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  • 【小説3巻発売中】雑用付与術師が自分の最強に気付くまで 〜迷惑をかけないようにしてきましたが、追放されたので好きに生きることにしました~ - 第七十一話 時計台の上から

    二代目賢者の後悔。 彼女は周りを拒絶した。その人を拒絶することが彼女にとっての決意であり象徴だった。それさえできれば、己は完全でいられると信じた。 彼女は迷宮(ラビリンス)の片隅で、綺麗な字の手記を遺した。 十九代目賢者の後悔。 彼はその人を隷属させた。それでもその人がその人であると信じて、操って、偽りの愛を植え付けた。 その人は魂を歪められてなお、彼を憎んだ。 二十五代目賢者の後悔。 彼女は市井の慣例に倣って、その人とのかすがいとなる子を為した。数年は幸せな日々が続いたという。 その人の魂は削れ、ただの親になった。 四十三代目賢者の後悔。 彼はその人を見守った。その人に己が関わってはならないと悟り、触れないよう、遠くから、時に人伝てに話を聞いて、心の底から一喜一憂をした。そうすることでしか、その人の魂を守れないと考えた。 その人の死に際に、彼は居合わせなかった。 六十代目賢者の後悔。 彼

    【小説3巻発売中】雑用付与術師が自分の最強に気付くまで 〜迷惑をかけないようにしてきましたが、追放されたので好きに生きることにしました~ - 第七十一話 時計台の上から
    stranger2ex
    stranger2ex 2023/04/19
    “何にも縛られない大人の世界において、仲間とか友人とかいうものが、どれほど作為的なものなのかを痛感した。 ”
  • 【小説3巻発売中】雑用付与術師が自分の最強に気付くまで 〜迷惑をかけないようにしてきましたが、追放されたので好きに生きることにしました~ - 第十八話 書置き

    『心配御無用』 旦那様が使用人を集めて見せたのは、そう書かれた一枚の書置きだった。 お嬢様が書置きを残すのは初めてだった。 旦那様がそれを発見したのは朝。俺もちょうど朝の定時連絡を待てどもなんの音沙汰もなく困っていたのと同時刻である。 奔放っぷりの一方で彼女はまさしく健康優良児で、夜の帰りが多少遅くなることはあれど町に繰り出すという感じではなかったし、朝寝坊をしたことは一度もない。 旦那様が強硬な手段で彼女に言うことを聞かせるということをしなかったのは、そういう当に悪い、堕落みたいなものを跳ねのける力があると見込んでのことだったのだろうと、後になれば思う。 「誰か、心当たりのある者はいるか」 旦那様は玄関に集めた使用人たちに、一通り目を配る。 半分くらいの視線は俺に集まっている。だけど俺はもう報告を済ませていて、昨晩の段階でお嬢様が部屋に戻ったということしかわからなかったから、下を向いた

    【小説3巻発売中】雑用付与術師が自分の最強に気付くまで 〜迷惑をかけないようにしてきましたが、追放されたので好きに生きることにしました~ - 第十八話 書置き
    stranger2ex
    stranger2ex 2023/04/17
    “人を見つけるということはそもそもが難しい。子供であってもだ。  それでも見つかるということの意味を、誰よりも子供本人が一番わかっている。  親に見つけてもらいたいのだ。”
  • 【小説3巻発売中】雑用付与術師が自分の最強に気付くまで 〜迷惑をかけないようにしてきましたが、追放されたので好きに生きることにしました~ - 第三話 フロイライン

    昔のことを思い出そうにも、あまり景色の記憶がない。 どんな家に住んでいたかとか、どんな土地にいただとか、そういう記憶はずっとあとになってから始まっている。 身の回りの二、三歩のことで精一杯だったのだ。 コリンナおばさんは別に悪い人……いやまあ、悪い人寄りだったけど。 しょっちゅう殴られたし。 でも、どうも自分は不安定な身の上らしい、ということは子供心にも理解できていた。 そんな中受け入れてくれて、十分なご飯と寝床をくれたんだから贅沢を言うつもりもない。 教会に行けばも置いてあった。物語はたくさん。百科事典(ブリテンニカ)は全二百巻。やりようによってはいくらでも退屈は誤魔化せた。 押し付けられた家事の手伝いも使用人の訓練も、コツを掴めば殴られることはほどんどなくなっていた。 簡単な話である。 迷惑をかけないこと。 目立たないこと。 そしてできれば、役に立つこと。 執事だったり召使いだったり

