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himaginaryの検索結果1 - 40 件 / 578件

  • 将来世代はグレタ・トゥーンベリを許さない? - himaginary’s diary

    ふと、かつて温暖化対策の行き過ぎを諌めたビョルン・ロンボルグはグレタ・トゥーンベリについて何か言っているのかな、とぐぐってみたところ、9月末にこのような論説を書いていることを知った。以下はその概要。 人間が気候変動の科学を理解して行動しないことは「悪」であり、気候変動によって「人が死んで」おり、あと8年余りで炭素の排出余地は尽きてしまうため、2028年までに化石燃料で動くものをすべて閉鎖すべし、というグレタ・トゥーンベリの国連演説は、良く見られる主張であるが、根本的に間違っている。確かに気候変動は人為的な原因で現実に生じているが、気候変動で世界が終わるという彼女の見方は根拠が無い。IPCCによれば、2070年までの気候変動の影響は、生態系への影響も含めても、平均所得の0.2-2%の減少に相当する。その時までに、地球上の各人の所得は300-500%向上している。 1世紀前の生活はつらいものだ

      将来世代はグレタ・トゥーンベリを許さない? - himaginary’s diary
    • クルーグマン「日本はまだオワコンではない」 - himaginary’s diary

      既に日本のツイッターで話題になっているが、クルーグマンが安倍元首相の死に寄せて連ツイを投稿している。 OK, one more shock: the assassination of Japan's former Prime Minister Abe. I have zero to say about what might lie behind it and what it means. But I can talk about my meeting with Abe in 2016; he was a complicated and interesting leader, not easy to characterize 1/ As many have noted, he was an apologist for Japan's war crimes — not forgivable —

        クルーグマン「日本はまだオワコンではない」 - himaginary’s diary
      • ベトナム在住者から

        https://himaginary.hatenablog.com/entry/20200412/vietnam_low_cost_success_against_covid19 こちらの記事について、在住者のkitamatiからレポート ベトナム政府の対応はとても素早かった。以下ざっくり時系列 ■初動 1月末の時点で中国人への観光ビザは発給停止、同時に在越中国人観光客の国外退去を(強力に)促す措置。 これにより街中から中国人・中国人の乗る観光バスが徐々に減っていき、2月半ばにはほぼ消えた。 小学生〜大学生については、1/29に明けるテト休みがそのまま延長となり、4月13日現在もその措置が続いている。当初2月半ばまでとされていた(夏休みをその分削る※)のが2末、3月中旬...と延期されていった。現在はオンライン授業が始まっている。 ベトナムはバイク通勤がデフォなので、集団感染は学校か会社組

          ベトナム在住者から
        • マンキュー「カマラ・ハリスに投票するけどさぁ・・・」 - himaginary’s diary

          「Kamala Harris...sigh」というブログエントリをマンキューが書いている。 I plan to vote for Kamala Harris. Why? Simply because she is not Donald Trump. In my judgment, Trump is (1) an authoritarian narcissist whose rhetoric is mean-spirited and untethered from reality and (2) an isolationist with wrong-headed views on trade and immigration and downright scary views on national security issues like NATO, Ukraine, and Taiwan.

            マンキュー「カマラ・ハリスに投票するけどさぁ・・・」 - himaginary’s diary
          • ベトナムの低予算COVID-19対策の成功 - himaginary’s diary

            について論文が書かれ、著者の一人Hong Kong NguyenがProject Syndicateにその概要を寄稿している(H/T Mostly Economics)。以下はそこからの引用。 Perhaps most remarkably, unlike South Korea, which has spent considerable funds on aggressive testing, or Singapore, which has established strong epidemiological surveillance, Vietnam has followed a budget-friendly approach that has proven equally effective. Despite expectations of high rates of transm

              ベトナムの低予算COVID-19対策の成功 - himaginary’s diary
            • 航空事故とフォーク定理 - himaginary’s diary

