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ブックマーク / honz.jp (38)

  • 2011-2024 この13年間における最高の一冊 - HONZ

    2011年7月15日にオープンしたノンフィクション書評サイトHONZ。日2024年7月15日をもちまして13年間のサイト運営に終止符を打つこととなりました。 2011年の東日大震災から、記憶に新しいコロナ禍まで。はたまたFacebookの時代からChatGPTの到来まで。その間に紹介してきた記事の総数は6105。 発売3ヶ月以内の新刊ノンフィクションという条件のもと、数々のおすすめを紹介する中で、様々な出会いに恵まれました。信じられないような登場人物たち、それを軽やかなエンターテイメントのように伝える著者の方たち、その裏側で悪戦苦闘を繰り広げていたであろう版元や翻訳者の皆さま。さらに読者へ届ける取次会社や書店員の皆さま、そしてHONZを愛してくださったすべての皆さま、当にありがとうございました。 サイトを閉じることになった理由に、明快なものは特にありません。こんなサイトがあったら

    2011-2024 この13年間における最高の一冊 - HONZ
  • 『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』著者、小林照幸にあの頃のこと訊く - HONZ

    死の貝:日住血吸虫症との闘い (新潮文庫 こ 28-2) 作者: 小林 照幸 出版社: 新潮社; 文庫版 発売日: 2024/4/24 小林照幸『死の貝 日住血吸虫症との闘い 』(新潮文庫)が注目されている。4月24日に上梓されて以来、現在4刷、累計2万6千冊のスマッシュヒットだ。26年前の1998年に出版されたが、なぜいまこんなに注目を浴びているのか。以前より小林照幸のを”激推し”してきた東えりかと、医学者・仲野徹が話を聞いた 仲野 『死の貝』は昔読んだ記憶があったけれど、文庫化されたのも20年以上時間が経ってからだし、こんなに注目されることってある?と不思議になりました。どうして突然文庫化されたんですか? 小林 それは新潮社さんからご説明頂きましょうか。 編集部 もともと新潮社の営業部と未来屋書店で、月に一回、情報交換の定例会議をしています。そのなかで女性書店員さんが「そういえ

    『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』著者、小林照幸にあの頃のこと訊く - HONZ
  • 『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』書けなくなった批評家を救ったもの - HONZ

    ひさしぶりに会った知人の変貌ぶりにショックを受けることがある。書を書店で見かけた時の驚きもそれに近い。表紙の男性と著者名が一瞬つながらず、人だと気づいて衝撃を受けた。別人のように痩せている。それも何か大病を患ったことをうかがわせるような痩せ方ではないか。 90年代からゼロ年代を通じた福田和也の活躍ぶりは、まさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」という言葉がぴったりだった。「月300枚書く」と人が言っていたように、文芸評論や時事評論、エッセイ、コラムを書きまくり、ワイドショーのレギュラーコメンテーターを務め、文芸誌『en-taxi』を編集し、母校である慶應大学の教壇にも立った。当時、夜の街でもしばしば著者を見かけた。バリバリ仕事をしつつ遊びもこなす姿が眩しかった。 著者を知ったのは学生時代のことだ。江藤淳に才能を見出されたというふれこみで、雑誌『諸君!』でいきなり連載が始まった。破格の扱いだった。

    『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』書けなくなった批評家を救ったもの - HONZ
  • 『津久井やまゆり園「優生テロ事件」、その深層とその後』異常な犯罪者は異常な社会から生まれる - HONZ

    読むのにとても時間がかかったのは、著者が巨大な問いと格闘しているからかもしれない。戦後最悪ともされる凶悪事件を通して、私たちの社会の奥底で起きている変化をとらえた力作だ。 書は、神奈川県相模原市の障害者施設、津久井やまゆり園で、入所者と職員45名が殺傷された事件の深層に迫ったノンフィクションである。事件そのものを取材したは他にもあるが、書が類書と一線を画すのは、サブタイトルにある「戦争と福祉と優生思想」という視点だ。一見バラバラな3つの言葉は実は深いところでつながっている。それだけではない。著者の人生もまたこの事件と無関係ではなかった。 ノンフィクションのディープな読者は著者の名前に見覚えがあるかもしれない。著者には浅草で起きた短大生殺人事件に関する著作(『自閉症裁判 レッサーパンダ男の罪と罰』)がある。2001年、浅草で19歳の女性が見ず知らずの男に刺し殺されたこの事件は、男がレッ

