが次々と差別と魔術的騒動に直面する様を、連作短篇形式の長篇で、時に情緒的に、時にコミカルに描き出していく。 本作は書名にも「ラヴクラフト」と入っているように、明確にクトゥルー神話の産みの親、H・P・ラヴクラフトとその著作が関係してくるが、それは(文庫解説にもあるように)シンプルにリスペクトだけがこめられているわけではない。ラヴクラフトには人種差別的な傾向が存在することが指摘されており、そうである以上本作(『ラヴクラフト・カントリー』)でも無批判に取り上げられていくわけではないのだ。 「黒人差別の歴史を描き出している〜」などと

              魔術的闘争と共にアメリカの黒人差別の歴史を描き出す、ドラマ原作にもなったホラー連作短篇集──『ラヴクラフト・カントリー』 - 基本読書
            • 今世紀最高のSF短篇集といっても過言ではない、テッド・チャン最新作──『息吹』 - 基本読書

              息吹 作者:テッド・チャン出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/12/04メディア: 単行本ついにテッド・チャン最新短篇集『息吹』が刊行された! テッド・チャンは映画『メッセージ』の原作が含まれているSF短篇集『あなたの人生の物語』の著者として知られるが、その圧倒的な質の高さと反比例するかのように寡作で、これが17年ぶりの作品*1である。だが、それだけ待っただけのことはある圧巻の作品集だ。 現在までの29年のキャリアの中で出したのは短篇集二作のみなのだから、まさに寡作の王といってもいい貫禄ではあるが、(それだけの時間をかけたから、といっていいのかどうかはともかく)テッド・チャンが描き出す世界はとてつもなく緻密で、ありえないほど美しい。この短篇集も、SFを読む喜びに満ちていて、このような作品に出会うために小説を読んでいるのだ、と改めて実感させてくれる傑作揃いである。 テッド・チャン

                今世紀最高のSF短篇集といっても過言ではない、テッド・チャン最新作──『息吹』 - 基本読書
              • 『元年春之祭』の陸秋槎による、今年ベスト級のSF短篇集──『ガーンズバック変換』 - 基本読書

                ガーンズバック変換 作者:陸 秋槎早川書房Amazon『ガーンズバック変換』は『元年春之祭』や『雪が白いとき、かつそのときに限り』、『文学少女対数学少女』といった、ミステリ系の著作で知られる陸秋槎による初のSF短篇集である。陸秋槎は北京出身だが、その後日本の石川県在住となった作家。日本文化への造形が深く、それは本作収録の短篇を読めばすぐにわかる。 というか、短篇だけ読ませたら日本の作家としか思えないだろう。香川県を舞台にした表題作「ガーンズバック変換」からして、香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」に着想元がある作品なのだから。陸秋槎のSF短篇は『異常論文』アンソロジーや『アステリズムに花束を』に掲載されていたから、すでに抜群におもしろいことはわかっていた。だが、今回本邦初訳の二作と書き下ろし二作も含めて全体を読み直してみたら、期待をはるかに超えておもしろい! まだ2023年もはじまった

                  『元年春之祭』の陸秋槎による、今年ベスト級のSF短篇集──『ガーンズバック変換』 - 基本読書
                • 『闇の左手』などが連なる《ハイニッシュ・ユニバース》物にして、奴隷制度・ジェンダーを真正面から扱ったル・グインのSF短篇集──『赦しへの四つの道』 - 基本読書

                  赦しへの四つの道 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:アーシュラ K ル グィン早川書房Amazonこの『赦しへの四つの道』は、の『闇の左手』などの傑作群が連なる《ハイニッシュ・ユニバース》と呼ばれる世界を舞台にした、ル・グィンによる連作短篇集だ。 原書は1995年の刊行なので待望の邦訳となる。ル・グインの新しい作品を久しぶりに読んだが、政治・宗教・社会と「異星の文化を立体的に立ち上げていく」マクロ的な手腕と、ほんのわずかな動作から人間の差別感情を浮かび上がらせるミクロ的な演出が、やはり異次元レベルにうまい。今回はテーマが奴隷制や女性の権利獲得の物語ということで展開や文体は重苦しいが、SF☓奴隷制テーマではトップクラスのおもしろさを誇るオクテイヴィア・E・バトラーの『キンドレッド』に比肩しうる作品である。 キンドレッド (河出文庫) 作者:オクテイヴィア・E・バトラー河出書房新社Ama

                    『闇の左手』などが連なる《ハイニッシュ・ユニバース》物にして、奴隷制度・ジェンダーを真正面から扱ったル・グインのSF短篇集──『赦しへの四つの道』 - 基本読書
                  • 『横浜駅SF』の柞刈湯葉による初のSF短篇集──『人間たちの話』 - 基本読書

                    人間たちの話 (ハヤカワ文庫JA) 作者:柞刈 湯葉発売日: 2020/03/18メディア: 文庫『横浜駅SF』の柞刈湯葉による初のSF短篇集がこの『人間たちの話』である。小説はだいたい人間の話をするものだから「人間たちの話」と題がついている──わけではなく、本書の中で唯一描き下ろしされている短篇が表題作となっているのだ。で、この表題作は当然今回始めて読んだんだけどこれがまたすごくて──と、詳細はのちに譲るが、柞刈湯葉という作家の無数の側面を堪能できる短篇集が揃っている。 横浜駅が改築を繰り返していって次第に自己増殖し日本中を覆い尽くすまでになったら──を椎名誠✕BLAME!的に描き出した『横浜駅SF』。地球が膨張して東京↔大阪間が5000kmもある特殊な日本でのぐだぐだな大学生活を描いた『重力アルケミック』。ほとんどの人間はもはや働く必要がなくなった未来でほとんど趣味として職安をやってい