              今回の羽田の航空事故を巡り、事故の刑事責任の追及が自動車事故などに比べて緩やかなのはやはり納得できない、という声と、今後の安全性のためにはそれが当然、という現在の慣行を支持する主張が改めて持ち上がり、議論になっている。現在の慣行については、その日米比較を行ったこちらの服部健吾氏の論文が参照されることが多いようだが、同論文では現在の慣行を支持する論拠として、「萎縮効果(chilling effect)」が一つのキーワードになっている*1。そこで「chilling effect accident criminalize」で検索を掛けてみたところ、Flight Safety Foundation*2のPresident兼CEOのHassan Shahidiが2019年5月17日に書いた「Criminalizing Accidents and Incidents Threatens Aviatio

                航空事故とフォーク定理 - himaginary’s diary
              • 3つの一人当たりGDP - himaginary’s diary

                少し前に一人当たりGDPの国別ランキングに関するツイートが話題になったので、IMFのWEOデータベースのサイトからデータを落としてグラフを描いてみた。ここではアジアは日韓台、欧州は独仏伊、およびアングロサクソンの米英豪を対象とし、期間はデータの取れる1980-2027年とした(ただし、IMFの注意書きによれば、日は2016年、英伊は2021年、それ以外は2022年以降はIMFの推計値)。 ここで注意すべきは、WEOには3種類のドル建て一人当たりGDPが収録されている点である(それ以外に、実質と名目の自国建ての一人当たりGDPも収録されている)。上図では各国についてその3種類のドル建ての値を描画している。 一つは、上のグラフでは青線で描いた2017年時点の購買力平価ベースのドル建て一人当たりGDPである。換算レートの購買力平価を2017年という一時点に固定しているので、為替動向や各国と米国の

                  3つの一人当たりGDP - himaginary’s diary
                • これはハマスの罠なのか? - himaginary’s diary

                  今回のハマスの蛮行は世界を震撼させたが、なぜそこまでの残虐行為を行ったかを考えると、イスラエルにガザ侵攻を余儀なくさせるためではないか、という仮説が一つ考えられる。そこで「Hamas trap」でぐぐってみると、同様の仮説を立てている記事に幾つか行き当たったので、引用してみる。 まずは、USAIDに在籍していたR. David Hardenによる10/11付けNYT論説記事からの引用。 Hamas knew that the attack on Saturday would give Mr. Netanyahu little choice but to retaliate with a ground invasion, and it knows that the Israel Defense Forces’ technology and military superiority would

                    これはハマスの罠なのか? - himaginary’s diary
                  • 経済学者と疫学者の暗闘 - himaginary’s diary

                    こちらで関連ツイートをブクマしたように、疫学者と経済学者のコロナ対策に関する考え方の違いが大きくなっているようである。簡単に言うと、経済学者が政策介入の無い経済活動を重視し、オミクロン株のインフルエンザ並みの軽症化に鑑みてコロナへの特措法の適用廃止を求めているのに対し、疫学者はオミクロン株の重症化率の低さ以外の要因も重視して、政策介入の撤廃に慎重な姿勢を示している*1。 言うなれば、変異株の未知性を警戒する疫学者側が、経済学のいわゆるナイトの不確実性的な要因を考慮して政策手段を採る余地をなるべく残そうとしているのに対し、経済学者側が法学者張りに法律のトリガー条項を厳格に解釈し、ナイトの不確実性的な要因は捨象する姿勢を取っているように見える。やや皮肉な言い方をすれば、経済危機の際にナイトの不確実性的な要因を持ち出して思い切った財政政策手段を採ることを求めた内外の声に抗し、財政規律や経済の自律

                      経済学者と疫学者の暗闘 - himaginary’s diary
                    • 銃の増加による予期せぬ結果の増加:米国の都市において銃携帯の権利が犯罪的行動と警察行動に与える影響 - himaginary’s diary

