今月中旬、南陽(愛知)の外野手村井渉君(2年)がチームメートとキャッチボールをしていた。雨上がりのグラウンドの片隅で、高い飛球を捕り、投げ返す。 利き腕の右手でボールを捕ると、すぐにグラブごと左腕に挟み込む。右手で球を取り出し投げ返す。その時間は1秒にも満たない。左手を使わないのは、生まれつき親指以外の指がないからだ。本人がグラブの「入れ替え」と呼ぶ、独特の返球方法は「自然に身についた」という。 小学4年から野球を始めた。両親からは「サッカーにすれば」と言われたが、キャッチボールが楽しく、他のスポーツは考えなかった。 ◇ ただ、いくら返球が早くてもロスはある。左打者で、バットには左手を添えるだけ。使うのはほぼ右手1本で、力強い打球を打つのは難しい。中学まではレギュラーになれなかった。 それでも「自分には野球しかない」と迷わず野球部の門をたたいた。昨秋、部員不足のチーム事情も手伝い、レギュラ