武谷三男さんの三段階論を辞書で引くと「科学的認識は「現象論・実体論・本質論」の三段階を経ながら発展するとしたもの」という説明があった。ここに書かれている「本質論」の「本質」とはいったいどのようなものを指すのだろうか。それは、「現象」や「実体」とどのように違うのか。この「本質」はやはり関係として捉えられるものなのだろうか。 武谷さんの三段階論は『弁証法の諸問題』という本に納められた「ニュートン力学の形成について」という文章の中で語られている。まとめてみると次のようになるだろうか。 現象論的段階 第一段階:現象の記述(実験結果の記述) 「この段階は現象をもっと深く他の事実と媒介することによって説明するのではなく、ただ現象の知識を集める段階である。」……個別的判断、個別的な事実の記述 実体論的段階 第二段階:現象が起こるべき実体的な構造を知る。この構造の知識によって現象の記述が整理されて法則性を