ダーウィン生誕200年,『種の起源』刊行150周年とあって『現代思想』もダーウィン特集を出してくれた.『遺伝』『科学』『日経サイエンス』などの科学雑誌とひと味も二味も違う特集になっている.様々な視点からの寄稿が並び,なかには思い切り微妙な記事もあって,いかにも『現代思想』だ. 巻頭を飾るのは,1858年に自然淘汰説をリンネ協会で発表したとき読み上げられたダーウィンの論文,及びエーサ・グレイ教授宛の手紙の和訳だ.残念ながら同じ時に読まれたウォーレスの論文は載せられていない.ダーウィン特集だからやむを得ないと言うべきだろう.読まれた部分は大変短いものだが,「種の起源」の前半部分の概要であることがよくわかる. その後『解題』と称して訳者の新妻昭夫による背景の解説がある.ダーウィンに論文を送った結果共同発表になったという扱いに対するウォーレスの態度は,自然淘汰学説はあくまでダーウィンのものであると