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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (20)

  • しなくていい失敗を回避する『プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本』

    プロジェクトマネジメント(PM)の重要性は、あまり認知されていないように見える。 うまく回っているときは「あたりまえ」扱いでスルーされ、いざ暗礁に乗り上げたときに「どうなってるんだ!?」と糾弾の的となる。 プロジェクトをうまく回していくコツというか勘所は確かにあり、相応のトレーニングが必要だ。にもかかわらず、なぜか蔑ろにされている。ろくに訓練もしないまま、「見て学べ」「やって覚えよ」と実践に放り込み、メンタルをやられず生き延びた者が幹部になる。 これは悪手だ。 よく、「失敗から学ぶほうがより身につく」などと唱える輩がいるが、しなくていい失敗は避けたほうがいいに決まってる。そして、この「しなくていい失敗」のほとんどは、基を押さえるだけで回避できる。 この、PMの基を押さえているのが書だ。 『プロジェクトマネジメントの基が全部わかる』には、プロジェクトを回していくために「あたりまえ」

    しなくていい失敗を回避する『プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本』
  • 時を忘れる小説

    大きな現実の前では、文学はつくづく無力だな。 そも文学は人と人との間学(あいだがく)なのだから、人を超える圧倒的な事物には、術がない。しかし、言葉が人に対して影響をもつものなら、それがいかに微かであろうとも、その力を信じる。わたしは、物語の力を、信じる。 このエントリでは、時を忘れる夢中小説、徹夜小説を選んでみた。計画停電でテレビや電車が動かないとき、開いてみるといいかも。amazonからは書影のみお借りして、リンクはしていない。自分の書棚か、営業してる屋を巡ろう。文庫で、手に入り安そうなもので、かつ面白さ鉄板モノばかり選んだ。いま手に入りにくいのであれば、手に取れるようになったときの「おたのしみリスト」として期待してくださいませ。 ■大聖堂(ケン・フォレット、ソフトバンククリエイティブ) 十二世紀のイングランドを舞台に、幾多の人々の波瀾万丈の物語……とamazon評でまとめきれないぐら

    時を忘れる小説
  • ファンタジーの最高傑作『氷と炎の歌』

    夢中にさせて寝かせてくれず、ドキドキハラハラ手に汗握らせ、呼吸を忘れるほど爆笑させ、ページを繰るのが怖いほど緊張感MAXにさせ、いしばった歯から血の味がするぐらい怒りを煽り、思い出すたびに胸が詰まり涙を流させ、叫びながらガッツポーズのために立ち上がるほどスカッとさせ、驚きのあまり手からが転げ落ちるような傑作がこれだ。 この世でいちばん面白い小説は『モンテ・クリスト伯』で確定だが、この世でいちばん面白いファンタジーは『氷と炎の歌』になる。 書いた人は、ジョージ・R・R・マーティン。稀代のSF作家であり、売れっ子のテレビプロデューサー&脚家であり、名作アンソロジーを編む優れた編集者でもある。 短篇・長編ともに、恐ろしくリーダビリティが高く、主な文学賞だけでも、世界幻想文学大賞(1989)、ヒューゴー賞(1975、1980)、ネビュラ賞(1980、1986)、ローカス賞(1976、1978

    ファンタジーの最高傑作『氷と炎の歌』
  • リアル君の名は。おっさんが女の子の匂いを買ってきて身につけたら、たまらない背徳感を味わえた

    「女の子の匂い」をご存じだろうか? 「臭い」ではなく「匂い」である。 よく言われる、せっけんの香りではない。デオドラントや柔軟剤、コンディショナー、乳液、ハンドクリーム、化粧水、オーラルケア、ファンデなどの香料、フレグランスでもない。それらは、女の子から漂ってくる様々な匂いを構成する要素にすぎない。 そうした、外づけの化合物ではなく、女の子自身から発する匂いだ。ココナッツミルクや白桃を想起させる、何とも言えない、「匂い」というより、「あの感じ」といえば分かるだろうか。心地よく、はっとする感じ、あるいは身体的にオンになる感覚である。 これは、わたしの変態性が生み出した妄想にすぎぬ、と考えていた。しかし、優れた先人たちの研鑽と研究の末、「女の子のいい匂い」とは、以下の物質であることが判明している。 ・高級脂肪酸と安息香酸エストラジオール ・ラクトンC10、C11 では、女の子の匂いを再現するこ

