かつて権力者というのは、富と名声を独占する皆の憧れの存在だった。 それが最も現れているのが、ジョージ・オーウェルが書いた小説、1984だろう。 かの小説に書かれた、ビッグブラザーという強靭な指導者が一庶民の人生を蹂躙していく様は、当時の権力者というものがいかに恐れられていたかを見事に描ききっている。 ジョージ・オーウェルがかの小説を書いたのは 「このままでは、権力者が全ての富と名声を独占し、庶民は奴隷のような存在になってしまうのではないか」 という未来を非常に恐れていたからだろう。 あの小説が売れたという事は、多くの識者は未来がそういう風になるかもしれないと思っていたことの裏返しとも言える。 壁と卵 僕が記憶する限り、権力を最後に公の場で大々的に風刺したのは村上春樹さんがエルサレムで行った「壁と卵」というスピーチである。 とても優れたスピーチなので、読んだことがない人は是非ともこの機会に一