                      『横浜駅SF』の柞刈湯葉による初のSF短篇集──『人間たちの話』 - 基本読書
                    • 『新しい時代への歌』のサラ・ピンスカーによる、今年ベスト級のSF短篇集──『いずれすべては海の中に』 - 基本読書

                      いずれすべては海の中に (竹書房文庫) 作者:サラ・ピンスカー竹書房Amazonこの『いずれすべては海の中に』は、(新型コロナウイルスをめぐる状況の)予言的な作品として話題になった『新しい時代への歌』のサラ・ピンスカーによるSF中心の短篇集である。2013年から2017年にかけて様々な媒体に書いた短篇を集めたもので、邦訳では『新しい時代への歌』が先行したが、これが著者の初単行本となる。 長篇しか読んだことがなかったので、短篇にはそこまで期待せずに読み始めたのだけどこれが大ヒット。文章はまるでひとつの曲のように詩的で、思いがけない発想、表現がどの短篇にも盛り込まれ、独自の世界観にたっぷりと浸らせてくれる。僕の大好きな要素が詰まった短篇集で、特に中篇の「風はさまよう」は読んでいて思わず身を乗り出すようなおもしろさがあった。今年もさまざまな短篇集・アンソロジーが出ているが、今のところはこれが個人

                        『新しい時代への歌』のサラ・ピンスカーによる、今年ベスト級のSF短篇集──『いずれすべては海の中に』 - 基本読書
                      • 『三体』の劉慈欣による本邦初の短篇集、劉慈欣は長篇だけでなく短篇もおもしろい!──『円』 - 基本読書

                        円 劉慈欣短篇集 作者:劉 慈欣早川書房Amazonこの『円 劉慈欣短篇集』は、『三体』の著者劉慈欣による本邦初の短篇集である。中国での短篇集の翻訳かと思ったら、作品選択は原著者側によるもので、どのような意図があるのか訳者にもわかっていないらしい。ただそれで謎のセレクションになっているかといえばそうでもなく、1999年のデビュー作から2014年の作まで、キャリアを概観できるような作品集(13篇)になっている。これがまたおもしろいんだ。 劉慈欣の短篇が素晴らしいのは映画『流転の地球』の原作にもなった「さまよえる地球」をはじめとした邦訳作の数々からとっくに知っていたつもりだったが、通して読んでみるとそれでもまだナメていたなと実感させられた。科学と芸術の意味を高らかに謳い上げ、人類の歴史やその本質に接続してみせる、そんな『三体』の要素を凝縮したような高密度の短篇ばかりで、読み終えた時の満足感はと

                          『三体』の劉慈欣による本邦初の短篇集、劉慈欣は長篇だけでなく短篇もおもしろい!──『円』 - 基本読書
                        • 『三体』の二次創作小説でデビューした宝樹による、時間SF短篇集──『時間の王』 - 基本読書

                          時間の王 作者:宝樹早川書房Amazon次々と表現規制が行われており、今後中国の小説や漫画やゲームはいったいどうなってしまうのだろうかと戦々恐々と見守っている昨今だが、そんな最中でも中国SFは本邦で多数邦訳・刊行されている。劉慈欣の『三体』の二次創作小説をネットにアップしそれが大きく話題となって、そのまま劉慈欣公認で出版社から刊行されたことでデビューした宝樹による、時間SF短篇を集めた『時間の王』もそんな中の一冊である。 宝樹の短篇は、ケン・リュウによって編集された現代中国SFアンソロジー『月の光』や、中国史をテーマにしたSFを集めた日本オリジナルのアンソロジー『移動迷宮』などにすでに収録されていて、作家としての力量と作品のおもしろさは充分にわかっていたから本作にも期待していたのだけれど、予想にたがわずおもしろかった。 時間SFテーマなのでメインのギミックはタイムトラベルになるが、歴史テー

                            『三体』の二次創作小説でデビューした宝樹による、時間SF短篇集──『時間の王』 - 基本読書
                          • 宇宙ものから超能力もの、ポリティカルな作品まで幅広い作品が堪能できる、韓国の人気作家による極上のSF短篇集──『極めて私的な超能力』 - 基本読書

                            極めて私的な超能力 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:チャン ガンミョン早川書房Amazonこの『極めて私的な超能力』はSFだけでなくノンフィクションや労働小説など幅広いジャンルの作品を手掛ける韓国の人気作家チャン・ガンミョンによるSF短篇集だ。この数年、『三体』をはじめとして中国SFが盛り上がっているが、韓国SFも忘れちゃいけない。実際、早川書房以外も含めていま翻訳が多数進行しているのだ。その中でも本作は、これまでの韓国SFの中でもトップレベルに僕の好みに合った一冊だ。 収録作は全10篇で、10ページに満たない作品も多いが、その発想や描写、演出の仕方はどれも独特でひねりがきいている。SFでは使い古されたアイデア(たとえば自分の最高のパートナーが統計・データ分析によって決定され、会ったこともない相手との相性が判別されるなど)もチャン・ガンミョンの手にかかれば新鮮な読み心地の作品へ様変