    『津久井やまゆり園「優生テロ事件」、その深層とその後』異常な犯罪者は異常な社会から生まれる - HONZ
  • 『政治学者、PTA会長になる』これぞ街場の民主主義!政治学者が世間の現実と向き合った1000日の記録 - HONZ

    「その悩み、○○学ではすでに解決しています」みたいなタイトルのを見かけることがある。あなたが日々の仕事で直面する悩みや課題は、すでに最新の学説や理論で解決済みですよ、というわけだ。 だが当にそうだろうか。最新の学説や理論を応用すれば、世の中の問題はたちどころに解決するものだろうか。 著者は政治学を専門とする大学教授である。「話すも涙、聞くも大笑いの人生の諸々の事情」があって、47歳にして人の親となった。小学校のママ友やパパ友のほとんどは干支一回り以上年下だ。そんなママ友からある日「相談があります」と呼び出され、いきなりこんなお願いをされた。 「来年、PTA会長になってくれませんか?」 まさに青天の霹靂だ。驚いた著者は必死に出来ない理由を並べ立てる。「フルタイム・ワーカー」だから無理!「理屈っぽくて、短気で、いたずらにデカいジジイ」だから無理!ところがママ友は決してあきらめず、最後は情に

    『政治学者、PTA会長になる』これぞ街場の民主主義!政治学者が世間の現実と向き合った1000日の記録 - HONZ
  • 『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ

    具体的な数字やデータを示してもダメ。明晰な論理で説いてもムダ。そんなとき、あなたはきっとこう思ってしまうのではないか。「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」。 実際問題、日々の生活でそんな思いを抱いてしまう場面は少なくないだろう。失敗例がすでにいくつもあるのに、それでもまだ無理筋を通そうとする社内のプレゼンター。子育てのあり方をめぐって、何を言っても聞く耳を持ってくれないパートナーなど。また不思議なことに、たとえ高学歴の人であっても、「事実に説得されない」という点ではどうやらほかの人と変わらないようだ。 さて書は、冒頭の問いを切り口としながら、人が他人に対して及ぼす「影響力」について考えようとするものである。心理学と神経科学の知見を織り交ぜつつ、著者は早々に厳しい診断を下す。 多くの人が「こうすれば他人の考えや行動を変えることができる」と信じている方法が、実は間違っていた…。 数字や統

    『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ
  • 『民主主義の死に方 二極化する政治が招く独裁への道』 民主主義が民主主義を殺す - HONZ

    世界各地の独裁政治を研究してきたハーバード大学教授である著者が、民主主義がどのように、そしてなぜ死ぬのかを追求する。著者はあらゆる場所、時代の民主主義が死んでしまった事例を紹介しながら、当たり前に享受している民主主義がいかに微妙なバランスのうえで成り立っているものなのかを教えてくれる。幅広いケースを考慮する書だが、議論のフォーカスはアメリカおよびトランプ現象に当てられいるので、日々伝えられるアメリカ政治の異常事態の意味がより良く理解できるようになるはずだ。米連邦最高裁判所判事にカバナーが選ばれたことがどれほどの意味を持つ事件なのかを思い知る。 民主主義が崩壊する瞬間といえば、銃を持った兵士や市民をなぎ倒そうとする戦車を思い浮かべるかもしれない。たしかに、アルゼンチン、ブラジル、ガーナやパキスタンのような冷戦時の民主主義崩壊の4分の3は、軍事力を用いたクーデターによってもたらされた。しかし

    『民主主義の死に方 二極化する政治が招く独裁への道』 民主主義が民主主義を殺す - HONZ
  • 『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』 - HONZ

    書は、イギリスのシンクタンク「デモス」のディレクター、ジェイミー・バートレットの最新作The People Vs Tech: How the internet is killing democracy (and how we save it)を全訳したものである。原題を直訳すれば、『「国民」対「テクノロジー」:インターネットはどうやって民主主義の息の根をとめるのか(そして、いかにして民主主義を救い出すのか)』となる。原書は2018年4月19日、ペンギン・ランダムハウス系列の出版社で、ノンフィクションを得意とするイーバリー・プレスから刊行された。 著者のジェイミー・バートレットは「デモス」でソーシャルメディア分析センターのディレクターとして働くかたわら、ジャーナリストとしても活動を行い、「スペクテイター」誌のネットニュースに寄稿したり、BBCなどに出演したりしている。邦訳は書が二冊目で、

    『操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』 - HONZ
  • 『大英帝国の歴史』イギリスの人気歴史家、ニーアル・ファーガソンの出世作がついに翻訳! - HONZ

