タグ

ブックマーク / reki.hatenablog.com (111)

  • 西洋絵画に見るギリシア神話『トロイア戦争』の物語 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    知ってるようで知らないトロイア戦争の物語 「トロイアの木馬」は歴史に詳しくない人でも知っているくらい非常に有名なお話です。コンピューターウイルスの名前になっているくらいなので、一般的にもなじみ深いです。 しかしその他のエピソードはあまり馴染みがないのではないでしょうか。 古代ギリシア文化を基礎に発展したヨーロッパではトロイア戦争は非常によく知られており、西洋絵画でもたびたびモチーフにされます。 今回はトロイア戦争がモチーフの絵画をピックアップし、著名なストーリーをまとめていきます。 1. 不和の林檎 「不和の林檎」 はトロイア戦争がそもそも発生する原因になったとされる事件です。 ある時、大地を司る女神ガイアがゼウスに対し、人間たちが神を敬う心が薄れている、人口が増えすぎて重い、と不平を言った。ゼウスはこれを聞き入れ、戦争を起こして人口を減らそうと考え、一つ企みをする。海の女神テティスと人間

    西洋絵画に見るギリシア神話『トロイア戦争』の物語 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • アメリカ風中華料理「チャプスイ」の歴史 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    Photo by Eli Hodapp アメリカ人が考える「中華」を代表する料理 「チャプスイ」をべたことはあるでしょうか。 チャプスイは主にアメリカべられる中華料理で、青菜や根菜、肉を炒めた後に醤油ベースのスープを入れてとろみをつけ、ご飯や麺にかけたりしてべます。 格的なアジア料理が流行っているアメリカでは、チャプスイはもはや珍しい古典的な料理となっていますが、かつてアメリカ人が中国料理中国人、ひいてはアジア系とアジアのカルチャーを受け入れる上で非常に重要な役割を果たした料理であります。 1. チャプスイとはなにか チャプスイには決まった具材やべ方はありません。 野菜はチンゲン菜やもやし、たまねぎ、にんじん、シイタケなどなんでもいいし、肉も鶏肉でも豚肉でも魚でも問題ありません。かけるのも白米でも麺でも問題ないし、もちろんそのままべてもOKです。「あんかけのあんの部分だけ」

    アメリカ風中華料理「チャプスイ」の歴史 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 一代で崩壊した帝国・王国 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    創業者の代で崩壊してしまった短命の帝国・王国 いかに短命な王朝・王国であっても、皇帝・国王の代は数代続くのが普通です。大抵は二代目以降に混乱が生じてきます。後継者問題、前王朝・王国の末裔の抵抗、地方有力者の反乱、外国の侵略、自然災害など。 多くの場合、創業者は前王朝・王国の混乱を収束させ治安と安定を回復し、国を開きます。信望があったからこそ支配者となれたわけです。 それだけに、創業者が亡くなるとその王朝・王国も滅びてしまうということは、よほどその人物に問題があったか、かなり無理な状態で国を建設したか、外国の侵略や自然災害など想定外の出来事が起こったか。 いずれにしても異常事態と思われるわけです。 今回は一代で崩壊してしまった帝国・王国をピックアップしていきます。 なお、満州帝国などの傀儡国家は除外して純粋な民族国家のみで選んでいます。 1. エジプト第28王朝 謎に包まれたエジプト人の王

    一代で崩壊した帝国・王国 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 【2020年9月版】世界史関連の新刊50冊 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    2020年6月〜2020年9月の世界史関連の新刊の紹介 新型コロナウイルスの影響で各社延期していたのが一気に出たのか偶然かは分かりませんが、今期は世界史関連のが多かったです。いつもは30冊の紹介ですが、今回は50冊紹介いたします。 この記事ですが、ブックマークしてメモ代わりに使ってもらえるといいと思います。ぼくも大型屋に行ったときは、この記事を見ながら探しをしています。 それでは参ります。 1. 『岩波新書〈シリーズ 中国歴史〉 5 「中国」の形成 現代への展望』 岡隆司 著 岩波新書 2020/7/17 「中国」の形成 現代への展望 (シリーズ 中国歴史) 作者:岡 隆司 発売日: 2020/07/18 メディア: 新書 さまざまな勢力が併存、角逐する一七世紀。そのカオスを収拾し、東アジアに君臨した清朝の「盛世」から、多元共存システムがほころびをみせる一八世紀。西洋の衝撃、