    【小説3巻発売中】雑用付与術師が自分の最強に気付くまで 〜迷惑をかけないようにしてきましたが、追放されたので好きに生きることにしました~ - 第三話 フロイライン
    stranger2ex
    stranger2ex 2023/04/16
    “迷惑をかけないこと。  目立たないこと。  そしてできれば、役に立つこと。  執事だったり召使いだったり、使用人全般に通じる極意のようなものだろう。”
  • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-17 ペラティアの末裔

    ノゴルオゴルオ・ディスケイムと威力竜の巫女マルガリータが手を結んでいた。 衝撃と言えば衝撃だが、よくよく考えてみればそう不思議なことではない。 ディスケイム家の影響力は『下』の全土に及ぶ。 そもそもユディーアが竜神信教の巫女であることがその証明だ。 生家であるセインディアの博物城と竜神信教の繋がりは深い。 城主である『金爪』のアゥルメイアからしてかつて第三位の巫女を務めていた古竜だ。 『エレクトラ(ユディーア)』に竜覚を叩き込んだ師。血統魔術師の祖。赤蜥蜴人たちを統べる竜血公。ディスケイム家の頂点に立つ長老たちのひとり。 ユディーアは師以外の長老たちと会ったことはないが、おそらくノゴルオゴルオもまたディスケイムの長老格だったのだろう。この程度の手回しは当然と言えた。 腰に手をあててこちらを見据えるマルガリータは驚くユディーアの表情が愉快だったのか、少し得意そうにこう続けた。 「私の箒、見た

    幻想再帰のアリュージョニスト - 5-17 ペラティアの末裔
    stranger2ex
    stranger2ex 2022/08/25
    “都合の悪い世界の流れを否定する、悪運と文脈の管理者。  ユディーアの人生は、上位次元から入る謎めいた補正によって守られている。  それが『髪』が教えてくれた真実。世界のどうしようもない閉塞感の正体。”
  • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-27 舞台裏の死角⑤

    憎悪には慣れている。軽蔑にも、隔意にも、差別にも。 いっこうに慣れないのは、己の内側で燃え盛る灼熱だけ。 「『葬儀屋』の妹」「あの活動家のせいで何人が死んだと思っている」「なにが活動家だ。家畜に入れ込んで同胞を裏切った屑ではないか」「格式ある葬礼祭司の家などと持て囃されて勘違いしたのだろう。身の程を知れというのだ、忌み仕事しか能の無い隠花もどきが」 隠花を庇い、キノコ人たちの解放を掲げて反抗勢力に組した顕花族。 それがエリカ・モノトロープの兄だった。 優しく、聡明で、誇り高く、虐げられる従僕たちの扱いに疑問を覚え、旧態依然としたティリビナ人の在り方を変えようとした理想主義者。 ある時からエリカの兄は顕花族としての名を捨て、キノコ人のように『葬儀屋』などと名乗るようになった。その『活動』は次第に過激さを増していき、周囲の不理解と反発に疲れ始めた彼が短絡的な暴挙に辿り着くまでにそう時間はかから

    幻想再帰のアリュージョニスト - 5-27 舞台裏の死角⑤
    stranger2ex
    stranger2ex 2022/08/25
    “本心であるかどうかに関係なく、人の心などは信じるに値しない。エリカは知っている。それが心からの決意であったとしても、人は自らを偽ることができるのだ”
  • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-24 舞台裏の死角②

    大人になったら立派な顕花族になるのが少年の夢だった。 生粋の隠花族、どこからどう見てもキノコ人(マイコニド)である彼のそんな夢想を友人たちは無謀だと諫めた。幼馴染の少女は『あちしらには立派な傘頭巾があるだろバカ』と言って彼を叱りつけた。それでも彼は母の『お前の父は偉い顕花様なんだよ』という遺言を頑なに信じた。果たして少年は愚かだったのだろうか? 少なくとも哀れではあった。常識的に考えて、隠花族が顕花族と結ばれることなどまずありえない。彼はそういった不都合な事実を直視しない才能に恵まれていた。それは優れた邪視者の証明である。 友人たちは隠花族の権利のために戦って死に、少年は生き残ってとある顕花族の従僕になる機会を得た。顕花に憧れを抱く純朴さと邪視の力を評価されたのだ。 「あなたは賢明な子ね、『掃除屋』。その目で私たちには見えないものを見つけてきてくれたら、きっとスーリウム様にあなたのお願いを

