「官僚の行動原理は、つまるところリスク回避にある」―ある行政官僚はこのように述べ、まだ大学院生であった筆者に対し、官僚制の現場について説かれた。(中略) 筆者には、そこに、巷間いわれるような単なる「無責任な官僚」像とは異なる何かが感じられ、強く心に引っかかった。そしてこのときから、官僚制が避けなければならない「リスク」とは何かを考えるようになったのである。(293p) これは「あとがき」のはじめにある文章で、この本を書いた動機が端的の述べられている部分です。 確かに、冒頭の官僚の発言は、単なる責任逃れにも聞こえ、「事なかれ主義」の官僚の行動を端的に表しているようにも思えます。 けれども、一方で日本の官僚は数多くの規制などによって企業や国民の活動を縛っているとも言われます。そこで、ちょっと考えてみると、「事なかれ主義」と、この規制の多さというのは矛盾します。官僚による規制がないほうが官僚が責