                              宇宙ものから超能力もの、ポリティカルな作品まで幅広い作品が堪能できる、韓国の人気作家による極上のSF短篇集──『極めて私的な超能力』 - 基本読書
                            • 韓国の注目作家が紡ぐ、科学的でエモーショナルな絶品SF短篇集──『わたしたちが光の速さで進めないなら』 - 基本読書

                              わたしたちが光の速さで進めないなら 作者:キム・チョヨプ発売日: 2020/12/03メディア: 単行本(ソフトカバー)2020年は10年の区切りということもあって素晴らしいSF短篇アンソロジーが多数刊行され、SF短篇集も豊作だったのだけどここにきてまた凄いSF短篇集が刊行された。韓国の作家キム・チョヨプによる『わたしたちが光の速さで進めないなら』だ。 1993年生まれで本書(原書は2019年刊行)がデビュー作とバリバリの新人なのだけれども、技術的には円熟の域だ。ファースト・コンタクトあり、言語SFあり、コールドスリープ、マインドアップロードあり、テクノロジーによって変容していく人間の姿や社会を描き出していくサイバーパンク的な要素も各作品に共通していて──と、SFでは定番のネタを毎回「こう演出するのか〜!!」と驚かせてくれた。 毎回読後には現代の物語、感覚だな……と納得させてもくれ、凄い凄

                                韓国の注目作家が紡ぐ、科学的でエモーショナルな絶品SF短篇集──『わたしたちが光の速さで進めないなら』 - 基本読書
                              • 《ウィッチャー》ワールドの原点とその本質的な魅力を味わえる、入門にうってつけの一冊──『ウィッチャー短篇集1 最後の願い』 - 基本読書

                                ウィッチャー短篇集1 最後の願い (ハヤカワ文庫FT) 作者:アンドレイ サプコフスキ早川書房Amazonポーランドの作家アンドレイ・サプコフスキによるファンタジィ小説シリーズ《ウィッチャー》は、小説も世界的なベストセラーであるが、本作を原作としたゲームの三部作が爆発的にヒットし本邦でも有名になった作品だ。中でもゲーム完結編となる3は、オープンワールドRPGのトップとして挙げる人が多いほど中身も傑作であった。 ゲーム完結後、Netflixでドラマも始まり(先月第二シーズンが公開)、本邦で止まっていた長篇の翻訳もリスタートし完結巻の5巻まで刊行され──と様々な展開が進行中の本作だが、その流れに乗って短篇集もこうして翻訳されることとなった。邦訳としては長篇の後の刊行になるが、作中の時系列的にも原書的にもこの短篇集の方が先であり、いわば《ウィッチャー》ワールドの原点を味わえる作品集になっている。

                                  《ウィッチャー》ワールドの原点とその本質的な魅力を味わえる、入門にうってつけの一冊──『ウィッチャー短篇集1 最後の願い』 - 基本読書
                                • 技術がもたらした価値観の変容が事件へと密接に関わってくるSFミステリ短篇集──『ベーシックインカム』 - 基本読書

                                  ベーシックインカム 作者: 井上真偽出版社/メーカー: 集英社発売日: 2019/10/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見るベーシックインカムと言うと、普通は全国民に一律3万なり10万なりといった一定額を定期的に振り込み続ける、最低給付保障をさす言葉である。僕もつい先日これについての記事を書いたばかりだが、本記事で取り扱う『ベーシックインカム』は、森博嗣、西尾維新、清涼院流水ラインの最先端ミステリ『その可能性はすでに考えた』などで知られる井上真偽の最新作にして、SFミステリ連作短篇集である。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp 僕もこの作品は圧倒的なキャラの強さ、推理における演出のトンデモさとそれを支えるロジックの鮮やかさで大いに楽しませてもらった。そうはいっても、SFミステリはどうじゃろか……と思いながら読んだけれども、これがきちんとおもしろい。短篇はど

                                    技術がもたらした価値観の変容が事件へと密接に関わってくるSFミステリ短篇集──『ベーシックインカム』 - 基本読書
                                  • 『ゲームの王国』、小川哲による歴史×時間SF短篇集──『嘘と正典』 - 基本読書

                                    嘘と正典 作者: 小川哲出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/09/19メディア: 単行本この商品を含むブログを見る『なめらかな世界と、その敵』の伴名練を筆頭に今30代前半にはやたらと熱いSF作家が揃っているのだけれども、そのうちの一人がこの小川哲だ。デビュー作『ユートロニカのこちら側』の完成度の高さから期待値は高かったが、カンボジアを舞台に不安定な政治体制、虐殺などの歴史的事象とテクノロジーを組み合わせ、「ルールとはなにか」を問いかける『ゲームの王国』でその才能は本物だと証明してみせた。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp 本書『嘘と正典』は、そんな小川哲による三作目にして初の短篇集である。収録作はSFマガジンに散発的に載った短篇が4つと、書き下ろしの表題作「嘘と正典」、Penに掲載の「最後の不良」の全6篇で、統一感はないかと思いきや実際には大半(少なくと