    リアル君の名は。おっさんが女の子の匂いを買ってきて身につけたら、たまらない背徳感を味わえた
  • PMBOK4の変更点

    PMBOK(A Guide to the Project Management Body of Knowledge)の第4版をデジタルコンテンツとして入手したので、3版からの変更点をまとめる。なお、PMBOK4のデジタルコンテンツを参照するためにはPMI会員になる必要がある([PMI]が入口)。書影は英語のペーパーバック版。PMP取得を目指すなら必携かと。このエントリのまとめの目次は以下の通り。 1. プロジェクトマネジメント計画書とプロジェクト文書の包含範囲の変更 2. 定義変更 : 「変更要求」、「プロジェクト憲章」、「スコープ記述書」 3. 削除/追加されたプロセス 4. 知識エリアごとの変更内容 ■ 1. プロジェクトマネジメント計画書とプロジェクト文書の包含範囲の変更 まず、「プロジェクトマネジメント計画書」と「プロジェクト文書」が明確に異なるものとして扱われている。3版では「文

    PMBOK4の変更点
    remixed
    remixed 2019/02/04
  • PMBOK4の変更点

    PMBOK(A Guide to the Project Management Body of Knowledge)の第4版をデジタルコンテンツとして入手したので、3版からの変更点をまとめる。なお、PMBOK4のデジタルコンテンツを参照するためにはPMI会員になる必要がある([PMI]が入口)。書影は英語のペーパーバック版。PMP取得を目指すなら必携かと。このエントリのまとめの目次は以下の通り。 1. プロジェクトマネジメント計画書とプロジェクト文書の包含範囲の変更 2. 定義変更 : 「変更要求」、「プロジェクト憲章」、「スコープ記述書」 3. 削除/追加されたプロセス 4. 知識エリアごとの変更内容 ■ 1. プロジェクトマネジメント計画書とプロジェクト文書の包含範囲の変更 まず、「プロジェクトマネジメント計画書」と「プロジェクト文書」が明確に異なるものとして扱われている。3版では「文

    PMBOK4の変更点
    remixed
    remixed 2019/02/04
  • 『はざまの哲学』はスゴ本

    「哲学は何の役に立つのですか?」 哲学をやっていて良いのは、メタ的に疑う目を養えることだ。 たとえば、「哲学は何の役に立つのですか?」という質問が、どんな前提で発せられており、その前提が孕む別の問題に気づけるようになる。 質問者は、「哲学は〇〇の役に立ちます」という回答を期待している。〇〇には、適当な言葉が入る。たとえば、「論理的思考」や「詭弁術」、あるいは「認知バイアスの明確化」「会議における論駁」など、いくらでもある。そこから質問者は、〇〇を身につけるには、別に哲学である必要はない、と言うことも可能だ。 まさにここが問題になる。 「哲学が〇〇の役に立つ(a)」からといって、「〇〇のために(b)哲学がある」わけではない。この(a)と(b)を混同させる発想が、質問の前提にあるのだ。いま哲学を槍玉に挙げたが、哲学に限らず、歴史数学、文学など、学問分野は質問者の意図によって入れ替え可能である

    『はざまの哲学』はスゴ本
  • 「見る」をアップデートする『名画読解』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    マルセル・プルーストの「真の発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ」を実現する一冊。これを読むことは、新しい目を手に入れる旅といっていい。 きっかけはこのツイート。 読書猿先生が紹介した『名画読解』はdainさんで言うスゴなり(私見)。dainさんの書評で、新しい目を提供するのがスゴだと言っていたが、このは身体としての眼そのものが変わる実感を得られた。世界の解像度が上がって見えるので是非読んでほしい。教養(雑学)の美術ではなく、観察としての美術 — ぶんもう (@sikoubox2357) 2018年8月17日 読書猿先生が紹介した『名画読解』はdainさんで言うスゴなり(私見)。dainさんの書評で、新しい目を提供するのがスゴだと言っていたが、このは身体としての眼そのものが変わる実感を得られた。世界の解像度が上がって見えるので是非読んでほしい。教

