タイトル「アムニジアスコープ」、アムニジアとは記憶喪失とか健忘を意味し、スコープは視野とか範囲とか……、あと他には銃器の照準器という意味にも使われる。どの組み合わせが著者の意図したニュアンスに近いのかは解らないけれども、僕個人としては「過ぎ去ってしまい真偽が定かではなくなっていく曖昧な記憶としてでしか過去を留めておくことの出来ない人間が、いざ自らを振り返り、その人生を覗きこもうとしたときに自分の歩んだ道のりの不確かさに愕然とする話」なのだと思った。時が経つにつれて何かが抜け落ちて記憶が曖昧となっていく様を「アムニジア」と表現し、それを今現在にて思い返して(覗きこんで)いる視線を「スコープ」と表現しているのかなぁと思った……。人間はもともとの設定からして記憶を喪失しながら生きているのかもしれない。むしろ雑多な世の中ではそうとしか生きられない存在なのかもしれないと思わされた。 過去、現在、未来