「普通の人が踏み込めない領域にするために、あえて複雑で面妖な説明がされているんですね。世に言う『原子力ムラ』とは、そういう世界なんです」と語る青木美希氏 日本には、議論が常に二極化してしまうイシューがいくつか存在する。賛成と反対を叫ぶ声の激しさがサイレントマジョリティを慄(おのの)かせ、問題の本質から遠ざけてしまう。原子力発電の是非は、その最たるものだろう。 原発について考えること、ましてやそれについて語ることは難しい――そんな思い込みに「難しいと思い込まされているだけ」と異を唱える人がいる。『なぜ日本は原発を止められないのか?』を上梓(じょうし)した青木美希さんはこう語る。 * * * 青木 これは1995年に福井県敦賀(つるが)市の高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故が起きた際に、報道対応担当をしていた友人から聞いた話です。 友人は原子炉製造に携わるメーカーに勤めていて、文部