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ブックマーク / kakuyomu.jp (8)

  • 第527話 ドンツキ - 迷宮クソたわけ(イワトオ) - カクヨム

    遠くから破裂音が聞こえる。銃声だ。 だけどそれは昨日の様な切れ間の無いものではない。散発的な音だ。 寝床で目を覚まし、僕は身を起こした。 閉じられていたゼムリの目もそれに合わせて開かれる。 「おはようございます。アナンシさん。体調はいかがですか?」 「うん、悪くないよ。よく眠った気もする。君は?」 「実はあまり眠れなかったんですよ。多頭竜という怪物を見て、興奮してしまって」 ゼムリは年相応の少年らしくはにかんで見せた。 グロリアが教会の伝手で連れてきた暗殺者だが、小雨よりも表情は豊かだ。 僕は立ち上がると、簡素な椅子に腰を下ろした。 「そういえばゼムリ、いま『荒野の家教会』はどうなっているの?」 北方領はもとより、王国全土に権勢を誇った『荒野の家教会』も領主府との暗闘、北方の争乱、メッシャールによる侵略などでずいぶんと被害を受けたと聞く。 しかし、ステアも『荒野の家教会』から離れてしまった

    第527話 ドンツキ - 迷宮クソたわけ(イワトオ) - カクヨム
    stranger2ex
    stranger2ex 2023/01/13
    特殊な奴らの死に場所
  • 【限定公開】第2章中挿話1 奴隷の思い出 - 迷宮クソたわけ(イワトオ) - カクヨム

    酒場には人相や特徴が書かれた板切れが壁に貼られている。領主府から配布される手配書だ。 仲間と事に来たのだけど、雑用を済ませてから来るという仲間たちに先立ち、一人で机に座った僕の目は、見るとはなしに壁に打ち付けられた人相書きを眺めていた。 と、そのうち一つに目がとまる。 『男、中年。詐欺師の類い。無許可の奴隷商いを行う。栗色の髪、首元に大きな火傷痕あり』 多分、その中年男を僕は知っていた。 賞金は金貨で五枚というところなので取り立てて凶暴というわけではないだろう。 しかし人相書きの板きれも随分と薄汚れているのでもう打ち付けられて時間が経っているらしい。 果たして、この男が逃げおおせているからか、それとも捕まったにもかかわらず木切れが忘れ去られているのかは判別がつかない。 わざわざ領主府に行って担当官に尋ねるほどのうまみもない。 今の僕があるのはこの男のお陰であるとも言えるが、礼をいう筋でも

    【限定公開】第2章中挿話1 奴隷の思い出 - 迷宮クソたわけ(イワトオ) - カクヨム
    stranger2ex
    stranger2ex 2023/01/04
    福利厚生、教育、経済、徳を説く。弱者とは。教師とは。商品価値。オークション。人の市場。ブートキャンプ。入り口は同じ。過ごす場所は異なる。出口も。痩せた小間使い
  • 0-7 第九魔将 - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

    九十九戦して五十勝四十九敗。 百戦目はお預けのまま、別れの時がやってくる。 そこはジャッフハリムの東方に聳え立つ奉竜山。 外力無双で知られる西とは異なり、そこは内力を極めんとする武術家たちにとっての総山であった。 内家拳の極致と称される青海の教えを受けんが為に、胸に大志を抱いた様々な者達が集う武術の聖地。 少女は地に伏した相手に手を差し伸べるが、無視されてしまう。 自力で立ち上がった少年は、強い視線を向けながら言った。 「勝ち逃げする気か」 「知らないよー」 少女は少年より、まだ少しだけ背が高い。 男の子の負けん気は嫌いじゃない。 とはいえ、やむを得ない事情というのはいつだってどこにだってあるもので。 「そっちだって立場は同じなんだから、わかるでしょ。四十四士の家に生まれたらさ、いつかはジャッフハリムに――レストロオセ様にお仕えしなきゃなんだし」 「貴様は天蓋の上に向かうらしいではないか

    0-7 第九魔将 - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム
    stranger2ex
    stranger2ex 2022/08/18
    “情、孝悌、仁義、忠義、誇り、自尊、その他ありとあらゆる『心』無くばいかなる精強を誇る武門であろうと魔教へ堕ちる。 ”
  • 3-102 『特権者の英雄症候群、さもなくば――』② - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

    菱形の貨幣を弄び、呪術商人としてありとあらゆる呪術を売買する呪術師。 空間に満ちる摸倣子を『買い占める』ことで、他者の呪術使用を妨害しつつ絶大な力を振るう極めて厄介な能力。 だが、王としての圧倒的経済力で敵対者を圧殺するクエスドレムの物量攻撃は敵対者には通用していなかった。 資主義ミームを操作し、朱色の貨幣にてありとあらゆる『夢』を支配する万能の呪術を、探索者の集団は統制のとれた動きで凌ぎ続けている。 無傷とは行かないが、互いに不足を補い合い、致命の一撃を協力して打ち破り続けているのだ。 彼らの戦闘能力を支えているのは、背後から聞こえてくる竪琴の奏でる音。 歌姫の呪文が響く中であっても優美に力強く響き続ける詩。 その空間だけ、外界とは物語の主役が違うかのよう。 『彼』は竪琴を奏でながら、戦いの光景を見て満足げに頷く。 勇壮なる戦士たちの奮闘。 挑むは強大な敵。 あとは手に汗握る窮地が欲し