                      というNBER論文が上がっている。原題は「More Guns, More Unintended Consequences: The Effects of Right-to-Carry on Criminal Behavior and Policing in US Cities」で、著者はJohn J. Donohue(スタンフォード大)、Samuel V. Cai(同)、Matthew V. Bondy(同)、Philip J. Cook(デューク大)。 以下はその要旨。 We analyze a sample of 47 major US cities to illuminate the mechanisms that lead Right-to-Carry concealed handgun laws to increase crime. The altered behavior of

                        銃の増加による予期せぬ結果の増加:米国の都市において銃携帯の権利が犯罪的行動と警察行動に与える影響 - himaginary’s diary
                      • トランプ当選に対するアセモグルの反応 - himaginary’s diary

                        がX(ツイッター)に投稿されている(H/T タイラー・コーエン)。前回エントリでクルーグマンとブランシャールの反応と併せて紹介しようかと思ったが、かなりの長文なのでこれで一つのエントリとしてみる。 This is a repost of my original thread about Trump's election, which has since disappeared. This time I am reposting it is a single message. I feel anxious and saddened by Trump’s election. Years of turmoil and uncertainty await us. I have also come to believe that this is not Trump’s win. It is the

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                        • トランプは良いこともするのか? - himaginary’s diary

                          サマーズが第二次トランプ政権の危険性について深刻な懸念を表明している。 以下は12/20ツイート。 The @FT's Unhedged asked me about the macroeconomic implications of a second Trump term: When you have a president who challenges the results of elections and brags about what he could do in one day as a dictator, it is not something that can be completely relied on. That is a profound threat to our long-run prosperity, and therefore short-run asse

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                          • 日本の物価が相対的に下がると円の実質実効レートは下がる - himaginary’s diary

                            円の実力が50年ぶりの低水準というニュースに対し、表題のことを理解していないと思われる反応が散見されたのでその件でエントリを起こそうかと思ったところ、奇しくもちょうど13年前の今日付けでそうした内容のエントリを上げていたことに気付いた。 この点については関西学院大の朴氏がツイッターでBISの資料などを引いて精力的に解説されているが、小生の13年前のエントリで引いた日銀のこのページ*1の解説も単純な2カ国モデルによる説明ということで直観的に分かりやすいかと思われる。13年前に引用した同ページの結論的な箇所を改めて引用すると以下の通り。 一般に、日本の物価上昇率が実効為替レートの算出対象となっている相手国・地域の物価上昇率を上回る場合には、実質実効為替レートは外貨建て名目為替レートが「円高」に振れた場合と同じ方向に動き、逆の場合には外貨建て名目為替レートが「円安」に振れた場合と同じ方向に動くと

                              日本の物価が相対的に下がると円の実質実効レートは下がる - himaginary’s diary
                            • ロシアの外貨準備を接収せよ - himaginary’s diary

                              という論陣をブランシャールがツイッター上で張っている。 I thought it was a bad idea to seize Russian reserves before the US congress had voted on the Ukraine package. It gave too easy a way to Congress to vote no and pass the buck. Now that they have voted, it is hard to think of good reasons not to seize. Yes, it will create a…— Olivier Blanchard (@ojblanchard1) 2024年4月25日 I thought it was a bad idea to seize Russian reserv

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                              • インフレ税は本当にあるのか? 中産階級と超富裕層にはない - himaginary’s diary

                                というNBER論文が上がっている(関連記事)。原題は「Is There Really an Inflation Tax? Not For the Middle Class and the Ultra-Wealthy」で、著者はEdward N. Wolff(NYU)。 以下はその要旨。 One hallmark of U.S. monetary policy since the early 1980s has been moderation in inflation (at least, until recently). How has this affected household well-being? The paper first develops a new model to address this issue. The inflation tax on income is d

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                                • マンキュー「パンデミックに寄せて」 - himaginary’s diary