    【2020年9月版】世界史関連の新刊50冊 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 消火器の歴史 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    これまで数多くの人命を救ってきた消火器の発展の歩み 消火器は1723年にイギリスで発明されました。 19世紀に近代的な消火器が誕生して使い勝手が向上し、20世紀になり性能が向上し普及が進んでいきました。消火器の歴史は、効率と消火能力をさらに高めるために、設計にさまざまな変更を重ねてきた技術改良の歩みです。 1. 火事の種類と用途 一口に消火器と言っても、用途によって様々な種類があるのをご存じでしょうか。 消火器でも買ってみよっかな、的な、筋トレグッズを買うようなノリで買うものではなく、ちゃんと考えて買わないとダメなのであります。 消火器を購入する際は「火災種別」と「薬剤種別」の二つを鑑みて選ばなくてはなりません。火災種別とは何が燃えているかの種別で、薬剤種別とは消火剤の種類のこと。 火災はA~D級に分類されます。この種別によって使う消火器を使い分けます。 A級火災とは「木材、紙、繊維などが

    消火器の歴史 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • アジア・アフリカの10の「民族統一主義運動」 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    欧州の考えを輸入したアジア・アフリカ的民族統一主義の形 以前、ヨーロッパの民族統一主義運動についてまとめました。 過去に自民族が保有していた・または勝ち取っていた領土の回復、自民族のルーツであるが今は他国にある土地の回復、他国に住む自民族の土地の政治的統合、自らの民族に近い言語を話す民族の土地の政治的統合、といったものを目指す国粋主義的な考え方です。 今は多くの地域で人気を失っていますが、第二次世界大戦前後は大きな影響力を持った考えで、民族主義・国粋主義・排外主義がの加速が悲劇的な戦争をもたらしてきました。 民族統一主義はヨーロッパだけでなく、アジア・アフリカにも見られます。特にアジア・アフリカでは第二次世界大戦以降の独立後に、民族主義・愛国主義を鼓舞するために利用されました。 1. 大シリア Image by Roxanna 「自然シリア」の構築を目指す運動 大シリアという言葉は非常にあ

    アジア・アフリカの10の「民族統一主義運動」 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 第二次世界大戦時の「敵性民間人」強制収容 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    Photo credit: Central Archive of the Republic of Karelia 世界中にあった民間人強制収容 第二次世界大戦中の強制収容所と言えば、ナチス・ドイツによるユダヤ人強制収容所がよく知られています。 ナチス・ドイツはユダヤ系住民を国内から追放しマダガスカルに移住させようと試みますが失敗に終わったため、強制収容所に送り込んだ上で根絶させる政策を実行しました。 このような特定の人種集団の絶滅を図るのは悪辣極まりなく、いくら糾弾してもし足りないほどです。 一方で、枢軸国のみならず連合側の国にも強制収容所はあり、自国内の「敵性国民」が敵国と通じて攪乱や暴動、スパイ活動を行うことを防ぐため、有無を言わさず強制的に送り込まれるケースが多くありました。 1. 日系アメリカ人強制収容 社会の根強い人種差別が反映された政策 アメリカにおける日系人・日人移民に対す

    第二次世界大戦時の「敵性民間人」強制収容 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 【中国史】戦闘力が異常に高かった宦官列伝 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    中国史にその名を遺す武闘派宦官たち 宦官と言えば、宮廷に侍り皇帝や宮家一門の生活の世話をしたり、宮廷の各種運営をするのが仕事でしたが、中には武力を買われて仕える者もいました。 生殖能力は奪われているので女性のように華奢な体というイメージが強いですが、筋骨隆々なガチムチ宦官もいたようです。 今回は非常に名の知れた武闘派宦官をピックアップいたします。 1. 張蚝(ちょう こう) 張蚝は五胡十六国の前秦に仕えた宦官・武将。若いころから身体能力に優れ、牛と綱引きして勝つほどのパワーと、どんな高い城壁も難なく乗り越えられるほどの敏捷性を兼ね備えていたそうです。なんかバキに出てくるキャラみたいです。 北魏の歴史家である崔鴻(さい こう)は、前秦の猛将・鄧羌(とう きゅう)と共に「万人の敵(万人敌)」と評しました。 張蚝はもともと弓という姓でしたが、并州の軍閥の頭目・張平に気に入られ養子となり、張姓を授

