9月に公開された東野圭吾原作の映画「沈黙のパレード」には、かつて少女殺害事件を起こしたが完全黙秘を貫き、無罪となったという男が登場する。主人公の天才物理学者・湯川学は男を「警察が生んだモンスター」と表現した。 黙秘権は容疑者に認められた権利であるが、最近とくに増えているようだ。警察関係者は「弁護士がついた瞬間に黙秘に転じる」と話す。そのため、「弁護士がつく前にいかに供述を引き出せるかが勝負」(警察幹部)といい、時間との闘いの側面が強いという。 録音・録画など取り調べ適正化の名の下に、捜査当局には制約が多くなった。それでも、防犯カメラやドライブレコーダーの増加、キャッシュレス化が急速に進む現在、容疑者の浮上と追跡は昔に比べ容易になった一面もある。DNA型鑑定も犯人特定には欠かせない。「科学捜査の証拠は裁判員にも分かりやすい」(警察幹部)とし、刑事司法は自白から客観証拠重視に移っている。