                                  マンキューが「Thoughts on the Pandemic」というブログ記事を上げ、箇条書きで以下のようなことを述べている。 景気後退の可能性は高く、おそらくそれが最適である(望ましい、という意味ではなく、この状況下で我々ができる最善の行動という意味で)。 医療危機の緩和が最優先課題。ファウチ博士が要求するものはすべて与えよ。 財政当局は総需要ではなく社会保険に重点を置くべし。ファイナンシャル・プランナーは、6ヶ月の生活費を予備費として確保しておけ、と人々に説くが、残念ながら、多くの人がそうしていない。本当に困っている人を特定するのが難しいこと、およびそうした特定に付き纏う問題を考えると、手始めにすべての米国人に1000ドルの小切手を可能な限り早急に送るのが良いだろう。この状況下では給与税減税にはあまり意味はない。というのは、働けない人には何ら恩恵がないからである。 政府債務の拡大を懸

                                    マンキュー「パンデミックに寄せて」 - himaginary’s diary
                                  • 経済学は決着していない - himaginary’s diary

                                    と題したINET動画(原題は「Economics Isn't Settled」)で、「The History of Economic Thought Website*1」を創ったGoncalo Fonsecaが、同サイトを作成した動機と経済学史を学ぶことの重要性について語っている(H/T Mostly Ecoomics)。 最近、なぜ人文系の人は経済学を学ぶ際にまず経済学史を学ぼうとするのか、という話がツイッターの一角で話題になっていたが、期せずしてFonsecaはここでその一つの回答を提示しているように思われる。 以下はyoutube版の文字起こしからの引用。 Why is the history of economic thought important? Almost like asking why is economics important, I mean, economics,

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                                    • 残る傷跡:青年期の鬱病がその後の労働市場での帰結に及ぼす影響 - himaginary’s diary

                                      というNBER論文が上がっている(H/T タイラー・コーエン、ungated版)。原題は「Lasting Scars: The Impact of Depression in Early Adulthood on Subsequent Labor Market Outcomes」で、著者はBuyi Wang(コロンビア大)、Richard G. Frank(ハーバード大)、Sherry A. Glied(NYU)。 以下はその要旨。 A growing body of evidence indicates that poor health early in life can leave lasting scars on adult health and economic outcomes. While much of this literature focuses on childhood

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                                      • なぜ高齢の学者はスローダウンするのか? - himaginary’s diary

                                        というNBER論文をHamermeshらが上げている。原題は「Why Do Older Scholars Slow Down?」で、著者はDaniel S. Hamermesh(テキサス大学オースティン校)、Lea-Rachel Kosnik(ミズーリ大学セントルイス校)。 以下はその要旨。 Using data describing all “Top 5” economics journal publications from 1969-2018, we examine what determines which authors produce less as they age and which retire earlier. Sub-field has no impact on the rate of production, but interacts with it to alte

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                                        • カズオ・イシグロのキャンセル・カルチャー批判 - himaginary’s diary

                                          御田寺圭(白饅頭)氏の現代ビジネス記事が物議を醸している。同記事で白饅頭氏は、「リベラルは多様性を反映することを心掛けるべき」という趣旨のカズオ・イシグロの言を冒頭で引用した上で、リベラルにおける画一的な価値観への同調圧力を槍玉に挙げた。それに対し、記事を問題視する人たちは、そうしたリベラル批判をイシグロは口にしておらず、白饅頭氏はイシグロの発言を曲解している、と言う。 確かに、例えばこちらの白饅頭氏批判記事が指摘するように、白饅頭氏が引用した東洋経済のイシグロのインタビュー記事では、「キャンセルカルチャー」的なものへの懸念や言及は表明されていない。しかし実は、少し前のBBC記事でイシグロは、そうした懸念を明確に示している*1。この記事はBBCのインタビュー番組を基にしているが、こちらのテレグラフ記事では番組におけるイシグロの言葉がより長く引用されているので、以下に前半部分を紹介してみる。

                                            カズオ・イシグロのキャンセル・カルチャー批判 - himaginary’s diary
                                          • 望月氏のABC理論の証明の何が問題になっているのか? - himaginary’s diary

