石蔵さんは自らの哲学で一人ひとりの患者をじっくり時間をかけて診る治療を続けてきたが、いままでに「それでは病院の経営が成り立たない。辞めてくれ」と、5つの医療機関から離縁状を渡された経歴を持つ。 「日本の医療界は自らの常識の罠に完全にはまってしまっているんですよ」 「なぜ改革をしたくないのか、その理由はさっぱり分からないが、愚かなことに医者はますます忙しくなるのに、所得は増えるどころかどんどん貧乏になる悪魔のサイクルを是として受け入れている」 日本の国民皆保険制度は世界的に見れば非常に優れている。しかし、どんなに優れた制度やあるいは組織であっても、長年同じことを続けていると内部に膿がたまってくる。 ときどき膿を出してやらないと、大きなおできとなって簡単には治らなくなってしまう。いまの日本の医療現場がまさにそのような状況だと石蔵さんは言うのである。 「日本では1日にできるだけ多くの患者を診て、