    「見る」をアップデートする『名画読解』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
  • 人間が「どうなっているか」と、人間が「どうあるべきか」の間で問いつづける哲学『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』

    人間が「どうなっているか」と、人間が「どうあるべきか」の間で問いつづける哲学『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』 わたしの人間観を更新する一冊。 もっと正確に言うと、進化心理学・行動経済学・認知科学の研究を通じ、わたしが抱いている「人間とはコレコレである」人間観がアップデートされつつあることを教えてくれる。 書は、吉川浩満氏の論文・インタビュー集である。発表媒体によりモチーフは異なれど、テーマは「人間とは何か?」になる。「人間とは何か?」という問いかけを、「人間がどのように”見える”か?」という人間観にした上で、その変遷を、人工知能、認知バイアス、利己的遺伝子、人新世という様々な斬り口から掘ってゆく。 よくあるサイエンス・ノンフィクションと異なるのは、「(人が)どうなっているか」の科学的解説に、道徳哲学の「(人が)どうあるべきか」議論をぶつけているところ。おかげで、認知科学の進展を

    人間が「どうなっているか」と、人間が「どうあるべきか」の間で問いつづける哲学『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』
  • おっさんから若者に贈る「経験を買う」6冊: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    結論から言うと、経験は買える。 適切なタイミングで適切なと出会うことで、しなくてもいい経験や、身につけておくべき知恵を”買う”ことができる。今「おっさん」である私から、20年前の「若者」だった私に、いい仕事をする上で読んで欲しいを選んだ。 20年前は、炎上プロジェクトに飛び降りて、鎮火しつつ撤退する「しんがり」役を仰せつかっていた。負けることは決まっているが、死なないように生きることばかり考えていた。将来に漠然とした不安を感じていたものの、とにかく目の前の障壁をクリアすることが先決だと思っていた。 今はかなり違う。 身をもって得た経験や教訓はあるが、代償は大きく、もっと効率よく結果につなげることができたはず。この「効率」とは要するに時間だ。莫大な時を費やして手に入れた経験は確かに得難いが、そんなことをしなくても積むことはできた。どうすれば可能か、今なら分かる。 それはを読むことだ。

    おっさんから若者に贈る「経験を買う」6冊: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
  • 読書猿『問題解決大全』はスゴ本

    一生役立つ一冊。 これ、言い切っていいと思うが、わたしが直面するあらゆる問題は、検討済みである。 新しい問題なんてものはない。「問題」をどの抽象度で定義するかにもよるが、新しく「見える」だけで、分析してみれば、分解してみれば、裏返してみれば、再定義すれば、古今東西の人たちがすでに悩み、検討し、着手し、対処してきた問題であるにすぎぬ。 ただし、対応する人にとってみれば、それは新しい問題である。または、初見の状況に直面することもある。だが、人や状況が違えども、問題そのものは、ほどいてみれば、既出なのだ。新しい状況下で、新しい人が、既出の問題を解き直しているといえる。 そして、問題を解決するための方法もまた既出である。わたしが知らないだけで、古今東西の人たちがすでに考え抜いている。ある手法は学問分野になっていたり、またある方法はライフハックやビジネスメソッドになっていたりする。規制や法制度化され

    読書猿『問題解決大全』はスゴ本
  • この本がスゴい!2016

    人生は短く、積読山は高い。 せめては「死ぬまでに読みたいリスト」を消化しようとするのだが、無駄なあがき。割り込み割り込みで順番がおかしくなる。読了した一冊に引きずられ、リストは何度も書き直される。 重要なのは、「あとで読む」は読まないこと。「あとで読む」つもりでリツイート・ブックマークしても読まないように、あとで読もうと思って読んだ試しはない。だから、チャンスは読もうと思ったそのときしかない。実際に手にとって、一頁でも目次でもいいから喰らいつく。勢いに任せて読みきることもあれば、質量と体力により泣く泣く中断するもある。かくして積読山は標高を増す。 ここでは、2016年に読んだうち、「これは!」というものを選んだ。ネットを通じて知り合った読書仲間がお薦めするが多く、それに応じてわたしのアンテナが変化するのが楽しい。わたし一人では、数学経済学歴史学、進化医学や認知科学の良を探し出せな

