私が紆余曲折を経てアジア経済研究所に入所したのは、もうすぐ21世紀を迎えようとする時期であった。ちょうど、1990年代後半からコンピュータの西暦2000年問題への対応で国内にインド人IT技術者が増え始めていた。今振り返ると、それまでインドといえば往々にして悠久・神秘・混沌・貧困を思い起こさせる国であったが、一転してインド式掛け算、多数のIT技術者輩出をする国へと、現在の一般的なインドへのイメージに反転し始めた時期でもあったように思う。 こうした日本国内の状況の下で、私のインド連邦公用語であるヒンディー語学習が始まった。学生時代にヒンディー語をかじっていたが、しばらく間があいたので、手始めに日本人の先生から『エクスプレス・ヒンディー語』(白水社)で文法をひととおり学習し、その後インドの小学校の教科書を使って基本的な単語や表現を補強した。次いで、都内在住のインド人の先生からの個人レッスンでムガ