                                      『ゲームの王国』、小川哲による歴史×時間SF短篇集──『嘘と正典』 - 基本読書
                                    • 韓国の注目の女性作家チョン・ソヨンによるSF・幻想系を中心に集めた極上のSF短篇集──『となりのヨンヒさん』 - 基本読書

                                      となりのヨンヒさん 作者:チョン・ソヨン,吉川 凪出版社/メーカー: 集英社発売日: 2019/12/13メディア: 単行本この『となりのヨンヒさん』は韓国の注目の女性作家チョン・ソヨンによるSF・幻想系を中心に集めたSF短篇集。こういっちゃあなんだけど「となりのヨンヒさん」というのはそそられるところのないタイトルだ。他の短篇も「養子縁組」、「デザート」、「帰宅」、「雨上がり」とかそっけないワンワードのものばかり。 なので、事前予想としてはうーん、なんともいえないけどめっちゃつまらなそうだなあと思っていたんだけど、実際に読み始めてみれば、日常の風景や違和感がSF的事象や幻想的事象の介在によって増幅される丁寧丁寧丁寧な短篇集で、夢中になってあっという間に読んでしまった。各題からも「文学寄りなのかなあ」と思いきや伴名練の「なめらかな世界と、その敵」的な「アリスのティータイム」であったり、多くの

                                        韓国の注目の女性作家チョン・ソヨンによるSF・幻想系を中心に集めた極上のSF短篇集──『となりのヨンヒさん』 - 基本読書
                                      • 『半分世界』の石川宗生による極上の奇想短篇集──『ホテル・アルカディア』 - 基本読書

                                        ホテル・アルカディア 作者:石川 宗生発売日: 2020/03/26メディア: 単行本この『ホテル・アルカディア』は、第7回創元SF短編賞を受賞し、奇想短篇集『半分世界』で東京創元社からデビューした石川宗生さんの集英社からの最新作。 『半分世界』は、吉田大輔氏が突然19329人に増えてしまった状況を描く「吉田同名」。道路側の前半分が綺麗サッパリ消失している奇妙な家と家族4人と、それを観察していったいこれはなんなのだ、なぜこんなことが起こっているのかと議論し生活をウォッチする人々の奇妙な物語が描かれていく「半分世界」など、何を食ったらそんなことを思いつくんだ的な着想から緻密にその世界のロジックを構築していく高い技術が冴え渡った短篇集で、とにかく一読して僕は大好きな作品・作家になった。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp で、第二作となるこの『ホテル・アルカディア』にも相

                                          『半分世界』の石川宗生による極上の奇想短篇集──『ホテル・アルカディア』 - 基本読書
                                        • 現代SF界を代表する作家テッド・チャン、待望の新刊 世界最高水準の短篇集『息吹』12月4日発売決定!!|Hayakawa Books & Magazines(β)

                                          現代SF界を代表する作家テッド・チャン、待望の新刊 世界最高水準の短篇集『息吹』12月4日発売決定!! 『三体』と並んで刊行が待たれていた超話題作!! テッド・チャンをご存知ですか? いちばん有名な作品は第一短篇集『あなたの人生の物語』表題作。「あなたの人生の物語」は、2016年に「メッセージ」のタイトルで映画化(監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演:エイミー・アダムス、ジェレミー・レナーほか)されてアカデミー賞ノミネートなど高い評価を得ました。 「メッセージ」には、新海誠さん、樋口真嗣さん、押井守さんといった日本映画界を代表する監督がコメントを寄せていました。新海誠さんは同作について、「テッド・チャンの名作『あなたの人生の物語』の、想像よりもずっと誠実な映画化。良かった。好きです。」と賛辞を贈っています。 『あなたの人生の物語』は2003年に刊行され、翌年「ベストSF2004」第一位獲得。表

                                            現代SF界を代表する作家テッド・チャン、待望の新刊 世界最高水準の短篇集『息吹』12月4日発売決定!!|Hayakawa Books & Magazines(β)
                                          • 中国の思想と文化が色濃く反映された、傑作ぞろいの中国史SFアンソロジー!──『中国史SF短篇集-移動迷宮』 - 基本読書

                                            中国史SF短篇集-移動迷宮 (単行本) 中央公論新社Amazonこの『移動迷宮』は近年躍進著しい中国SFの中でも、中国の歴史を扱ったSF短篇を集めたアンソロジーである。SFジャンルは近年それなりに市民権を得てきたといっても、特に翻訳ではまだごく一部の出版社(早川とか東京創元社とか竹書房とか)が刊行することがほとんどだ。だが、本書は普段SFを出さない中央公論新社からの刊行で、その意味でも中国SFの翻訳刊行の輪が広がってきたな、という感じがある。*1 で、この『移動迷宮』だけれども、まず特徴は中国史を扱った作品を集めているところにある。とはいえ、中国史を扱った作品自体は、これまでのアンソロジーや邦訳作にも多数存在する。『時のきざはし 現代中華SF傑作選』の表題作は武帝が関係してくる歴史と時間についてのSFだし、『月の光 現代中国SFアンソロジー』には我々のよく知る歴史が逆行していく世界で中国史

                                              中国の思想と文化が色濃く反映された、傑作ぞろいの中国史SFアンソロジー!──『中国史SF短篇集-移動迷宮』 - 基本読書
                                            • 「折りたたみ北京」の郝景芳による、AIテーマの短篇集──『人之彼岸』 - 基本読書