    【中国史】戦闘力が異常に高かった宦官列伝 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 【腐敗・汚職】中国史の悪名高い宦官列伝 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    中国史を裏で動かしてきた宦官 宦官とはご存じの通り、宮廷に仕える去勢をした男性のことです。 皇帝の身辺に侍り様々な世話をする役割を与えられ、通常は掃除や料理や連絡など雑用が主でしたが、皇帝の近辺にいることを許される立場を利用し、強大な実権を握る人物も少なくありませんでした。皇帝や帝国のために尽くした名宦官もいる一方で、自らの私腹を肥やし権勢を高め帝国の没落をもたらした悪徳宦官も数多くいます。今回は後者の悪徳宦官をピックアップします。 1. 秦の趙高(ちょう こう) 戦国七国を統一した始皇帝の秦王国を崩壊に導いた要因の一つは、宦官の趙高にあるとされています。 趙高がどのように始皇帝に仕えたかは定かではなく、子の胡亥の守役となった後、始皇帝の信頼を得て身辺に侍るようになりました。 始皇帝は死ぬ直前に聡明な長男の扶蘇を後継者に指定しました。しかし趙高は丞相の李斯を説得して遺言を書き換え、末子の胡

    【腐敗・汚職】中国史の悪名高い宦官列伝 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • エアコンの歴史 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    空間の快適さを求めるエアコンの技術開発史 現在一般に言われるエアー・コンディショナー(エアコン)は、以下の機能を持つ機械のこと言います。 温度管理 湿度管理 空気循環と換気の管理 空気の浄化 古代から空気を冷やすための仕組みは様々にありましたが、1902年にエアコンが発明されて以来、空間を快適にする空調技術は100年余りで急速に発展を遂げました。 現在は深刻化する温暖化問題と、快適さを両立すべく技術の開発が進められています。 今回はエアコンの技術開発史をまとめていきます。 1. 涼を得るための先人の知恵 古代から居住空間の温度を下げて快適に過ごすための様々な工夫がありました。 例えば古代エジプトでは、窓に水をかけて湿らせた葦を吊るし、水が蒸発する蒸発熱を利用して窓から吹き込む空気を冷やしていました。水が蒸発する時には周囲の熱が消費されるので気温が下がります。この手法は乾燥した砂漠の気候では

    エアコンの歴史 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • ヨーロッパの「民族統一主義」運動(後編) - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    ヨーロッパの辺境の民族統一主義 前編では、ドイツ、ハンガリー、クロアチア、セルビア、ルーマニアの民族統一主義を見ていきました。前編はこちらをどうぞ。 今回は同じヨーロッパで、ブルガリア、アルバニア、フィンランド、オランダ、ポルトガルです。領土拡張主義にどのような民族的文脈があるかという観点でご覧になっていただければ幸いです。 6. 大ブルガリア 列強の干渉によって消えた幻の領土の回復 大ブルガリアの起源は「三つの海のブルガリア( България на три морета)」と言われた第一次ブルガリア帝国(681年~1018年)にあります。 第一次ブルガリア帝国はクルム一世の時代に最盛期を迎え、その領土は現在のブルガリア、ルーマニア東部、ギリシャとマケドニアの一部の広大な領土を支配下に置きました。黒海、エーゲ海、アドリア海の三つの海に面していたわけです。 しかしキエフ・ルーシのスヴャトス

    ヨーロッパの「民族統一主義」運動(後編) - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • ヨーロッパの「民族統一主義」運動(前編) - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    大きいことは、いいことだ。我らが祖国のあるべき領土 国境線は民族移動・宗教文化の伝播・経済的要因など様々な要因を背景にして、大きな政治力や軍事力を持った権力が現れることで様々に書き換わってきました。 今は別の権力が支配しているものの、自分たちの言語を話す人々が住む土地、祖先がかつて辺境に植民に行った先、かつて祖先が住んだ土地、偉大な王がかつて征服した土地、これらは来は自分たちが支配しなくてはいけない土地である、という言説はかなり広く存在します。そういう言説が影響力を持つことで悲劇的な戦争が起きたことも多々ありました。 そのような「民族統一主義」の言説をまとめてみます。今回はヨーロッパ編です。 1. 大ドイツ Image by Master Uegly オーストリア主導での統一ドイツ ナチス・ドイツが東方に「生存権」を求め掲げた大ドイツ帝国圏のイデオロギーは有名ですが、その思想の下敷きとな