    『憎悪の世紀』『マネーの進化史』『文明』などで有名なイギリスの歴史家、ニーアル・ファーガソンの新刊である。最も書は国イギリスで2003年に出版されていた作品だ。連動して制作されたテレビ・ドキュメンタリー『EMPIRE: How Britain Made the Modern World』ではニーアル・ファーガソン自身が番組の案内役として出演し英語圏各国で多くの視聴者を得た。まさに、ニーアル・ファーガソンの出世作といっていい作品なのである。 そのテーマも壮大で、400年に及んだイギリス帝国の発端から終焉までを政治、軍事、経済、宗教と縦横無尽に駆け巡り論じ、ミクロとマクロの視点を交互にしながら、なぜイギリスが大帝国を築くことができたのか、そして、イギリスが作り上げた帝国は歴史上どんな意義があったのかと、問いかけていく。 特に2点目の帝国の意義という問いかけは大変に難しいものであろう。現代社

    『大英帝国の歴史』イギリスの人気歴史家、ニーアル・ファーガソンの出世作がついに翻訳! - HONZ
  • 『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』完全燃焼を目指した男がぶつかった官僚組織という壁 - HONZ

    著者、伊藤祐靖は自衛隊初の特殊部隊である海上自衛隊の「特別警備隊」の創設に携わり、部隊創設後は先任小隊長として技術の向上に努めた人物である。書は日初の特殊部隊を創設した男の半生を綴った自伝であり、自衛隊という国防の最前線のリアルを描いたノンフィクションでもある。 そもそも日は旧帝国陸海軍の時代から特殊部隊という特殊戦の専門部隊というものを持ったことがない。そんな日がなぜ特殊部隊を創設する事になったのか。しかも、白兵戦を旨とする陸上自衛隊よりも先に海上自衛隊で。実はその発端となる事件の現場に伊藤祐靖自身がいたのである。 その事件とは1999年3月23日に発生した能登半島沖不審船事件である。イージス艦「みょうこう」は富山湾において「特定電波を発信した不審船の捜索」を命じられる。湾の中にいる何百隻という漁船の中から、北朝鮮の特定電波を発信した工作船を見つけるのである。不可能なように思われ

    『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』完全燃焼を目指した男がぶつかった官僚組織という壁 - HONZ
  • 名著『大旅行記』の5巻を読んでみた! - HONZ

    14世紀、21歳のイブン・バットゥータは、巡礼とイスラーム法の研究のため、現在のモロッコを旅立ち、30年間におよび、北アフリカ、中東、インド、中国を巡る。その旅は『大旅行記』(東洋文庫)全8巻となっているが、道中に滞在したインドの王様との8年間を後に語り、まとめられたのがこの5巻だ。稀代の旅人と「インドの織田信長」が織りなす、展開が予想の斜め上どころか別次元へ連れて行ってくれるインド宮廷絵巻。これがまあおもしろいのなんの。 このの正式名称は『諸都市の新奇さと旅の驚異に関する観察者たちへの贈り物』だ。『イブン・バットゥータのメッカ巡礼記』ないしは『三大陸周遊記』とも呼ばれ、その名の通り、史上最も偉大な旅行家とも言われるバットゥータ(1304~1368)が、メッカを目指して北アフリカの海岸沿いの陸路を行き、メッカに到着した後も旅をつづけ、現在のイランやイラク、アラビア半島などを経てインド、そ

    名著『大旅行記』の5巻を読んでみた! - HONZ
  • 武士は戦さでポニーを駆る 『武士の日本史』 - HONZ

    侍ブルーと一銭五厘。書にあった言葉で私の印象に残ったのは、この二つだった。「サムライブルー」はサッカー日本代表のこと。「一銭五厘」は召集令状の葉書代のことで、兵隊の代わりなど葉書一枚で済むという意味がこめられている。書名にあるとおり、書はわが国の武士歴史をまとめるとともに、「武士道」などの精神史もたどっているだ。 書を読んだ直後にサッカーW杯を観ていたら、選手の口から「日人のメンタリティ」という言葉が出た。そのとき「おやっ」と思った。それは“強い相手に屈しない強靭な精神”を表現した発言だったが、その“メンタリティ”が日人固有のものなのか、私は違和感を覚えたのである。第2次世界大戦の当時によせて、このには、次のような指摘がある。 当時、物質文明は欧米の方が優れているかもしれないが、精神文明では日が優れている、だから日が勝つ、という主張がなされた。物質文明、つまり生産力や科

    武士は戦さでポニーを駆る 『武士の日本史』 - HONZ
  • 『政治の衰退 上 フランス革命から民主主義の未来へ』 民主主義は政府運営を非効率にするのか? - HONZ