    この本がスゴい!2016
  • 『思考の技法』はスゴ本

    哲学するための装備を整え、著者自身の戦歴を踏まえながら自分のモノにする一冊。カタログ的なツール集というよりも、もっと大掛かりで強力な、知の増幅装置に近いイメージ。 「意味」「進化」「意識」「自由意志」といった、手ごわいテーマに対し、手ぶらで対峙しないための装備と考えればいい。オッカムの「かみそり」ではなく「オッカムのほうき」、藁人形論法ではなく「グールドの二段階藁人形」など、一般の思考道具よりも威力のある、77もの装備が手に入る。 たとえば、必要以上に多くの仮説を立てるべきでないとするオッカムの「かみそり」よりも、「ほうき」の方がより凶悪だ。なぜなら、自説に都合が悪いエビデンスや統計情報を掃き出して「なかったことにする」ほうきだから。著者ダニエル・デネットは、暗闇で犬が吠えなかったことが手がかりとなった、シャーロック・ホームズのあの推理を思い出させる。知的に不誠実な人が、不都合な事実を隠し

    『思考の技法』はスゴ本
  • この「旅」の本がスゴい

    オススメを持ち寄って、まったり熱く語り合うスゴオフ。 今回のテーマは「旅」、様々な解釈ができるので面白い。地理的な移動をまとめた紀行文から選んでもいいし空想の旅もあり、「○○の旅」とタイトルから攻めても出てくる出てくる。まずは見てくれ、この旅の収穫。 鉄道 「旅マン」ほりのぶゆき(小学館) 「トラベル」横山裕一(Cue comics) チャリ・バイク・クルマ 「モーターサイクルダイヤリーズ」チェ・ゲバラ(角川文庫) 「がむしゃら1500キローわが青春の門出」浮谷東次郎(ちくま文庫) 「ああ、人生グランド・ツーリング」徳大寺有恒(NAVI BOOKS) 「スズキさんの休息と遍歴またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行」矢作俊彦 「行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅」石田ゆうすけ(幻冬舎文庫) 船旅 「星の航海師 ナイノア・トンプソンの肖像」星川淳(幻冬舎) 「KAZ

    この「旅」の本がスゴい
  • このハヤカワがスゴい!

    オススメをもちよって、まったり熱く語り合うスゴオフ、今度は「ハヤカワ」だ。 つまり、早川書房が肴だ。SF、NV、JA、HM、NF、FT、epi、演劇、もちろんハードカバーやミステリマガジンもOKだ。それではと、ハヤカワ・マイベストを選ぼうにも……これがすっごく難しい。「この新潮文庫がスゴい!」と同じで、素晴らしいがありすぎるのだ。 「ハヤカワといえばSFだろ常識的に考えて」、「ハヤカワといえばミステリの王、いや女王」という意見がある。全面的に賛成……なのだが、わたしの傾向では、NV(ノヴェル)やNF(ノンフィクション)を好んで読む。シリーズ丸ごと推したいのがハヤカワepi文庫。epiとは、"epicentre"の略で、「震源」のこと。海外小説の素晴らしさを伝える発信源たる思いが込められているという(こっそり「よりぬきハヤカワさん」と呼んでいる)。スゴが、傑作が、徹夜小説があまりに多

    このハヤカワがスゴい!
  • このハヤカワがスゴい!

    オススメをもちよって、まったり熱く語り合うスゴオフ、今度は「ハヤカワ」だ。 つまり、早川書房が肴だ。SF、NV、JA、HM、NF、FT、epi、演劇、もちろんハードカバーやミステリマガジンもOKだ。それではと、ハヤカワ・マイベストを選ぼうにも……これがすっごく難しい。「この新潮文庫がスゴい!」と同じで、素晴らしいがありすぎるのだ。 「ハヤカワといえばSFだろ常識的に考えて」、「ハヤカワといえばミステリの王、いや女王」という意見がある。全面的に賛成……なのだが、わたしの傾向では、NV(ノヴェル)やNF(ノンフィクション)を好んで読む。シリーズ丸ごと推したいのがハヤカワepi文庫。epiとは、"epicentre"の略で、「震源」のこと。海外小説の素晴らしさを伝える発信源たる思いが込められているという(こっそり「よりぬきハヤカワさん」と呼んでいる)。スゴが、傑作が、徹夜小説があまりに多