    ヨーロッパの「民族統一主義」運動(前編) - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 豆腐の歴史 in アメリカ - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    ダイエット、ビーガンフードの代表格・トーフ 豆腐はもはや世界的に一般的な材となりました。 特にアメリカでは1970年代からローカロリーながらプロテインが摂れる栄養として注目されて以来、年々普及が進み、スーパーマーケットで普通に売られるくらい品となりました。特に最近では、ダイエットフードやビーガンフードの人気の高まりで、意識が高い人の間では豆腐は常となりつつあります。 アメリカにでの豆腐の製造が始まったのは意外と古いのですが、普及には100年近くの時間がかかっています。今回はアメリカにおける豆腐の歴史を簡単にまとめます。 1. 初期の時代 アメリカ人の豆腐の"発見" アメリカ人で初めて豆腐について言及したのは、アメリカ独立功労者の一人ベンジャミン・フランクリンと言われています。 彼は1770年1月11日に、ロンドンからペンシルバニア州フィラデルフィアのジョン・バートラムに宛てて大豆を

    豆腐の歴史 in アメリカ - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 世界史の驚くべき奇襲戦術(後編) - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    近現代の戦争の奇襲戦 近現代の奇襲戦と言えば、真珠湾攻撃が思い浮かびます。 あれが「だまし討ち」だったというイメージがあり、アメリカも日が開戦準備してるの知らねえはずなかっただろ、とも思いますが、宣戦布告が遅れてしまいただでさえ悪い日の国際的なイメージを決定的に悪化させてしまいました。 とはいえ、近代戦でも奇襲は非常に有効な手段であり、いかに初動で重要な拠点を潰すかが勝敗のカギを握りました。それは現代でも同じです。 歴史的な奇襲攻撃の後編は近現代編です。前編はこちらからどうぞ。 6. エバン・エマール要塞の戦い Attribution: Bundesarchiv, Bild 146-1974-113-59 / Teschendorff / CC-BY-SA 3.0 ベルギー軍の固い要塞が29時間で無効化 フランスとドイツと国境を隣接するベルギーは、独立以来両国との国境沿いに要塞をいくつ

    世界史の驚くべき奇襲戦術(後編) - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 世界史の驚くべき奇襲戦術(前編) - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    芸術的なほど見事に奇襲攻撃がハマった事例 日史で奇襲攻撃が成功した戦いは、パッと思いつくだけでも結構あります。 一の谷の戦い、屋島の戦い、厳島の戦い、桶狭間の戦い、真珠湾攻撃。 日人はなぜか奇襲が成功した戦いは凄く好きですよね。 では世界史ではどうなのか。有名な世界史での奇襲攻撃が成功した事例をまとめていきます。 1. メギドの戦い(紀元前1457年) Photo by Olaf Tausch 記録に残る「世界最古の戦闘」は「世界最古の奇襲攻撃」 人類は有史以前から大小様々な形で戦闘を行ってきています。記録に残っている戦闘の数は圧倒的に少なく、ほとんどの戦闘の記録はなくなっていると考えられます。記録が確認できる「歴史上」では、紀元前15世紀のメギドの戦いが世界最古の戦いとされます。 この戦いはエジプト王国の領土を最大に広げた第18代王朝の6代国王、トトメス三世の治世である紀元前1457

    世界史の驚くべき奇襲戦術(前編) - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 【2020年6月版】世界史関連の新刊30冊 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    2020年3月〜2020年6月の世界史関連の新刊の紹介 新型コロナの影響で、地方によっては屋が閉まってに触れる機会が減った方もいたかもしれません。逆に、図書館が閉まったせいで電子書籍やネット通販でガンガンを買った人もいるかもしれません。後者は私のことです。 直近で出た世界史関連の新刊を紹介してまいります。やはり疫病に関するが多く出ているのと、あと大学出版会から分厚めの専門書が多く出ています。 1. 「陸海の交錯 明朝の興亡 <シリーズ 中国歴史>」 檀上寛 著  岩波書店 2020/5/20 陸海の交錯 明朝の興亡 (シリーズ 中国歴史) 作者:檀上 寛 発売日: 2020/05/21 メディア: 新書 中華と夷狄の抗争、華北と江南の対立、草原と海洋の相克――明の時代とは、このような混沌とした状況に対する解答であった。第四巻は、一四世紀の元末から清が台頭する一七世紀まで、三〇〇

