途中まで友だちが車で送ってくれて、あとは歩いてきた、と彼は言った。彼女がどうやって来たのと訊いたからだけれど、彼らのどちらもそんなことに興味はなかった。でも彼らは口を利く必要があったし、それによって感情をやりとりする必要があった。彼女は十八で、地震が来るまで受験のことしか考えていなかった。それからいくらも経っていなくて、彼女はまだ興味というのがどういうものか、うまく思い出すことができなかった。 感謝しなくてはいけないと彼女は思う。この従兄は京都に進学していて地震に遭わずに済んだのにわざわざやって来て、自分の両親だけでなく近所の親戚の無事(あるいは無事でなさ)も確かめて助けてくれて、今から帰ってしまうのだから、と思う。 彼は彼女に封筒を手渡す。お金、と彼は言う。少しだけど。なにしろ現金はあったほうがいい。彼女がうまく感謝できずにいると、気にしなくていいと彼は言った。僕が予備校で適当に荒稼ぎし
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