                                            既にニュースで報じられているように、京都大学の望月新一教授によるabc予想の証明が査読を経てPRIMS特別号電子版に3月4日付で掲載されたが、本ブログの過去のエントリ(ここ、ここ、ここ)で紹介した海外の学者と望月氏との溝はむしろ深まったようである。海外の学者による批判の一つの舞台となったブログ「Not Even Wrong」の運営主であるコロンビア大のPeter Woitは、「ABC is Still a Conjecture」というエントリを上げて、望月氏の証明を認めない姿勢を堅持している。このエントリはサイエンスライターの中野太郎氏が訳されているが(cf. 追記の訳、中野氏の関連ツイート)、その中野氏が、批判の急先鋒(かつフィールズ賞を受賞した大物数学者)であるピーター・ショルツに取材したところ(cf. 中野氏の関連ツイート)、ショルツも証明を認めない姿勢を堅持しているという。 Woi

                                              望月氏のABC理論の証明の何が問題になっているのか? - himaginary’s diary
                                            • 経済学者のように考える:如何にして米国の公共政策で効率が平等に取って代わったか? - himaginary’s diary

                                              つい最近読み終えたとして表題の以下の本の惹句をMostly Economicsが紹介している。 Thinking like an Economist: How Efficiency Replaced Equality in U.S. Public Policy (English Edition) 作者:Berman, Elizabeth PoppPrinceton University PressAmazon For decades, Democratic politicians have frustrated progressives by tinkering around the margins of policy while shying away from truly ambitious change. What happened to bold political vision

                                                経済学者のように考える:如何にして米国の公共政策で効率が平等に取って代わったか? - himaginary’s diary
                                              • 資本の動きが遅い時の量的引き締め - himaginary’s diary

                                                というNBER論文が上がっている(ungated(SSRN)版)。原題は「Quantitative Tightening with Slow-Moving Capital」で、著者はZhengyang Jiang(ノースウエスタン大)、Jialu Sun(同)。 以下はその要旨。 We document shifts in investor composition during quantitative tightening, which suggest that investors adjust their portfolios at different speeds. To understand its implications for bond valuation, we develop a general equilibrium model which highlights the

                                                  資本の動きが遅い時の量的引き締め - himaginary’s diary
                                                • ピケティについて簡単に - himaginary’s diary

                                                  マンキューが表題のブログエントリ(原題は「Piketty in Brief」)でピケティの以下の新刊を一蹴している。 A Brief History of Equality (English Edition) 作者:Piketty, ThomasBelknap PressAmazon I just read Thomas Piketty's latest book, A Brief History of Equality. It is the best window into Piketty's thinking to date in part because it is, unlike his previous books, mercifully short (244 pages, not counting the appendix). Of course, Piketty's thin

                                                    ピケティについて簡単に - himaginary’s diary
                                                  • Shirakawa(2023)対白川(2002) - himaginary’s diary

                                                    IMFの白川論文が話題になったが、小生から見ておかしいと思われる点をまとめておく。 日本の2000-2012年の生産年齢人口当たりの成長率がG7の中で最も高いことをゼロ金利制約の無効性の根拠としているが、12年前の拙エントリで示したように、その期間の生産年齢人口当たりの成長率は、リーマン・ショックの影響もあり、期間の取り方によって簡単に国別の大小がひっくり返るので、分析や議論の根拠に使うのは不適切。 同期間の需給ギャップを見ると、内閣府の計算でも日銀の計算でも概ねマイナスであった時期であり、需要が供給に比べて不足していた。その期間に確かに実質GDPは2000年度の485.6兆円から2012年度の517.9兆円に6.7%増加しているが、一方で名目GDPは537.6兆円から499.4兆円に7.1%減少している。即ちGDPデフレータの1割以上の低下が生じていたのであり、需給ギャップのマイナス傾向

                                                      Shirakawa(2023)対白川(2002) - himaginary’s diary
                                                    • サマーズの日銀の金融引き締めへの評価 - himaginary’s diary

