2012年6月8日、ボランティアツアーのマンガ家・デザイナー・ライター・編集者を乗せたマイクロバスは、国道283号を釜石へ向け東進していた。 遠野側から釜石へ抜けるには、仙人峠という古来よりの難所を越えなければならない。この地名の由来は、文字通り仙人が住むような場所であったからとも、千人の金堀人夫が生き埋めになった故事が転じて、ともいわれ、いずれにしても大変な山越えであったことがわかる。 柳田國男『遠野物語』四九にいわく 仙人峠は登り十五里降り十五里あり。其中程に仙人の像を祭りたる堂あり。此堂の壁には旅人がこの山中にて遭ひたる不思議の出来事を書き識すこと昔よりの習なり。例へば、我は越後の者なるが、何月何日の夜、この山路にて若き女の髪を垂れたるに逢へり。こちらを見てにこりと笑ひたりと云ふ類なり。 などと、山の怪異も伝えられている場所だ。 283号線の旧道もまた蛇行の多い山道であったが、現在は