    【2020年6月版】世界史関連の新刊30冊 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 冷戦期ラテンアメリカの政治とポピュリズムの台頭 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    中南米諸国が経験したポピュリズムという政治 ラテンアメリカは十九世紀末から二十世紀初頭にかけて、繁栄を謳歌していました。 欧米向けの資源輸出が好調で、特にアルゼンチンは当時の十大国に数えられるほど経済力が高い国でした。しかし、世界恐慌の到来で資源輸出が不調になり、産業構造の変化が求められると、南米諸国は経済的な危機や都市部でのマルクス主義・労働運動の拡がりに対応するために、ポピュリズム体制が採られるようになります。 1. 寡頭制支配の破綻 ラテンアメリカではスペイン植民地以来、政府や荘園主、教会が民に温情を施し教え導く、という伝統がありました。 国のリーダーも、声がデカくて腕っぷしも強く、金払いがよくて部下に慕われる「カウディーリョ(親分やボスといった意味)」が指導者に就くケースが多く見られました。 カトリック保守主義に基づく精神主義的な文化が長年支配的でしたが、20世紀ごろから人口が農村

    冷戦期ラテンアメリカの政治とポピュリズムの台頭 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 白旗の歴史 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    戦場で掲げられる「白旗」の意味とは 戦場で「白旗」を掲げた歴史は、古くは古代ローマ時代の書物に記述があります。また、漢の時代の中国でも白旗が使われたという記述もあります。 近代からは国際ルールとして「白旗」の使用が定められました。 今回はもっともシンプルな意匠である白旗のシンボル的な意味を中心にまとめていきます。 1. 白旗の意味 古代から戦場で「白い布」を掲げることは「戦闘の意志なし」を意味しました。 第二次ポエニ戦争中、カルタゴ土に侵攻したスキピオ率いるローマ軍は、「白いウールとオリーブの枝」を掲げた敵船を発見。哀れに思ったスキピオは船のカルタゴ兵10名を捕虜としたそうです。また、ローマ内戦時の69年の第二次ベドリアクムの戦いで降伏した将兵が白旗を掲げたとローマの歴史家タキトゥスが記録しています。それ以前はローマ軍団兵は降伏する時には盾を頭に乗せていたので、紀元後1世紀付近で普及した

    白旗の歴史 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • ハイダラバード藩王国のインド統合の過程 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    デカン高原の大国・ハイダラバード藩王国の帰属問題 イギリス統治時代のインド亜大陸には、数多くの藩王国が存在しました。イギリス時代には藩王国は550~600程度存在したと言われます。 これらの藩王国はイギリス進出以前からあった独立王国で、イギリスの「至上権」を認める代わりに内政権を保証されました。 イギリス直轄領のインドではガンディーやネルーなどのインド国民会議派は独立運動を進めましたが、これらの藩王国はその枠外にあり、インドが独立した後に政治的な帰属が問題となりました。 デカン高原にあった最大の藩王国であるハイダラバード藩王国は、統治層はムスリムでしたが住民の大部分はヒンドゥー教徒、かつ国内に3つの言語があるという地域。 最終的にはインド軍による侵攻でインドに統合されるのですが、パキスタンのように独立を目指す動きも存在していました。 1. ハイダラバード藩王国とは Image by Jka

    ハイダラバード藩王国のインド統合の過程 - 歴ログ -世界史専門ブログ-
  • 「反穀物の人類史」書評 - やっぱ国家ってロクなもんじゃねえな - 歴ログ -世界史専門ブログ-

    世界史を見る視点が大きく変わる壮大な文明論 「反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー」ジェームズ・C・スコット著(みすず書房)を読みました。 紀元前4000年から紀元前2000年の時期に、我々の祖先が作り上げた「国家」という仕組みがどのように成立したか、その中で穀物がどのような役割を果たしたかを、考古学・人類学のファクトを元にし壮大で大胆な仮説が提示されています。 その中で国家が民を支配していく中で、税が課され、兵役や労役が課され、疫病が流行り、ロクなもんはえず、人間が自分たちをどんどん不幸な方向に追い込んでいく様が描かれます。 賛否はあると思いますが、「何だ、やっぱ国家ってロクなもんじゃねえな」という感想を持つ人もいるかもしれません。 1. なぜ国家は生まれたのか 書の筆者ジェームズ・C・スコットはイェール大学の人類学者・政治学者。東南アジアをフィールドとし、地主や国家の権力

    「反穀物の人類史」書評 - やっぱ国家ってロクなもんじゃねえな - 歴ログ -世界史専門ブログ-