「『新自由主義』に対する科学的オールタナティブ構想に向けて」[1] 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2005年11月23日 1. 「新自由主義」に対する既存のオールタナティブ路線に欠けているのは何か? いわゆる「経済のグローバリゼーション」の下で、日本の福祉国家制度も本格的再編が進んでいる。その動向は、「新自由主義」路線として特徴付けられることも多い。すなわち、経済的自由競争を重視し、規制緩和や市場の競争ルールの整備を進める一方、社会福祉や教育など従来公共部門が担ってきたものを民間へと移して「小さな政府」を作り、「民間活力」による経済的効率やサービスの向上を図る路線として特徴付けられている。これらの政策路線の資源配分的特徴の一つは、端的に言って大企業や高所得者への優遇的な減税の実施であり[2]、他方での福祉的支給の切り詰め・制度見直し[3]等を通じた、所得再分配メカニズムの変換である