                                                      サマーズが7月末の日銀の利上げとその後の市場の動乱への対応について述べたコメントがネットの一部で話頭に上っている。以下はブルームバーグ日本語記事からの引用。 サマーズ氏は、特に新任のセントラルバンカーは初めて運転席に座るドライバーのように「ハンドルを切り過ぎる」傾向があると話す。日銀の場合は「あれほど長期にわたってゼロ金利政策を続けた後だから、もっと緩やかに政策をシフトできたのではないだろうか」と指摘。7日の内田真一副総裁によるコメントに言及し、「日銀は市場に対応している姿勢をあそこまできっぱりと見せる必要はなかった」とサマーズ氏は述べた。 「オリンピックの言葉を借りれば、私なら日銀から『出来栄え点』を少し減点するだろう」とサマーズ氏は語った。 サマーズはこちらのツイートで当該のコメントを行ったブルームバーグテレビジョンの動画にリンクしている。この回の番組の主眼はトランプがFRBの金融政策

                                                        サマーズの日銀の金融引き締めへの評価 - himaginary’s diary
                                                      • 米国は本当に第二次大戦の債務を成長で縮小したのか? - himaginary’s diary

                                                        というNBER論文をローレンス・ボールらが上げている(H/T タイラー・コーエン)。原題は「Did the U.S. Really Grow Out of Its World War II Debt?」で、著者はJulien Acalin(ジョンズ・ホプキンズ大)、Laurence M. Ball(同)。 以下はungated版の結論部。 This paper investigates the factors behind the behavior of the U.S. debt/GDP ratio since 1946, both the large decline in the ratio from 1946 to 1974 and the large increase since then. We seek to decompose the movements of debt/GD

                                                          米国は本当に第二次大戦の債務を成長で縮小したのか? - himaginary’s diary
                                                        • 機械学習は防犯に役立つのに十分なほど銃被害を予測できる - himaginary’s diary

                                                          というややSF染みた*1NBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Machine Learning Can Predict Shooting Victimization Well Enough to Help Prevent It」で、著者はSara B. Heller(ミシガン大)、Benjamin Jakubowski(NYU)、Zubin Jelveh(メリーランド大)、Max Kapustin(コーネル大)。 以下はその要旨。 This paper shows that shootings are predictable enough to be preventable. Using arrest and victimization records for almost 644,000 people from the Chicago

                                                            機械学習は防犯に役立つのに十分なほど銃被害を予測できる - himaginary’s diary
                                                          • マンキューのMMT論 - himaginary’s diary

                                                            マンキューが昨年12月に「A Skeptic’s Guide to Modern Monetary Theory」という小論を書いている(H/T マンキューブログ)。以下はその概要。 自国通貨を発行している国は債務不履行になることはない、というMMTの主張については、以下の3点で異論がある: 債務を支払うために政府が発行する貨幣は、最終的には銀行システムの準備預金となる可能性が高い。現行の金融システムでは準備預金に付利を行っているため、政府はそうした準備預金に(FRB経由で)利子を支払う必要があり、結局のところ実質的には借金していることになる。貨幣が永久に準備預金の形に留まるとしても、利子は時間と共に累積していく。MMT支持者はその利子も貨幣の発行によって賄えば良いというかもしれないが、拡張し続けるマネタリーベースはさらなる問題を引き起こす。資産効果によって総需要が増え、最終的にはインフレ

                                                              マンキューのMMT論 - himaginary’s diary
                                                            • 開発援助における不正会計の検知 - himaginary’s diary

                                                              という、現在日本のネットで騒ぎになっている問題に照らすとタイムリーとも言えるNBER論文が上がっている(9月時点のWP)。原題は「Detecting Fraud in Development Aid」で、著者はJean Ensminger(カリフォルニア工科大)、Jetson Leder-Luis(ボストン大)。 以下はその要旨。 When organizations have limited accountability, antifraud measures, including auditing, often face barriers due to institutional resistance and practical difficulties on the ground. This is especially true in development aid, where a

                                                                開発援助における不正会計の検知 - himaginary’s diary
                                                              • 事後に対象者を絞る社会保険 - himaginary’s diary

