乙嫁語り 1 [作]森薫[掲載]2009年11月1日[評者]山脇麻生(ライター)■19世紀 中央アジアの嫁入り 英国ビクトリア朝時代のメードを、歴史考証に忠実に描いた『エマ』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した森薫。1年ぶりとなる新作の舞台は、森林地帯と急峻(きゅうしゅん)な山地と乾燥した草原を持つ土地に、あまたの民族が栄えた19世紀後半の中央アジアだ。 多様な民族が分散した広大な土地に、同じ民族同士が肩寄せ合って生きていた分散集中の時代、12歳の少年カルルクのもとに、山を越えて20歳の娘アミルが嫁いできた。定住化した一族の夫と遊牧民の妻、その年の差は8歳。 草原で馬を駆り、弓でウサギをしとめた年上の花嫁は、手際よく獲物を調理し、その皮で夫のために美しい胴着を仕立てる。ぎこちなさを残しつつも、少しずつ愛を育んでゆく2人。それと同時にこの結婚は、口承文化が主だったこの村の人々に、