                                              人之彼岸【ひとのひがん】 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:郝 景芳発売日: 2021/01/21メディア: Kindle版この『人之彼岸』は、「折りたたみ北京」を筆頭に中国のみならず世界で高い評価を受けているSF作家郝景芳(ハオジンファン)のAIテーマを中心に集めた短篇集だ。郝景芳の作品は、すでに白水社から『郝景芳短篇集』が、自伝的な長篇小説『1984年に生まれて』が中央公論新社から出ていたりと、本邦でも翻訳が積極的に進んでいる中国の筆頭作家の一人である(早川書房から長篇『流浪蒼穹』も刊行予定とのこと)。 その大きな理由の一つは、郝景芳の作品の多くが現代の技術や社会問題などのテーマを中心とし、それが未来の社会においてどのように変化していくのか、あるいは新しい問題が立ち上がるのか、といったいま・ここと地続きの話を扱うことの多い作家だからとはいえるだろう。新型コロナウイルスによるパンデ

                                                「折りたたみ北京」の郝景芳による、AIテーマの短篇集──『人之彼岸』 - 基本読書
                                              • ひと目でわかる!イラストブックレビュー『円 劉慈欣短篇集』劉 慈欣 (著) |

                                                『円 劉慈欣短篇集』劉 慈欣 (著), 大森 望 (翻訳), 泊 功 (翻訳), 齊藤 正高 (翻訳) ハヤカワ文庫SF あらすじ二十年ぶりに生まれ育った炭鉱街へ再びやってきた劉欣(リウ・シン)。 彼の目的は炭鉱を巨大なガス発生装置に変え、新しい産業として生まれ変わらせること。 その手法に現地の作業員たちは反対の声をあげるのだが、とうとうプロジェクト実行の日を迎え…(「地火」)。 秦の始皇帝から「円周率を計算し、五年後には十万桁まで求めよ」と命じられた荊軻(けいか)。 不可能ではと頭を抱えながらも彼が考え出した方法は、三百万の兵を使った人列計算機によるものだった(「円」)。 気鋭の中国SF作家が紡ぎ出す、宇宙と科学、過去と未来を描く壮大な13篇を収めた短編集。 壮大なスケールと驚きに満ちた物語たち中学時代、長く炭鉱で働いていた父を亡くした劉欣。 父の跡は継がず二十年ぶりに故郷へと戻ってきた

                                                • 祝・ラファティ・ルネサンス! ラファティ・ラブ・エッセイ再録①――伴名練「幻の短篇集」|Hayakawa Books & Magazines(β)

                                                  待望のR・A・ラファティベスト短篇集《ラファティ・ベスト・コレクション》第一巻の『町かどの穴』が刊行されました。ラファティを愛するラファティアンなあなたも、ラファティのことよく知らないけどなんだかおもしろそう! なあなたも、どなたでも手に取りやすい短篇集になっております。 ここではSFマガジン2021年12月号に掲載されました、《ラファティ・ベスト・コレクション》刊行によせてお書きいただいたエッセイを再録します。第一弾は『なめらかな世界と、その敵』や《日本SFの臨界点》でおなじみ、伴名練さんによるエッセイです。 幻の短篇集 伴名練《今、この腕の中で、静かに寝息を立てているのが、美亜羽なのか、それとも美亜羽なのか、自分には分からない。》──伴名練「美亜羽へ贈る拳銃」 《その空虚は、クレムのもののほうがクレムのものよりずっと大きかった。》──R・A・ラファティ「クロコダイルとアリゲーターよ、ク

                                                    祝・ラファティ・ルネサンス! ラファティ・ラブ・エッセイ再録①――伴名練「幻の短篇集」|Hayakawa Books & Magazines(β)
                                                  • いろんな「気づきの瞬間」を描く珠玉の短篇集 |

                                                    『四百三十円の神様』 加藤 元 (著) 集英社文庫あらすじ牛丼屋のアルバイトをしている岩田。夜明けの時間帯、眠気と闘う岩田のもとへやってきたのは、同じアルバイト仲間の彼女だという派手な女。 「助けて」という彼女の願いとは。 いろんな「気づきの瞬間」を描く珠玉の短編集。 夜明けの牛丼屋にやってきたお女は同じバイト仲間の西崎の彼女であり、西崎が財布を持って出て行ってしまい、昨日から何も食べていないため助けてほしいと言う。 困惑する岩田に助け舟を出してくれたのは一人の中年男性。 彼女の分をおごってくれるというのです。 神様みたいな人、と言う彼女の言葉に、岩田は子供時代、自分が思っていた神様へと思いを馳せる。 まとめ神様は案外近くにいるのかも。日常の中からほんのりと輝く「気づき」を得た人々たちの姿は、とても身近に感じ、心地よい余韻が残る物語です。 <こんな人におすすめ>日常に潜む「気づきの瞬間」を