                                                                をパンデミック対策としてマンキューがブログで提案している。 単純で素早くパンデミック対策の給付を行うためには全国民に配るのが良い、と言う経済学者もいるが、そうした気前の良い給付は本当に困っている人に対象を絞っていないので高くつく、と懸念する経済学者もいる。かといって本当に困っている人に対象を絞った給付は対象者の特定に時間が掛かり、かつ、漏れが生じる恐れもある。 そこでマンキューが提案するのが、事前に対象者を絞るのではなく事後に対象者を絞るやり方である。 具体的には、以下の給付と所得税付加税の組み合わせを提案している: 今後Nヶ月、全員に毎月Xドルを給付する。 2020年に、2021年4月(もしくは数年後)を納税期限とする所得税付加税を課す。額はN*X*(Y2020/Y2019)とする。ここでY2020は各人の2020年の所得、Y2019は2019年の所得である。ただし、この所得税付加税はN

                                                                  事後に対象者を絞る社会保険 - himaginary’s diary
                                                                • 米史上最大の法人減税からの教訓 - himaginary’s diary

                                                                  というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Lessons from the Biggest Business Tax Cut in US History」で、著者はGabriel Chodorow-Reich(ハーバード大)、Owen M. Zidar(プリンストン大)、Eric Zwick(シカゴ大)。 以下はその要旨。 We assess the business provisions of the 2017 Tax Cuts and Jobs Act, the biggest corporate tax cut in US history. We draw five lessons. First, corporate tax revenue fell by 40 percent due to the lower rate and more generous exp

                                                                    米史上最大の法人減税からの教訓 - himaginary’s diary
                                                                  • 経済成長は高齢者を死に追いやる──経済成長にまつわる不都合な真実──|トアニ

                                                                    (有料ですが最後まで読めます。お気に召しましたら投げてくれると嬉しいです。) まず、この画像を見てほしい。 引用元→https://himaginary.hatenablog.com/entry/20111223/why_boom_times_killこれは経済成長と高齢者の死亡率との間の関係についての調査結果(正確には、景気循環と死亡率の間の関係についての調査結果)を示した論文の邦訳である。 https://www.nber.org/system/files/working_papers/w17657/w17657.pdf そして、これがその論文の原著である。 (私にはこの論文を読み解くだけの英語力はまだ無いため、このはてなブログの邦訳をそのまま引っ張ってきてしまっているが、そこはご愛嬌ということで許してもらいたい。本当にすみません。) 文章を読むことが苦手な経済学徒の諸君(英語が読めな

                                                                      経済成長は高齢者を死に追いやる──経済成長にまつわる不都合な真実──|トアニ
                                                                    • 21世紀の金融政策:学ばれた教訓と今後の課題 - himaginary’s diary

                                                                      と題されたBISの年次経済報告書の第2章をMostly Economicsが紹介している。原題は「Monetary policy in the 21st century: lessons learned and challenges ahead」で、著者はBIS金融経済局長のClaudio Borio。 以下は同章で提示されている、大平穏期の見せかけの安定を打ち破った大金融危機とユーロ債務危機、コロナ禍とその後の予期せぬインフレという一連の異常事態を通じて学習された、金融政策ができること、できないことについての5つの教訓。 力強い金融引き締めは、インフレが高インフレレジームに移行するのを防ぐことができる。 たとえ中銀の当初の対応が遅かったとしても、急いで事態に追いついて、業務を遂行するのに必要な決意を示せば、成功することができる。 力強い行動、特に中銀のバランスシートの活用は、危機時の金融

                                                                        21世紀の金融政策:学ばれた教訓と今後の課題 - himaginary’s diary
                                                                      • クルーグマン「マクロ経済学はISLM派の勝利で決着がついた(ただし一部のおかしな連中を除く)」 - himaginary’s diary