    幻想再帰のアリュージョニスト - 5-24 舞台裏の死角②
    stranger2ex
    stranger2ex 2022/08/25
    “従順に躾けられた子供たちは反抗する気力を失い、使い魔としてのあり方に執着するようになる。外側に出ることがどれだけ恐ろしいかを魂に刻み込むからだ。”
  • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-19 踏み付けられた死

    小気味良く打ち鳴らされる太鼓と、リズムにのって躍動する肉体。 エキゾチックな亜大陸の伝統音楽が流れる中、勢いよく手を叩いて踊る二つの種族。 いがみ合っていたはずのティリビナ人と黒檀の民が、深い断絶を乗り越えようとする祝祭の光景。活気に満ちた第五階層の主街区を天眼による俯瞰知覚で眺めながら、ユディーアはぼんやりとオープンテラスの席に座ってストローでジュースを啜っていた。強い酸味。舌を刺激する感覚で倦怠感を誤魔化す。 ロードデンドロンの取り成しでアサブは監視付きという条件で捕縛を解除された。 異例、特例、道理の通らない裁定。 法秩序よりも政治的判断を優先させた機械女王を合理的と見るべきか危ういと見るべきかはともかく、結果的に生まれた光景は確実に新しい流れを生み始めていた。 午後から予定されていたパレードに合流した二つの血族集団はまるでそれが当たり前の光景であるかのように祝祭を楽しんでいた。 否

    幻想再帰のアリュージョニスト - 5-19 踏み付けられた死
    stranger2ex
    stranger2ex 2022/08/24
    “明らかにされていないことについて、教えられたような気がする。  それはもう知っているけれど、知らないふりをしていたこと。  けれど、それは誰にとっても同じはずだ。  耐えられない。前に進めないこと”
  • もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-22.冬を好きになれる日が来たら8/愛の世界

    改めて口にしてみると、『決戦』という言葉の仰々しさと白々しさには驚かされる。 整えられた役者と舞台、あらかじめ用意された筋書き、背後で演出について細かく指示を出す劇の主催者たち。言うまでもなくこれは茶番劇で、俺たちは踊らされているだけの駒でしかない。ゲーム上の利得計算でやり取りされる程度の価値しかない矮小な命だ。 個人の強さを競い合う戦い。 命をかけた殺し合い。 そこに崇高さを見出す者たちをあざ笑うように、信仰を束ねる巨大勢力はその質に従って『信じられるため』の戦いをしていた。 そのことを端的に示す一例がこれだ。ネフシュタンの走狗となり果てた牛人組織の長が俺たちを出迎えた瞬間。芝居がかった口調で両手を広げる大柄な牛人はこう言ったのだ。 「ようこそ竜神信教の諸君! 歓迎しようじゃないか!」 自身も蛇と溶け合った状態で、同様に操られた部下と共にこちらを迎え撃つ構えだった。俺たちも当然のように

    もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-22.冬を好きになれる日が来たら8/愛の世界
    stranger2ex
    stranger2ex 2021/12/06
    “ 理想を謳い絆を尊ぶ社会は、その環境に適応した確信犯型の異常者を受け入れてしまう”
  • もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-21.冬を好きになれる日が来たら7/尊い犠牲、尊い愛

    ゾウのごとき巨体が軽々と宙を舞う。 呪動装甲と同調した幻掌に確かな手応え。ウデモドキが反動をしなやかに吸収する。断章のおかげで姿勢制御の誤差修正は完璧。遺跡の床面を鉤爪状の足ががっしりと掴み、踏み込みから生じた運動エネルギーを装甲内部でうねる生体部品が増幅していく。 仲間たちの支援を受けながら、俺は勇ましく敵に向かっていく。 遺跡深部に足を踏み入れた探索者たちへの洗礼。 それが灰色の肌にぎょろりとした単眼を持つ巨人たちの襲撃だった。 その日、ラズリ・ナアマリリス率いる竜神信教の一行が足を踏み入れたのは第五階層を取り囲む六大遺跡の中でも最大規模を誇る『竜の遺跡』だ。 石造りの通路は左右が狭く、必然的に縦列を作って進むことになる。隊列の並びは先頭が俺とジン、それに続いてラズリさんが集めてきた頼れる仲間たち、最後尾に竜導師たちという順番。薄暗い通路を俺が持つランタンが照らしていた。 いや、厳密に

