この連載が本になりました。 <2020年3月12日発売> 『スゴ母列伝 いい母は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける』 詳細はこちら 「一番好きな婦人運動家は誰?」 と聞かれる機会はこれまでもこの先もないだろうが、答えるなら断然、山川菊栄である。 現代においてその名を一番目にするのは、大正時代に婦人雑誌を舞台に繰り広げられた母性保護論争だろうか。 子供国有論を唱えて国家は子供を保護すべきと訴える平塚らいてうと、国家に頼るな母も働いて子供を養えとマッチョに煽(あお)る与謝野晶子の例の論争である。ふたりとも言葉が足りないなあ、でも大正時代だから仕方がないよね、などと思いながら読んでいると、割って入った山川菊栄の明快さに驚いてしまうのだ。 曰く、ふたりの意見は本質的に対立するものではない。母親にも職業による経済的独立の機会を保障すべきだが、それと同時に社会保障制度によって母子の生活を守るのは