先月15日に亡くなった樹木希林さん(享年75)に関して、雑誌の編集者から取材があった。それはこんな趣旨だった。 生前、樹木さんは香典の袋の中身を誰であっても、3000円に決めていたという。樹木さんからすれば、世間体を気にして、いちいち香典の中身に苦心するのはバカバカしい。だったら一律3000円にすればいいじゃないか、という意図らしい。編集者は、その金額についての妥当性を、私に尋ねてきたのだ。 私はこのように答えた。そもそも香典に、決まった値段などない。「香典(奠)」という言葉は、本来は霊前にお香を手向けるかわりとして、金銭をお供えすることに由来する。したがって、お香の代金を基準にするならば、(香にもピンキリがあるが)、さほどは高額にはならないはずである。 同時に、葬式における香典の意味は、相互扶助の意味合いが強い。葬式となれば、喪家が多額の出費を強いられる。そのため、地域や親族間で少しずつ