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    stranger2ex
    stranger2ex 2021/12/06
    “自由意志と理念への熱狂からエラーを周辺化する”
  • もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-20.冬を好きになれる日が来たら6/正しさからの疎外

    種を植える運動には単純な環境美化以上の効果があった。 森に囲まれた第五階層に根付くという意思表示。そして槍神教に弾圧されているティリビナ人たちに対する味方であるというアピールだ。 この運動はSNSを通じて拡散され、動画投稿サイトなどを中心に広まっていった。 一般人からセレブ、運動選手や芸能人に至るまでがチャリティーという形でリレーを繋いでいく一大ムーブメント。『世界中で盛り上がっている』と教えてくれたのが竜神信教側の人間であったことを差し引いても、端末から覗いたネットの世界はその『祭り』を楽しんでいるようだった。 ところがそこに冷や水を浴びせたのが槍神教である。 第五階層で人道支援を行っている医療修道会の公式アカウントが、竜神信教が行っている『種まき運動』を『虚栄心を満たすための美徳の誇示』と批判したのだ。その直後に『堅実で意味のある善行』として『医療物資の分配』『予防接種の実施』といった

    もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-20.冬を好きになれる日が来たら6/正しさからの疎外
    stranger2ex
    stranger2ex 2021/12/06
    “暴露動画の形式をとった宣伝工作プロパガンダ”
  • もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-18.冬を好きになれる日が来たら4/好きに縛られて

    逃げなければ。 こんなにも居心地の良い場所を捨ててどこへ? 手を振り解かなくては。 こんなにも素敵な人を拒絶する理由がどこに? ゴアゴア、ゴアゴア。 頭の中で小さな怪物の鳴き声が響く。 麻痺した心に短い牙を突き立てて、正気に戻れと必死に叫んでいる。 おかしいな。俺は正気だ。その証拠にラズリさんへの愛だけが思考の全てを占めている。 感情と意思はラズリさんと共に生きると決めている。 自らの存在、その意味も価値も彼女と出会うためだけのもの。 それこそが俺の運命。それこそが俺の当の願い。 大いなる愛、尊い絆、自分を肯定してくれる優しさ。 『きっときみは、あの子の生まれかわりなんだね』 それは多分、人間にとってかけがえのないものだ。 ふと、白く染まった光景を思い浮かべる。 一面の銀世界。吐く息は白く、肌を包む大気は冷たい。 人は当たり前に愛されていい。恵まれていていい。そう思わなければ生きることさ

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    stranger2ex
    stranger2ex 2021/12/06
    “意識の連続性を一時停止。再起動。主観記憶をパージ、情動を抑制しつつ『俺』のエミュレートを開始。夢は醒めた。そしてまた夢が始まる。慈悲、運命、絆、自由意志による恋愛、主体的な選択、その全て。 無価値だ
  • もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-8.煉獄篇第六歌/浄炎の向こう側へ

    重々しい音が響いてきたのは戦いが終わった直後のことだった。 見計らったようなタイミング。否、事実そうなのだろう。 武装した修道騎士たちを引き連れて現れた美貌の王子様は、悲しみに暮れるティリビナ人たちにこう言い放った。 「負傷者の手当ては任せてくれ」 「キロン。俺たちは気が立ってるんだ。疲れ果ててるように見えるか? 第二ラウンドをやっても構わないって奴ならいるぞ。俺がそうだ」 殺意を込めて睨むが、美貌の修道騎士はそれには取り合わず歩きつづける。歪な形をした首無し死体、墜落したギデオンの成れの果てを見下ろしながら何かを考えこんでいるようだった。小さな唇の動きを読み取り、『断章』が字幕を表示する。 「なるほど。全階層を破壊した上での創世、それがあちら側の思惑かな。正面からの世界槍掌握を諦めたのか、あるいは魔将計画とは来そうしたものだったのか。いずれにせよ、帳尻を合わせるための討伐対象としては

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    stranger2ex
    stranger2ex 2021/12/05
    “『医療』という権益を巡る抗争。”
  • もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-4.煉獄篇第二歌/秩序の守護者、あるいは混沌の殺戮者(後編)

