お金にまつわる学問はたくさんありますが、その中には「知っているようで知らない学問」も多いのではないでしょうか。これらを詳しく理解すると、自分の家計や貯蓄、資産運用のプラスになるかもしれません。 そんな考えのもと、取材を通してお金にまつわる学問を深掘りする本連載。今回のテーマは「行動経済学」です。お話を聞いたのは、東京大学大学院経済学研究科・経済学部の阿部誠教授。行動経済学を知ると、お金の使い方や買い物の仕方にも役立つとのこと。詳しく聞きました。 なぜ価格を下げたら、売上も落ちた? ――行動経済学は、一般的な「経済学」とどう違うのでしょうか? 阿部 分かりやすい例を一つお話ししましょう。あるアメリカの高級オーディオメーカーが、日本での売上を伸ばそうと製品の価格を下げたら、反対に売上が落ちたことがあります。 伝統的な経済学では、値段が上がると需要が下がるという「右下がりの需要曲線」と呼ばれる考