                                                                        バイデンプランを巡る経済学者の論争(cf. ここ)についてノアピニオン氏がブログエントリを書いたところ(邦訳)、クルーグマンがツイッターで以下のように異論を唱えた*1。 So actually I think Noah, unusually, has this mostly wrong. These macro wars are very different from those of 2011; the debates are about numbers, not principles — basically because the big conceptual issues were settled when one side won This time we really are all Keynesians now — or at any rate nobody is listen

                                                                          クルーグマン「マクロ経済学はISLM派の勝利で決着がついた(ただし一部のおかしな連中を除く)」 - himaginary’s diary
                                                                        • ハイパーインフレがナチスを台頭させたわけではない - himaginary’s diary

                                                                          以前こちらで紹介した緊縮財政策とナチスの関係に関する論文を共著したGregori Galofré-Vilà(ナバーラ州立大)が、表題の主旨の論文を書いている(Mostly Economics経由の本人のLSEブログポスト経由)。 以下はその要旨。 I study the link between monetary policy and populism by looking at the hyperinflation in Germany in 1923, one of the worst spells of inflation in history, and the Nazi electoral boost in 1933. Contrary to received wisdom, inflation data for over 500 cities show that areas mo

                                                                            ハイパーインフレがナチスを台頭させたわけではない - himaginary’s diary
                                                                          • 財政赤字を巡る論点整理の一つの試み - himaginary’s diary

                                                                            防衛費の増額など政府支出の増加が求められる中、それを増税で賄うのか、それとも国債発行で賄うのか、という議論が折に触れ再燃している。ここでは、そうした論争における各論者の立場の違いを、自分なりに簡単に整理してみる。 ある年度の歳出と歳入を考えた場合、当年度の歳出を賄うのは税収か国債発行による借り入れに二分され、借り入れは最終的な返済手段によって3種類に分類できる。 当年度の歳出を賄う手段 当年度の税収 借り入れ 借り入れの最終的な返済手段による分類 将来の自然増収 将来の増税 将来のインフレ このような財政の資金調達に対する各論者の立場を大まかに分類すると、以下の3つの理念型に大別される、というのがここでの試論。 均衡財政主義 この立場の考え方は概ね以下の通り。 当年度の歳出はあくまでも当年度の税収で賄うことを原則とすべき。借り入れは本来するべきではなく、するとしても資金調達の技術的な要因に

                                                                              財政赤字を巡る論点整理の一つの試み - himaginary’s diary
                                                                            • 『将来世代はグレタ・トゥーンベリを許さない? - himaginary’s diary』へのコメント

                                                                              ブックマークしました ここにツイート内容が記載されます https://b.hatena.ne.jp/URLはspanで囲んでください Twitterで共有

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                                                                              • 誰が殺したフィリップス曲線? ある殺人ミステリー - himaginary’s diary

                                                                                というFRB論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「Who Killed the Phillips Curve? A Murder Mystery」で、著者はFRBのDavid RatnerとJae Sim。 以下はその要旨。 Is the Phillips curve dead? If so, who killed it? Conventional wisdom has it that the sound monetary policy since the 1980s not only conquered the Great Inflation, but also buried the Phillips curve itself. This paper provides an alternative explanation: labor market policie

                                                                                  誰が殺したフィリップス曲線? ある殺人ミステリー - himaginary’s diary
                                                                                • ワクチン義務化が感染拡大に与える影響:カレッジのコロナワクチン義務化の実証結果 - himaginary’s diary

                                                                                  というNBER論文が上がっている。原題は「The Effect of Vaccine Mandates on Disease Spread: Evidence from College COVID-19 Mandates」で、著者はRiley K. Acton(マイアミ大)、Wenjia Cao(ミシガン州立大)、Emily E. Cook(テュレーン大)、Scott A. Imberman(ミシガン州立大)、Michael F. Lovenheim(コーネル大)。 以下はその要旨。 Since the spring of 2021, nearly 700 colleges and universities in the U.S. have mandated that their students become vaccinated against the COVID-19 virus.

                                                                                    ワクチン義務化が感染拡大に与える影響:カレッジのコロナワクチン義務化の実証結果 - himaginary’s diary