なぜ保育士の賃金が低いのか――。その原因に迫ると、「搾取」としか言いようのない構造が浮かび上がる。 国の想定では、保育士の人件費比率は保育園の収入に対して7割とされ、本来、年収380万円が確保されている。国の処遇改善費が上乗せされると、あくまで平均であるが、経験年数3年以上は年収387万円、経験7年以上は435万円を得られることになっている。都内であれば都独自の処遇改善費がつき、100人定員規模の認可保育園で、平均約440~488万円の年収になる、はずだ。ところが、実際に保育士が手にする賃金はこの計算通りにはいかない。 筆者が東京都に対して23区にある認可保育所の財務諸表について情報開示請求を行なったところ、現場の保育従事者の人件費比率が20%~30%台という驚くべき数字の記載された保育園が少なからず存在した。それにもかかわらず、「園長、事務長、事務員、用務員」を合わせた全体の人件費比率は
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