                                                    • 奇想からSFまで、尽きぬアイディアに支えられた極上の超短篇集──『銀河の果ての落とし穴』 - 基本読書

                                                      銀河の果ての落とし穴 作者: エトガル・ケレット,広岡杏子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2019/09/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこの『銀河の果ての落とし穴』は、イスラエル生まれの作家エトガル・ケレットによる短篇集である。正直「なんか書名がSFっぽいな〜〜〜」ぐらいの興味で買ったのだけれども、これが大当たりだった。ほとんどは2〜8ページぐらいのごく短い超短篇なのだが、それゆえにこそどれも人生にほんの一瞬だけ現れる特別な感情を丁寧に掬い上げていくものばかりで、読み進めていくたびにのめり込んでいった。 題材も奇想的なものからSF的なもの、その組み合わせに自身の出自とも関連したホロコースト物など多岐多様。尽きぬアイディアの魅力もあって、端的にいって短篇集として破格の出来である。超短篇という性質上あんまり中身自体は紹介しづらいんだけど(あっという間にオチまでいって

                                                        奇想からSFまで、尽きぬアイディアに支えられた極上の超短篇集──『銀河の果ての落とし穴』 - 基本読書
                                                      • 『青と緑:ヴァージニア・ウルフ短篇集』「解説」から考えたこと|片山亜紀|note

                                                        はじめに 西崎憲氏の編訳により、ヴァージニア・ウルフの短編集『青と緑』(亜紀書房、2022年)が1月に出版された。氏の編訳の『ヴァージニア・ウルフ短篇集』(ちくま文庫、1999年)はすでに絶版となっている。ちくま版に短編5篇を足し、全体に加筆修正を加えたのが『青と緑』である。 ウルフの短編集の邦訳としては、他に川本静子訳『壁のしみ』(みすず書房、1999年)がある。利根川真紀の『レズビアン短編小説集』(平凡社ライブラリー、2015年)にもウルフの短編から2篇が収録されている。併せ読んだり、読み比べたりするといいかもしれない。 とは言っても、本稿で考えてみたいのは翻訳そのものではない。『青と緑』巻末に収録されている西崎氏の「解説」についてである。 一般に、巻末の「解説」とは本編の付録のようなものだが、読者にとっては本編の読み方の指針や手助けとして、大いに参考になりうるものである。西崎氏の「解

                                                          『青と緑:ヴァージニア・ウルフ短篇集』「解説」から考えたこと|片山亜紀|note
                                                        • 『「そうきたか!!」と思わず唸るミステリー短篇集』

                                                          イラストブックレビュー ぬこ ☆ れびゅ 雑読猫「ぬこさん」が様々なジャンルの本をレビューします。 本との出会いにちょっぴりお役に立てれば幸いです。 『どんどん橋、落ちた〈新装改訂版〉』 綾辻 行人  (著) ¥858 講談社文庫 (「BOOK」データベースより) ミステリ作家・綾辻行人のもとに持ち込まれる“問題”はひと筋縄 ではいかないものばかり。崩落した“どんどん橋”の向こう側で、 燃える“ぼうぼう森”の中で、明るく平和だったはずのあの一家で…勃発する難事件の“犯人”は誰か?本格ミステリシーンを騒然とさせた掟破りの傑作集、新装改訂版で登場! <こんな人におすすめ> 意表をつくミステリーを読みたい 著者からの挑戦を受けてみたい 綾辻 行人のファン どんどん橋、落ちた〈新装改訂版〉 (講談社文庫) 読書人が集う『シミルボン』にて、インタビュー記事掲載! https://shimirubon

                                                            『「そうきたか!!」と思わず唸るミステリー短篇集』
                                                          • ぎっしりと詰まった感情に圧倒される短篇集 |

                                                            『タイニーストーリーズ』  山田 詠美 (著) 文春文庫あらすじアメリカ人兵士との恋愛から、街に立つ電柱がその心情を語るものまで、様々な感情が揺らめく21の短編集。 一晩限りの愛、不倫、猫好きおじいさんとのやりとりなど、実に多彩なシチュエーションで展開するお話は、どれも強烈な印象を残します。 それは、登場人物たちの心のそこに、拭えない悲しみが漂っているからかもしれません。 まとめしっとりとした恋愛物語から、軽快なタッチでクスリと笑える話まで、読者の心情をガッチリと掴む文章力はさすがです。短編集でありながら一つ一つが力強く、登場人物の感情がぎっしりと詰まっていて読み応えのある一冊です。 <こんな人におすすめ>アメリカ人兵士との恋愛物語を読んでみたい 憎しみや悲しみ、笑いなど様々な感情が綴られた話が好き 山田 詠美のファン 過去のイラストレビューを更新しました。 『タイニーストーリーズ』です。

                                                            • 初の短篇集とか創元日本SF叢書とか、最近読んでた日本SF - Close To The Wall

                                                              大森望編『ベストSF2020』 宮内悠介『超動く家にて』 宮内悠介『カブールの園』 円城塔『シャッフル航法』 柴田勝家『アメリカン・ブッダ』 柞刈湯葉『人間たちの話』 宮澤伊織『裏世界ピクニック5』 宮澤伊織『裏世界ピクニック6』 藤井太洋『公正的戦闘規範』 高島雄哉『ランドスケープと夏の定理』 門田充宏『記憶翻訳者 いつか光になる』 門田充宏『記憶翻訳者 みなもとに還る』 松崎有里『イヴの末裔たちの明日』 久永実木彦『七十四秒の旋律と孤独』 石黒達昌『冬至草』 最近読んでた日本SF。溜めてたなかでも最近の作家多め。創元日本SF叢書はある程度フォローしておこうと思って読んだので、ここでデビューした作家の一作目はひとまず全部読んだかな。この記事を上げてすぐ新しいのが出るけれども。創元SF短編賞受賞作は年刊傑作選に載るのでそれを手始めに単行本を読んでいると、ハヤカワからデビューした作家は全然読

