(英エコノミスト誌 2010年3月6日号) 殺害や中絶、遺棄によって命を失った女児は少なくとも1億人に達する――そして、その数はさらに増え続けている。 読者の皆さんに想像してみてほしい。自分が、急成長する発展途上国で第1子の誕生を待ち望む若い夫婦の片割れだ、と。あなたは新中間層に属し、所得は増えており、小さな家族を望んでいる。しかし、夫婦を取り巻く伝統的な習俗がなお支配的で、女児よりも男児を優先する傾向は特に重大な意味を持つ。 家族が生計を立てていくうえで、この先も激しい肉体労働が必要かもしれない。その国では息子しか土地を相続できないかもしれない。もしかしたら、娘は結婚すると別の家族の一員になると見なされ、あなたは老後の世話をしてくれる子を望むかもしれない。そして娘には、嫁入りする際の持参金が要るかもしれない。 さて今度は、そうした状況で、超音波スキャンで検査したと想像してみてほしい。それ
米国は、つくづく育児と仕事の両立が難しい国だと感じる。特に都市部に住む働く母親たちは、保育園やベビーシッターの費用の高額さと、職場のワーキングマザーに対する理解のなさに疲れ果て、結局、仕事を辞めてしまうことが多い。 今年1月、大手シンクタンクCenter for American ProgressとNPOのCenter for WorkLife Lawが共同で、米国において家庭生活と仕事の両立がいかに困難かを調査した報告書を発表した。 およそ100ページの報告書には、全米の親の悲鳴が詰まっている。親だけではない。育児と仕事を両立させようとする自分の子供たちをサポートする祖父母の嘆きも加わっている。 まず、米国では有給の育児休暇が法律で制定されていない。そのため、多くの職場は無給の育児休暇しか認めていない。しかも上限3カ月というのが相場だ。職場復帰しても、長時間労働が求められ、拒否すれば昇進
もし韓俊(ハン・ジュン)氏の説が正しければ、中国では今後30年間で、ドイツ、フランス、英国、イタリア、韓国、南アフリカ共和国、スペイン、ポーランド、そしてカナダの人口を合計したのと同じ数の国民が農村部を離れて都市部に流れ込むことになる。 北京の国務院発展研究センターに籍を置く農村問題の専門家である韓氏は、中国では2040年までに農村部の人口が5億人減少し、わずか4億人になると予測している。 その場合、都市部の人口は10億人をあっさり突破し、中国の全人口に占める割合は現在の45%から70%前後に一気に高まるという。 このような驚くべき数字を見ると、中国国内で民族大移動が始まり、北京や上海、広州といった大都市の規模が3倍、あるいは4倍に膨らむ様子を想像してしまいそうだが、実際にはそうはならないだろう。結局のところ、中国は計画経済の国だからだ。 2025年までに人口2500万人の巨大都市が15も
丙午(ひのえうま)の年に出生率が低下することはよく知られている。ウィキペディアの丙午の項によると、「この年に生まれた女性は気が強い」「一般庶民の間では、この年生まれの女性は気性が激しく、夫を尻に敷き、夫の命を縮める(男を食い殺す)とされ」たとのことである。迷信ではあるが、迷信を信じている人が一定数いれば、迷信を信じていない親にも丙午の年の出産を避けるインセンティブが働く。最近では昭和41年つまり1966年が丙午であったが、その前後の年と比較して出生率が減った。 ここまでは別に不思議ではないのだが、丙午の年は、出生率が減っただけでなく、乳児死亡率が高かったのだ。私はこのことを基礎から学ぶ楽しい疫学という本で知ったのだが、この本には丙午の年に乳児死亡率が高い理由も同時に述べてあったので、考える暇がなかった。答えはこのエントリーの下の方に書いてあるので、クイズとして楽しみたい方は、途中までで読む
3年前の2006年、北海道夕張市が財政破綻したことは、皆さんの記憶に新しいことと思います。最近はマスコミで報道されることもほとんどなくなってしまいましたが、今、この町はどうなっているのでしょうか。 実は、人口は相変わらず着実に減少し続けています。 1960年には約10万人の人が住んでいたこの町ですが、2005年に1万3000人まで減っていました。そして、今年の初めには1万1740人。今年になっても毎月減少が続き、8月末の時点では1万1488人です。働く場所のない30代、40代を中心として流出が続いていると言われています。 では、将来、一体どこまで人口が減るのでしょうか? 以下の表は、国立社会保障・人口問題研究所が発表しているデータを基に私が作成した表です。夕張市の人口が2035年までどのように推移するかを示しています。人口は25年後の2035年には約5000人、そして、別の長期推計では20
