先日、「空中権」という聞き慣れない言葉がニュースで流れたことがあった。これは、先日完成した東京駅の復元改修工事にあたって、東京駅の駅舎敷地で未使用となっている容積率を、JR東日本がその周辺の新築ビルに売却し、復元工事にかかる費用およそ500億円をそれによってまかなうというものだ。これは東京都千代田区の一部が「大手町・丸の内・有楽町地区特例容積率適用地区」として指定されたことを受けたもので、東京駅の周辺ビルは、空中権を購入することによって本来の容積率以上の高層ビル化を実現できるようになった。 このような「空中権」すなわち容積率の取引は、経済学で言う「コースの定理」、すなわち本来市場では解決できないはずの経済活動の「外部性」を、排出権や空中権といった所有権を設定することで「内部化」し、市場取引によって解決しようという考え方に基づいている。経済活動と環境汚染物質の制限を両立させる排出権取引の制度