しばらく待ってみたところ、わたしの期待していた以上のひとことを言ってくれた方がいた。 その方の見方は、小説としての『日本語が亡びるとき』を読んで、その主人公である「私」が結末の章で思い至ったことが衝撃であり問題となっている、というものだった。 思わずひざを打ってしまいそうなひとことだった。わたし自身がうだうだと考えつづけていたことをさらりと言って、その先へと論を進めている方がいて、ああなるほど、これでよかったのかなと思った。 なにがよかったのかというと、自分がこの本を読んで思いついたことを何回かに分けてぼそぼそと書きながら、周りの方がどのようにこの本を読んでいるのかをこっそり垣間見てきたことだ。わたしはどちらかといえば、本を読むのは内向きで完結してもかまわないと考えていて、本を読んだということをわざわざ人に言って回るほどのことはないと思っていた。本を読むのは学校の授業でなにかを一斉に読むの