    このハヤカワがスゴい!
  • スゴ本100

    いつのまにか1000エントリ超えてたので、ここらで100に絞ってみる。 このblogで「スゴ」認定されたもの、企画「この○○がスゴい」で挙げられたものを、100にまとめてご紹介。順序適当、偏見なし、ビジネス、サイエンス、エロマンガ。ブンガク、ビジュアル、なんでもアリ、啓蒙、アダルト、劇薬なんでもござれ。「ノンフィクション」、「フィクション」、そして「劇薬系・成人指定」の三立てでご紹介。番号は便宜上つけたものなので、ランキングにあらず。 こんなにスゴいに出合えたのは、すべてあなたのおかげ。いいはたくさんあるのだが、全部読んでるヒマもないし、探している時間も足りない。だからわたしは、スゴいを読んでいる「あなた」を探す。あるいはこのblogにやってきた「あなた」の言を待つ。そうしたツッコミやアドバイスをいただき、とても感謝しています。 この100リスト全て鉄板モノだが、「それをスゴ

    スゴ本100
  • 分かりやすさという罠「利己的な遺伝子」

    かなり誤解を招きやすい教養書。 わたしの場合、タイトルと評判だけで読んだフリをしてきたが、その理解ですら間違っていることが分かった。ああ恥ずかしい。このエントリでは、わたしがどんな「誤読」をしてきたかを中心に、書を紹介してみよう。 まず、「遺伝子が運命を決定する」という誤解。「利己的な遺伝子」なる遺伝子がいて、わたしの行動をコントロールしていると考えていた。遺伝子は、わたしの表面上の特徴のみならず、わたしが取りうる行動や反応を支配しており、そこから逃れることはできない――などと思っていた。わたしが利己的なのは遺伝子のせいなんだ、というリクツ。 次に、「われわれは遺伝子の乗り物(vehicle)にすぎない」ことから、虚無的な悲観論に染まりきったこと。「ニワトリは、卵がもう一つの卵を作るための手段」なのだから、われわれは生殖さえすればよろしい。極端に言うならば、生殖しないのであれば、その人生

    分かりやすさという罠「利己的な遺伝子」
  • 作家を、プロデュース「小説作法ABC」

    小説を書く基技術がひととおり。 新米作家の教則として読んでもいいし、深い読書への手引書として扱ってもいい。「小説は、Why? とBecauseで推進される」とか、「読書の快楽は予定調和とドンデン返し」といった基礎だけでなく、「同じ村上でも、春樹は回想、龍は実況」や、「谷崎は変態、三島は売れない俳優」といった、著者の文学観をも垣間見ることができる。 なかなか実践的なのは、各章のおしまいに「練習問題」がついているところ。たとえば、既読の小説のあらすじを100字にまとめろという。要約することで、いわゆる「読ませどころ」へ向かわせる物語の軌跡が見えてくるんだと。さらに、要約した小説の帯コピーを50字でまとめろという。キャッチコピーを考えることで、その小説の「最大の売りどころ」を見抜けという。要は「目玉」やね。おもしろそうだとそのとき感じた作品を漫然と読んできたわたしにとって、いい刺激になる。

    作家を、プロデュース「小説作法ABC」
  • 大学教師が新入生にすすめる100冊

    恒例の100冊リスト。 ただし、これまでの趣向を外した。「ベスト100ランキング」は楽しいが、変わりばえしない。毎年似たような「ベスト100」をヒネり出すのも飽きた。ホントのところ、「大学新入生」と銘打っているものの、わたしのためのブックリストなのだ。読んできたやつ、未読のやつ、読みたいやつを抽出したりふり返るためのきっかけなのだから。 だから、今回はランキングをしない。母体のリストは、「大学教師が新入生にオススメする」なんだけれど、そこからの選出はわたしの手になるもの。今までのリスト作成の過程で知り合えたものや、「読まねばリスト」に追加したもの。積読山に刺さったまま、課題と化しているものを中心に100挙げた。 もちろんこの100冊を参考にしてもいいし、母体リストから自分専用の一覧を作ってもいい。母体のリストは三千弱になるが、元となったのは、以下のリスト。ブックガイドは多々あるが、「大学

    大学教師が新入生にすすめる100冊
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