                                                                初の短篇集とか創元日本SF叢書とか、最近読んでた日本SF - Close To The Wall
                                                              • 強烈!でもクセになる「取扱注意」な短篇集 |

                                                                『グローバライズ: GLOBARISE』 木下 古栗 (著) 河出文庫あらすじ外国人に道案内をする僧侶、駅前の広場で演説する青年に向かって怒鳴る中年男性、回転寿司に訪れたベトナム人が店で見たものなど、緻密な描写で爆発的な瞬間を描く十二篇を収めた短編集。 ある時はSF的な結末、ある時はグロテスクな暴力的描写、ある時は無意識部分が顕在化したような…と変幻自在でありながら、緻密で美しく、どことなくユーモアを漂わせる文体で読者を引き込んでいきます。 まとめ不浄なモノの扱い、数ページにわたって漢字のみで表記するなど、強烈なインパクトや不安感を感じますが、なぜかまたページをめくってしまうのです。 読み手を選ぶ本かもしれませんが「我こそは」と思う方はぜひ。 <こんな人におすすめ>ユーモアや暴力などがないまぜになった話に興味がある 人間の深い内部を描いたような物語を読んでみたい 木下 古栗のファン

                                                                • 今年のSF短篇集ベストワン候補 フォード『最後の三角形』がいいぞ! - 新刊めったくたガイド|WEB本の雑誌

                                                                  『最後の三角形: ジェフリー・フォード短篇傑作選 (海外文学セレクション)』 ジェフリー・フォード,谷垣 暁美 東京創元社 3,850円(税込) 商品を購入する Amazon HonyaClub HMV&BOOKS honto 『書架の探偵、貸出中 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5061)』 ジーン・ウルフ,大谷 真弓 早川書房 2,420円(税込) 商品を購入する Amazon HonyaClub HMV&BOOKS honto 『コスタ・コンコルディア 工作艦明石の孤独・外伝 (ハヤカワ文庫JA JAハ 5-21)』 林 譲治 早川書房 1,188円(税込) 商品を購入する Amazon HonyaClub HMV&BOOKS honto 『私は命の縷々々々々々 (星海社FICTIONS)』 青島 もうじき,シライシ ユウコ 星海社 1,485円(税込) 商品を購入する Amazon

                                                                    今年のSF短篇集ベストワン候補 フォード『最後の三角形』がいいぞ! - 新刊めったくたガイド|WEB本の雑誌
                                                                  • 劉慈欣入門にはコレを読め! 『円 劉慈欣短篇集』訳者・大森望氏解説|Hayakawa Books & Magazines(β)

                                                                    『円 劉慈欣短篇集』発売から約一週間! 選りすぐりの短篇13篇を収録した本作は、劉慈欣入門にぴったりの一冊です。「『三体』が読みたいけど、ちょっと読み切れるか自信ないかも……」なあなたにも、「『三体』ロスだぜ!!」なあなたにもおすすめできます。 本ページでは『円 劉慈欣短篇集』解説を再録しました。ぜひその世界観の一端にふれてみてください。 訳者あとがき 大森 望 日本初の劉慈欣短篇集『円』をお届けする。1999年に発表された著者のデビュー作から、『三体』(早川書房)の一部を土台に2014年に書かれた表題作「円」まで、本邦初訳の4篇を含む全13篇が、発表順に収録されている。原書にあたる短篇集は存在しないものの、日本で独自に編んだ選集ではなく、作品選択は原著者側による。どんな意図で選ばれたのかはよくわからないが、劉慈欣の作家歴のほぼ全体をカバーする、好個の作品集となっている。 すでに《三体》三

                                                                      劉慈欣入門にはコレを読め! 『円 劉慈欣短篇集』訳者・大森望氏解説|Hayakawa Books & Magazines(β)
                                                                    • 「通じない恐怖」を克明に描き出す短篇集 |

                                                                      『他人事』 平山 夢明 (著) 集英社文庫あらすじ交通事故に遭った男女を襲う「無関心」という名の恐怖を描く代表作、孤独にクラス女性にふりかかる理不尽な災禍、定年を迎えたその日に、同僚たちから受ける仕打ちに身を震わせる男のおののきなど、理解不能な他人とのやりとりが生み出す恐怖を描いた短編集。 交通事故に遭った男女は、互いの状態を確認。身動きが取れず、しかも一刻を争う状況であることがわかります。 そこに一人の男性が通りかかったので、その男性に助けを求めるのですが。 救急車を呼んでほしい、ただそれだけなのに、事故の状況や男女の言い方に文句をつけたりと、よくそこまで無関心になれるものだなと背筋が寒くなります。 まとめ他にも、理解不能な人物たちとのやりとりから発生する恐怖を、暴力的、グロテスクに描き出す14編。 異様ではありますが、ほんのちょっと日常がズレたら、こんな世界も存在するのでは、と思わせる

                                                                      • 「これからの『人間たちの話』をしよう……」『横浜駅SF』柞刈湯葉の初SF短篇集、各篇冒頭イッキ読み!|Hayakawa Books & Magazines(β)

