東京電力福島第1原発の事故から間もなく10カ月。国は昨年12月に「冷温停止状態」を宣言したが、廃炉や除染、住民帰宅の実現には長い道のりが続く。下北半島に原子力施設が集中立地する青森県にとっても、原発事故の影響は大きい。国が進める原子力政策の見直し議論は、原子力との共存共栄を一つの柱としてきた、県の将来を大きく左右する可能性もあるからだ。デーリー東北新聞社が、県内40市町村の首長を対象に実施した原子力政策に関するアンケートの結果からは、住民の生の声に触れる機会が多い首長が、原発事故を目の当たりにし、単純には割り切れないさまざまな思いを抱いている実態が浮かび上がってきた。 (粒来和成)
<体力が続くか> 被災地からの移住を促す現行の枠組みでは、防災集団移転促進事業と並ぶ大きな柱の一つに土地区画整理事業がある。 「事業の完了まで体力が続く仲間がどれだけいるか」。陸前高田市商工会長で、高田地区の建設業阿部勝也さん(70)が、市が進める区画整理の行方に気をもむ。 高田地区は、並行する国道45号とJR大船渡線の沿線に商店や住宅、公共施設などが集中していた。シンボルの景勝地・高田松原を根こそぎ奪い去った高さ13~17メートルの巨大津波で、阿部さんも会社事務所と自宅を同時に失った。 市は昨年12月策定の復興計画で、規模が小さい集落の高台移住には防災集団移転促進事業、人口が多い市中心部の再開発には土地区画整理事業を適用するシナリオを提示。 今月初め、高田地区と川向かいの今泉地区(計621ヘクタール)で区画整理を進める都市計画決定をした。 <阪神では16年> 土地区画整理事業は、地権者の
<100メートルずれれば> 市道をなぞった1本の紫色の線を何度、見詰めたことだろう。「かさ上げされる市道が内陸にもう100メートルずれていたら集団移転できたのに...」。仙台市の住民説明会で渡された地図を手に、宮城野区南蒲生地区の農業遠藤林治さん(60)がため息をつく。 海岸から1キロ離れた自宅は高さ約3メートルの津波に襲われ、基礎部分だけが残った。長男夫婦が5年前、敷地内に建てた家も全壊した。 仙台市は昨年9月、南蒲生地区を集団移転の対象となる災害危険区域に指定する方針を示した。指定されれば国の防災集団移転促進事業が活用でき、被災宅地の買い上げや移転先の用地取得、移転経費補助などさまざまな支援がある。 しかし1カ月後、市道西側の遠藤さん宅周辺は区域指定を見送られた。仙台市が津波浸水シミュレーションを見直した結果、市道を6メートルかさ上げすれば、家屋流失の危険性が高い浸水深2メートルを下回
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