    著者フランシス・フクヤマは『政治の起源』で、人類誕生以前からフランス革命までの歴史を振り返りながら、「国家」、「法の支配」、「政府の民主的説明責任」という3つの重要な政治制度がどのように生み出されたのかを巧みに説明した。この『政治の衰退』は『政治の起源』の姉妹編であり、フランス革命以降の過去2世紀の間にこの3つの制度がどのように相互作用しながら発展してきたかを論じていく。そして最後には、先進民主主義国でこれら3つに衰退の兆候が見受けられることが示される。ポピュリズム、排外主義や核の脅威など、政治の不安定がいや増す現代社会の未来を見通すために必読の一冊だ。 なぜ西洋が大きく発展し他の地域を大きくリードしているのか、という問いは18世紀以降の経済学者の最大の関心事項の1つである。アリストテレスからルソーまで、地理と気候が政治制度に大きな影響を与えたと論じてきた。ところが、植民地帝国が解体され発

    『政治の衰退 上 フランス革命から民主主義の未来へ』 民主主義は政府運営を非効率にするのか? - HONZ
  • 『ゲッベルスと私 ナチ宣伝相秘書の独白』 - HONZ

    作者:ブルンヒルデ・ポムゼル、トーレ・ハンゼン 翻訳:森内 薫、赤坂 桃子 出版社:紀伊國屋書店 発売日:2018-06-21 ヒトラーの時代を考える ヒトラーと、その右腕ゲッベルス宣伝相が作り出した大衆的熱狂の先には、戦争と破壊、そして未曾有の大量殺戮が待ち受けていた。偏狭な自民族中心主義と極端な反ユダヤ主義、人種差別主義(レイシズム)が第二次世界大戦と結びついて、ヨーロッパを「暗黒の大陸」へと変えたのだ。戦後、世界は解放された各地の強制収容所に累々と積み上げられた犠牲者の屍に絶句し、「二度と繰り返してはならない」と誓ったのである。 それから73年が経過した今、ドイツ、オーストリアを始め世界各地でポピュリズム、排外主義の動きが不穏な高まりを見せている。人権と民主主義を軽んじる政治的指導者が名乗りをあげるなか、あらためてヒトラーの時代を考えることには大きな意味があるだろう。ヒトラーは大衆民

    『ゲッベルスと私 ナチ宣伝相秘書の独白』 - HONZ
  • 目からうろこの対談本『明治維新とは何だったのか』 - HONZ

    歴史というものは、常に勝者が作ってきたものである。勝てば官軍負ければ賊軍という言葉にある通り、戦いに勝った側が自身の正当性を主張するために、負けた側を貶めることがよくある。現在、日で教えられている歴史も例外ではないのだろう。一般的には討幕を成し遂げ、明治政府を作り上げた薩長側から見た歴史(薩長史観)が学校では教えられている。 私もそのような歴史を習い、いままで何の疑問も持たずにそれを受け入れてきた。しかし歴史というものはもっと多角的な見方をしなくてはいけないものらしい。なぜなら見る側の視点によって、見えてくる世界が全く違ったものになるからだ。 少し話が脱線するが、「羅生門」という言葉がある。黒澤明の『羅生門』からきた言葉で、証言者によって意見がい違う状況をいうそうだ。どうやら日だけでなく世界で通じる言葉らしい。歴史というものもまさにその「羅生門」なんじゃないかとこのを読んでいて思っ

    目からうろこの対談本『明治維新とは何だったのか』 - HONZ
  • 遺伝子の差はどれだけの不平等を産んでいるのか『ゲノムで社会の謎を解く――教育・所得格差から人種問題、国家の盛衰まで』 - HONZ

    遺伝子の差はどれだけの不平等を産んでいるのか『ゲノムで社会の謎を解く――教育・所得格差から人種問題、国家の盛衰まで』 双子研究を筆頭に、遺伝子が我々の身体的特徴だけではなくIQや統合失調症などの病気といった数々の要因に深く関連していることがわかってきている。が、そうであるならば遺伝子についての知見を深めることによって政策レベルで活かす──介入したほうがいい人間には介入し、そうでない人間には介入しない──というような形の、オーダーメイド政策はありえるのか。 たとえば、受け継がれた遺伝子的な差異こそが社会的不平等の第一の駆動力なのだろうか。現在の機会均等は主に”勉強ができること”によってもたらされているが、そもそもその能力に生来から違いがあるのだとしたらそれはどれ程の不平等につながっているのか。もしそれが明らかになれば、より適切な平等へ向けて歩み出すことができるかもしれない。これは見方によって

