クライン・ブルーと呼ばれる色がある。現代美術家イヴ・クラインが生み出した独特の深みと輝きを湛(たた)えた青色で、その青を一面に塗り込めた彼の作品を見ていると、そのまま吸い込まれそうな錯覚に陥るのだ。 本書を読んで、それと似たような感覚に襲われた。『群青学舎』というタイトルが示すとおり、さまざまな学び舎(や)(それは学校とは限らない)を舞台に、“青の時代”に属する人々が群れ集い、ささやかなドラマを繰り広げる。古い教室で少年が不思議な同級生と出会う「異界の窓」、怪しげな媚薬(びやく)の実験台にされた研究員男女の受難劇「ピンク・チョコレート」、森の精霊と木の実採りに来た老婆の交感をセリフなしで描いた「森へ」、カフェの看板娘が朴念仁の教授にアタックする「アルベルティーナ」など10編。ファンタジーあり、ロマンスあり、コメディあり。懐かしさと瑞々(みずみず)しさと、ほのかなエロティシズムを兼ね備えた物