〈2010年底からの旅:3〉 東浩紀さん(批評家) 諦念逆手に新たな出発2010年1月13日東浩紀さん=東京都渋谷区、高波淳撮影 「ゼロ年代」の思想・批評は「スカスカ」だった、と語る。それが、2000年から10年間の総括だ。 オウム事件や阪神大震災が起きた1990年代のように、社会の地殻変動を象徴する現象も見あたらず、千人、二千人にしか流通しない言葉が再生産されただけ。 「何の社会的影響力もなくなりました」 この間の思想シーンで“一人勝ち”したとも評される東さんだが、「思想・批評の凋落(ちょうらく)ぶりは出版不況どころじゃない。もっとずっと急速な動きだと思う」と危機感をあらわにする。 ■「底」と認識せず ただ、今が「底」だとの認識はないという。 「思想の話に限らず、世の中、底だ底だと言い過ぎます。過剰な不安感が挑戦を尻込みさせていることの方が、むしろ気になります」 「底って『かつて良かった