    その日の来客たちは、それまでのならず者とは様子が違っていた。 シンプルな立て襟の祭服姿で、大量の物資を抱えている。 ティリビナ人たちの居留地に近い場所にキャンプ用の資材やコンテナを持ち込み、中からは料や衣服を取りだして渡そうとしていた。 なにやら慈善団体めいた雰囲気が出てきたが、もちろんそれだけでは終わらない。 「天地を貫く偉大なる我らが父よ、何よりも鋭きその穂先より血を払うがごとく、無知なる者たちの罪を赦したまえ。異端なる心を悪より救いたまえ」 男たちは分厚いを取り出し、よく響く声で開いた項の一節を語り出した。 背後の集団が瞑目して祈るような仕草をしている。 つまりあのは聖典で、これは祈祷なのだろう。 集団は小さな槍型の祈祷具を手に持ち、設置した台に松明を近付けて篝火にしていた。 ティリビナ人たちは物乞いの集団でもある。 こういう施しは助かることだろうなどと思っていた俺は意表を突か

    もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-4.煉獄篇第二歌/秩序の守護者、あるいは混沌の殺戮者(後編)
    stranger2ex
    stranger2ex 2021/12/05
    “余計なお世話どころではない。  これは善意による侵略だ。”
  • もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-2.ゼノグラシア/未知なることば

    泡が浮上して、ぱちりと弾ける。 夢の底、糸杉の森の奥深くより、記憶が現実に染み出した。 揺らぐ記憶が時間を遡る。それは、かけがえのない悪夢だった。 終わらない夜。死と闇に満ちた森。血と骨を踏みしめて戦場を駆け抜ける。 見知らぬ異世界に投げ出され、流されるようにして戦いに巻き込まれた俺は、ふとした拍子に絶望の中へと転がり落ちた。 救われたのはちょうどそんな時だった。それまで通じなかった言葉で語りかけてくれたその人は、銀色の甲冑を身に纏った小柄な騎士の姿をしていた。 「この『死人の森の断章』は死者の言葉を記す魔導書。さっきのはそういうこと。あなたという『一度死んだ者』の言葉を理解することができたのも同じ理由」 甲冑騎士はそう言って黒いを掲げ持った。 性別のわかりにくい不思議な雰囲気。男性の中にいれば少年だと感じるだろうが、女性の中にいれば少女だと感じるかもしれない。 「いずれにせよ、言葉が通

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  • 【アニメ放送中!】陰の実力者になりたくて!【web版】 - 盗賊って歩くボーナスステージだよね

    多分十年ぐらい経ったと思う。 魔力はすごい。人間の限界を軽く超えた動きが出来るのだ。 岩とか余裕で持てるし馬の倍速で走れるし家より高く跳べるし。 ただしまだ核は無理。魔力で強化すれば防御力は上がるけど、地球兵器の火力は偉大だ。 この世界に核ないし別にいいかとも思ったけど、妥協してなった陰の実力者に価値はあるのか? ない、皆無だ。 よって僕の目標は核に勝る力を身につけることだ。 そのために日々研究と修行を重ねた結果僕が可能性を感じたものが一つだけあって、最近は実験の日々が続いている。 そうそう、僕の生まれた家は貴族だったらしい。魔剣士と呼ばれる魔力で身体を強化して戦う騎士を代々輩出する家系で、僕はこの家の期待の男子……ではなくごくごく平凡な魔剣士見習いとして育っている。 陰の実力者は実力を見せる相手と場所を選ぶのだ。そう、来るべきその瞬間まで……。 手を抜いているとは言え、魔剣士見習いとして

    【アニメ放送中!】陰の実力者になりたくて!【web版】 - 盗賊って歩くボーナスステージだよね
    stranger2ex
    stranger2ex 2021/11/13
    “距離を境に1mm単位で大きな意味を持つようになる。相手の攻撃に反応できる距離であり、それから角度とか半歩横にズレたりするだけで有利不利が変わる、間合いってそういうギリギリのラインを調整するものだ”
  • 蜘蛛ですが、なにか? - 257 文字って素晴らしい