カンボジアで印象深かったのは、子どもや若者が多いことだ。カンボジア林野庁長官に、「子どもが多いですね」と申し上げたところ、「わが国の人口の半数は20才以下なのです」という説明があった。人口構成がそこまで偏っているとは予想していなかった。帰国してWikipediaを調べてみたところ、右図の人口ピラミッドが転載されていた(原典:World Population Prospects: The 2004 Revision)。確かにすさまじい偏りだ。この偏りは、20年前まで続いたポルポト政権下での虐殺がいかにすさまじかったかを物語っている。 カンボジアの歴史 によれば、「1975年〜1979年のポル・ポト時代の4年間は、中国の毛沢東主義を奉じた極端な農本主義政策が採られたものの、非効率的なやり方は大旱魃をもたらし、出生率が異常に低下する一方、飢餓と虐殺で100万人を超えるともいわれる大量の死者を出し
<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。 この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。 ●伝統的宗教の衰退と近代化の進行 トッドは「文明の接近」で、「本書の最も根底的な命題は、イスラムは、キリスト教と同様に、俗世間の非宗教化と信仰の消滅にまで行き着くことがありうる、というもの」であると言う。 世界の主要な既成宗教のうち、現在最も信者が増えているのは、イスラムである。それは、キリスト教諸国の多くで人口減少と脱宗教化が進んでいると対照的である。イスラム諸国の多くでは人口が増加するとともに、伝統的信仰への回帰が目立つ。それゆえ、トッドの先の命題は、大胆な予想である。 その予想は、近代化の過程についての人口学的研究に基づく。トッドは、「文明の接近」において、識字化と出生調節という二つの指標が、脱宗教化と深く関係していることを、西欧諸国をはじめ、ロシア、日本、シナ等の近代化
隙間の時間を利用して馬寅初(特に『新人口論』)関係の先行研究を収集してきたが、T中H臣さんがおっしゃっておられた通り、本当に少ない。 僕が調べたかぎりでは、今のところ、『新人口論』関係で日本語文献が4つ(含『現代のエスプリ』)と英語文献が1つだけ。中国語論文のデータベースを検索しても*1、真正面からとりあげた論文は一桁にとどまる。本国ですら先行研究はこの程度である。リカードウやマルサスの経済理論をある程度頭に入れておかないと読めないので、誰もが簡単に手出しできるテーマではないにしても、こんなに著名な有名な経済学者がこれほどまで研究されていないのは驚きだ。英語とフランス語、英語とドイツ語ができる経済学史研究者はたくさんいた(いる)のに、英語と中国語ができる経済学史研究者はいなかったのだろうか? 僕の中国語力はまったく回復していない(回復しても大したレベルでない)ので、馬寅初研究と言っても到達
南アフリカのAIDS事情とAIDS否定論者の動向を継続的に取り上げている「忘却からの帰還」のKumicitさんが、 今日のエントリで南アフリカのAIDS状況のプレゼンを取り上げていた。 via 忘却からの帰還: 短寿命化する南アフリカで Pandemics Activity 3 Strategy 2 AIDS Africa Ppt Presentation アフリカのサハラ以南のAIDS事情はもう酷いの一言に尽きるんだが、 どれくらい酷いのかを一目で理解できる良いグラフがこのスライド資料にあったので、 関連記事のまとめも兼ねてうちでも紹介してみる。 まず一枚目。 アフリカサハラ以南の国家の平均寿命の推移。 グラフを見れば一目瞭然だが、アフリカ南部の複数の国家で現在AIDSの為に猛烈な勢いで平均寿命が下がっている。 原因は子供や若い世代でAIDSを発症し死亡する人間が増えているため。 ここ2
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く