    遺伝子の差はどれだけの不平等を産んでいるのか『ゲノムで社会の謎を解く――教育・所得格差から人種問題、国家の盛衰まで』 - HONZ
  • 社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ

    『チャヴ』、聞き慣れない言葉である。もとはロマ族の「子供」を指す言葉「チャヴィ」から来た、英国において用いられる「粗野な下流階級」を指す蔑称である。いくつかの英語辞典を調べてみると、「生意気で粗野な態度によって類型化される若年下流階級(オクスフォード英語辞典)」、「教養の欠如や下流階級であることを、その衣服や話し方、行動があらわすような人を示す蔑称。通常は若者を指す。(ケンブリッジ英語辞典)」、「たとえ高価であっても、その趣味が低俗であるとされる若い労働者階級(コービルド英語辞典)」などとある。 さんざんな物言いである。しかし、これらの定義を全部あわせても、チャヴという言葉を正しく理解するには足りないようだ。そこには「公営住宅に住んで暴力的」、「中流階級の謙虚さや上品さがなく、悪趣味で品のないことにばかり金を使う浪費家」、さらには、「暴力、怠惰、十代での妊娠、人種差別、アルコール依存」とい

    社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ
  • 『性表現規制の文化史』えっちがいけないことなのは何故か - HONZ

    書、表紙が素敵なのだ。 裸の成人女性からうまい具合に乳首を隠したイラスト、線画の描写ゆえ生々しさはなく90年代に流行ったオシャレ系マンガの表紙のようである。 とは言えハダカはハダカ、サラリーマンばかりの通勤電車で読むのは平気だった私もさすがに目の前に小学生男子が立っている中では書の続きを読むのをためらった。 こんな風に感じるのは何も私だけではないだろう。そもそもたとえ乳首が隠されていたとしても裸の成人女性が描かれた表紙を人前で出すこと自体やりたくないという人も多いはずだ。(うん、屋さんでカバーかけて貰えるのってとっても大事かも)。 この「通勤電車ならいいや」と「でも小学生男子には刺激が…」の線引きをしている私の気持ちは一体どこから生じているのだろうか。 えっちなのは、いけません! 我々(少なくとも私は)はそう刷り込まれている。だから、公共の場でえっちなイラストの表紙のを出すのがため

    『性表現規制の文化史』えっちがいけないことなのは何故か - HONZ
  • 『最後の資本主義』資本主義を脅かしているのは、信用の弱体化である - HONZ

    作者:ロバート・B. ライシュ 翻訳:雨宮 寛 出版社:東洋経済新報社 発売日:2016-12-02 去る12月2日に日財団で行われた「Bコーポレーションを知る会」に出席してきた。Bコーポレーションという言葉は聞き慣れないかも知れないが、アメリカの非営利団体B Labが運営する、社会的責任や持続可能性などを評価する認証制度で、「TransFair」がフェアトレード・コーヒーを認証するのと同じように、アカウンタビリティや透明性などB Labの掲げる基準を満たした企業に対して与えられる民間認証である。 「B」は「Benefit」(ベネフィット=利益)のことであり、環境、コミュニティ、従業員などの様々なステークホルダーの利益を意味している。アウトドア用品のパタゴニアを始め、現在までに世界50カ国で、約2千社が取得している。日にはまだBコーポレーションのような認証制度は見られないが、日でもB

    『最後の資本主義』資本主義を脅かしているのは、信用の弱体化である - HONZ
  • 『非モテの品格 男にとって弱さとは何か』ルサンチマンを超えた先にあるもの - HONZ

    タイトルを見て思わず手に取った。面白そうだと思ったのではない。憤慨したのだ。 はっきり言って私はモテない。メディアに出れば、ネットの掲示板には「ブス」という心無い言葉が流れる。だから、モテないことには一家言もっている。 だが、このタイトルには全く同調できなかった。 男はたとえ生まれ持った容姿に恵まれなくとも、筋肉をつけ、身なりに気を使い、学歴や財力、権力、そして小粋なトークでもできれば、間違いなくモテるようになれるだろう。これら全ては後天的な努力で手にすることができるものばかりだ。努力が足りないだけなのに「弱さ」とは一体何事かと憤りながらページをめくった私は、後頭部を殴られるような衝撃を受けた。 「ふと、自殺した友人や知人たちの顔を、今でも思い出すことがある。」という書き出しから始まる冒頭には、社会の期待するマッチョな男性像に絡め取られ、声を上げることもできないまま死を選んでしまう男性たち

    『非モテの品格 男にとって弱さとは何か』ルサンチマンを超えた先にあるもの - HONZ