                                                                        ※書影は販売サイトとリンクしています 2016年。横浜駅が日本を覆う……という狂気の着想から紡がれた『横浜駅SF』で、SNSを中心に話題を席巻。SF界に颯爽と登場した柞刈湯葉。同作は第1回カクヨムWeb小説コンテストSF部門で〈大賞〉を受賞し、第38回日本SF大賞の最終候補作となった。 そして2020年3月。柞刈湯葉、初のSF短篇集となる『人間たちの話』が発売された。ポストアポカリプスSF、ディストピアSF、ファーストコンタクトSF、ラーメンSF、岩SF、透明人間SF。柞刈湯葉の柞刈湯葉的才能がいかんなく発揮された全6篇が収録される。ここで、それぞれの作品の冒頭をイッキに紹介しよう!(編集部・奥村) 「へいまつ、二三キロ」 双眼鏡のレンズ越しに青看板を見ながらエンジュは言う。厚い氷からヌッと顔を出した案内標識には、かつてこの細長い島に存在した都市の名と、そこへ至るまでの距離が記されている。

                                                                          「これからの『人間たちの話』をしよう……」『横浜駅SF』柞刈湯葉の初SF短篇集、各篇冒頭イッキ読み!|Hayakawa Books & Magazines(β)
                                                                        • 【短篇一挙掲載】韓国発ベストセラーSF短篇集、キム・チョヨプ著『わたしたちが光の速さで進めないなら』より「巡礼者たちはなぜ帰らない」全文公開!【期間限定】|Hayakawa Books & Magazines(β)

                                                                          今もっとも韓国の女性たちの共感をあつめる、 新世代作家のデビュー作にしてベストセラー。 生きるとは? 愛するとは? 優しく、どこか懐かしい、 心の片隅に残り続けるSF短篇7作。 冒頭の短篇「巡礼者たちはなぜ帰らない」を期間限定で全文公開します。 『わたしたちが光の速さで進めないなら』(2020年12月3日刊行) キム・チョヨプ カン・バンファ、ユン・ジヨン訳 『82年生まれ、キム・ジヨン』の大ヒットをきっかけに、急速に注目が高まっている韓国小説。早川書房では、今韓国で一番売れているSF小説を刊行! 本書は、第2回韓国科学文学賞中短篇部門大賞受賞の「館内紛失」同佳作の表題作、また、映画『はちどり』で国内外の賞を総なめにしたキム・ボラ監督の次回作原作「スペクトラム」など、女性とマイノリティに寄り添う粒ぞろいの短篇7作を収録。 刊行を記念して、冒頭の短篇「巡礼者たちはなぜ帰らない」を期間限定で全

                                                                            【短篇一挙掲載】韓国発ベストセラーSF短篇集、キム・チョヨプ著『わたしたちが光の速さで進めないなら』より「巡礼者たちはなぜ帰らない」全文公開!【期間限定】|Hayakawa Books & Magazines(β)
                                                                          • 『百年の孤独』の余滴として生まれた異色短篇集|ちくま文庫|木村 榮一|webちくま(1/5)

                                                                            『百年の孤独』の文庫化で注目が集まるガルシア=マルケス。この短篇集『エレンディラ』は、『百年の孤独』と『族長の秋』というふたつの大作にはさまれて生まれました。「大人のための残酷な童話」として書かれた6つの短編と中編「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」を収録。難解な『百年の孤独』に挫折してしまった人にも、ガルシア=マルケス入門にもぴったりの1冊で、知る人ぞ知る傑作です。その奇想あふれる魅力の源についてや、『百年の孤独』との関わりについても触れている「訳者あとがき」(書き手:木村榮一さん)を全文公開いたします。 日本の小説家がアマゾン河で釣りをしようとブラジルに渡った。むこうで日系人の人たちと雑談していると、こちらにはニメートルの大ミミズがおりますという話を聞かされる。ある人がそのミミズをせっせと掘りまくり、釣り人に売った金でブロックの小屋を建てたというのである。それまで、

                                                                              『百年の孤独』の余滴として生まれた異色短篇集|ちくま文庫|木村 榮一|webちくま(1/5)
                                                                            • 軽快なリズムが心地いい ライトミステリ短篇集 |

                                                                              『シュークリーム・パニック』 倉知 淳 (著) 講談社文庫あらすじメタボを克服するための体質改善セミナーに参加した4人の中年男性。 絶食を強いられた過酷な環境の中、インストラクターが買ったシュークリームが紛失。 犯人はいったい誰なのか。 ちょっぴりおかしくて奇妙な謎を解く6つの短編集。 消えたシュークリームの謎、銀行強盗の実行をすっぽかされた男、脱税情報を飼い猫に託した男など、変わった状況を軽快なタッチで描いた短編集です。 まとめ登場人物の特異なキャラクターが発するセリフは、音までが耳の奥に響いてきて思わず吹き出してしまいます。 音楽を聞いているかのようなセリフまわし、また他の作品では情景の光と影を感じるような、しっとりとした描写があったりと、作者の技の広さや深さに思わず唸ってしまいます。 ミステリ好きの方にも、そうでない方も楽しめる短編集です。 <こんな人におすすめ>笑えるミステリーを読

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