個人情報保護法案をめぐる論争においては、プライバシーという言葉が曖昧に使われ、議論を混乱させている。今回の法案はデータベースを規制するものであって、メディア規制ではない。ネットワーク社会では、情報の自由な流通による便益とその乱用による費用のバランスに配慮することが重要であり、一方を絶対化すべきではない。本人に個人データの差し止め権を認める今回の法案は、表現の自由を侵害するおそれが強い一方、それが迷惑行為を防止する効果は疑わしい。こうした問題を効率的に防ぐには、個人データ利用者から「迷惑料」を取って市場メカニズムを活用するしくみも考えられる。