    喋れないなら文にして渡せばいいじゃない。 私って天才。 あらかじめ言いたいことを書いたを渡せば、余計なコミュニケーションを取らなくても済む。 あとは向こうが勝手にを読んでくれればいいだけなんだから。 しかも、私はを読んでる間、別に近くにいなくてもいいし。 早速を書きまくった。 これで今まで接触を渋ってた連中にもアタックできるぜ! ヒャホイ! まずは妹ちゃん。 妹ちゃんには今後、密かに夏目くんの動きを支援してもらうことになる。 まあ、それもそこまで関わらせるつもりはないけど。 あくまで妹ちゃんは支配者スキル取れたらラッキーくらいの気持ちで。 駒として見るのはやめておく。 兄様ラブが暴走していつ裏切るかもわかったもんじゃないし。 というわけで、簡単な指示だけ書いたメモ書きみたいなものを渡しておく。 「なんですか、これ?」 「読む」 それだけ言ってさっさと退散。 下手に会話を続けると兄様

    蜘蛛ですが、なにか? - 257 文字って素晴らしい
  • 八男って、それはないでしょう! - 第百三十六話 西方動乱。

    「定時報告も異常なし。艦長、何もない海ばかりですな」 「そうだな、副長。だが古い記録によれば、西方には魔族の住まう国があるとか……」 「その情報、当なのでしょうか?」 「わからない。だが、何もないという事はないのではないか?」 穏やかな大海原を、一隻の巨大魔導飛行船が航行している。 艦名は『リンガイア』、我らが住む大陸の名前を冠した全長四百メートルにもなる巨大飛行船だ。 現在この船は、王都から出発して西方海域の調査を行っている。 リンガイアは大分昔に古代魔法文明時代の地下遺跡から発掘されたが、つい最近まで運用ができなかった。 それは、動力源となる巨大魔晶石が確保できなかったからだ。 他にも、この巨大な船体を支える装甲材なども不足していた。 どうやら修理、整備途中だったようで、発掘時にはかなりの外部装甲が外されていたのだ。 このままでは就役は不可能、そう思われていた時に奇跡が起こる。 王都

    八男って、それはないでしょう! - 第百三十六話 西方動乱。
    stranger2ex
    stranger2ex 2016/01/31
    “ お貴族様という言い方は、空軍で我ら平民出身者達がよく使う暗語だ。 空軍に所属している、鼻についたり、役に立たないお客様な貴族の事を差す。”
  • 蜘蛛ですが、なにか? - 252 優しさという名の呪い

    「白ちゃん。色々とやらかしてくれてるらしいね?」 開口一番、魔王の詰問。 いつもおちゃらけた雰囲気の魔王の声とは思えないほど、その声には暗く澱んだ重みがあった。 イヤ、これこそが来の魔王の声なのだろう。 私の分体と混じり合い、変質する前の。 なるほど、そりゃ、バルトがビビるのも頷けるってもんだわ。 今の魔王を前にして、ビビらないでいられるのはほんのひと握り。 ビビる必要がないか、よほどの覚悟を決めてるか。 ビビらないのがいたら、どっちかだろうね。 私はビビる必要がない側だけど。 魔王の問いには答えず、目を開く。 魔王は一瞬顔をしかめたけど、それだけ。 私の目の恐怖に耐え切った。 「どういうつもりなのかな?」 底冷えするかのような声。 返答によってはタダでは済まさない。 その意思がありありと感じ取れる。 「隠し事」 私は魔王の圧力をひらりと躱し、黒を指さしつつそう言った。 魔王の標的がそれ

    蜘蛛ですが、なにか? - 252 優しさという名の呪い
  • 蜘蛛ですが、なにか?

    勇者と魔王が争い続ける世界。勇者と魔王の壮絶な魔法は、世界を超えてとある高校の教室で爆発してしまう。その爆発で死んでしまった生徒たちは、異世界で転生することになる。クラスの中でも最底辺に位置する主人公は、よりにもよって蜘蛛の魔物として生まれ変わってしまう。ただ、異常な程に強い精神力で現状を受け止め、割とあっさり順応してしまう。これは蜘蛛の魔物になってしまった主人公が、なんやかんやサバイバルして生きていく物語である。 なんか書籍発売してるらしいですよ。 1 プロローグ 2015/05/27 23:16(改) 2 どうやら私はモンスターらしい 2015/05/28 01:11(改) 3 鑑定はチートスキルだと思っていた時期がありました 2015/05/28 02:30(改) 4 (ついさっき)生まれて初めての(元から居た)ダンジョン探索 2015/05/29 22:27 5 なんということでし

    蜘蛛ですが、なにか?
    stranger2ex
    stranger2ex 2016/01/23
    カフカか.
  • 転生した僕の女子力LV100 修正前