    3-102 『特権者の英雄症候群、さもなくば――』② - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム
    stranger2ex
    stranger2ex 2022/08/18
    “「ただで食える飯なんてありゃしない。都合のいい汎用最適化戦略(メタヒューリスティクス)なんてのは馬鹿の妄想ですよ。” けれども、ブリコラージュの戦術ではあるかも知れない。
  • 3-101 『特権者の英雄症候群、さもなくば――』① - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

    「最初におかしいと思ったのは、殺害された人数」 ハルベルトは静かに呟いた。 左右非対称の耳は晒したまま。 今回の戦いで、その正体は万人が知るところとなってしまった。 けれど――過去の歌を響かせた今ならば、もうその耳を隠し続ける必要も無い。 困難は果てしなく、地上の秩序は未だ歪んだままだ。 槍神教を相手にした戦いは終わらない。 それでも、世界を変える下準備にはなったはずだった。 ハルベルトを、そしてアズーリアを世界に認めさせること。 それが最初の一歩だ。 「ガルズによる十三人の殺害――その最初の一人であった夜の民の群青司教は確かに用奉仕種族を触手で黒衣の中に引き摺り込んでいた。そして、体内から溢れ出た骨の槍で分裂した三つの体を貫かれて死んだ」 そう。これは最初の一歩に過ぎない。 道のりはまだ長く、煉獄と地獄には過酷な戦いが待っているだろう。 同様に、この天獄でも。 「――リーナもメイファー

    3-101 『特権者の英雄症候群、さもなくば――』① - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム
    stranger2ex
    stranger2ex 2022/08/18
    “それが人類の進歩だとすれば、それは邪悪な適応だ。  神に、そして人を超えた新人類に捧げられる為に存在する生贄の羊。  消費されるためだけに『人』の下位に序列化される。”
  • 3-99 澄明なる青空に② - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

    私とリーナの戦いが決着した。 天地での戦いが終わり、リールエルバが世界の改変をい止める。 その時だった。 別の場所で繰り広げられていた戦いの決着が、状況を更に変化させていく。 巨大な肉塊となった世界槍の頂点付近で、凄まじい呪力が放出された。 吹き飛ばされ、宙に放り出されていくのは、単身聖女暗殺に動いていたマリーだった。 十字に輝く瞳で敗者を見送るのは、守護の九槍第二位たる聖女クナータ・ノーグその人だった。 使い魔らしき紫槍歯虎がマリーの武器である槌と鑿を噛み砕いている。 落下するマリーの額に古傷らしき貫通創が『思い出され』ていった。 見る間に傷口が広がると、過去に処置不能な致命傷を負っていた事になる。 その負傷が原因で、たった今、マリーは死亡してしまったのだ。 未来から過去方向へと突き進む致命の一撃。 聖女クナータの神働術を受けた者は、既に死んでいたことになってしまうのだ。 更に、そこに

    3-99 澄明なる青空に② - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム
    stranger2ex
    stranger2ex 2022/08/18
    “「それが、貴方の望みなんだね」  灰色の呪文がマリーの言葉を解析していく。” 中庸さ、欲望の止観、
  • 二度目はいらない - 魔力量しか取り柄がないぼくが世界最高の魔法使いたちをこき使う話(冬麻) - カクヨム

    さて、どうするか。 時間稼ぎとは言っても、今はルシルが戦っている。 遥か上空で二つの光が、何度も何度も衝突しているのだ。 もしかしたら、このままルシルが倒してしまうのでは。 「それはないでしょう」 ぼくの懸念に答えるように、フルーツが返事を返す。 「怒りを演出するために、無駄に魔力を放出しています。あのペースでは数分も持たずに、負けますね」 冷静な感想である。ルシルは当に怒っていると思うし、その原因はお前なんだが。 「フルーツはもう一度姿を隠し、悪魔を滅ぼす剣を作ります。時間稼ぎをお願いしますね、もう少しだと思いますから」 もう少しって、どれぐらいかわからない。 「わかったよ」 疲れた吐息を零している間に、フルーツの姿は掻き消えた。 この会話の間にも、上空では光の衝突が続いている。 憤怒の紅き光と闇の黒い光の戦いは、それでもあっけなく幕切れを迎えた。 「……凄いな」 それは突然のことだっ

    二度目はいらない - 魔力量しか取り柄がないぼくが世界最高の魔法使いたちをこき使う話(冬麻) - カクヨム
    stranger2ex
    stranger2ex 2021/08/10
    一期一会 “本来の意味では、やり直しが出来ないから成功するように頑張れと。  ぼくの意味では、やり直しが出来ても失敗したとしても、もう一度なんて必要がないと。  同じ言葉でもこれだけ解釈が違う”
  • 第446話 梯子 - 迷宮クソたわけ(イワトオ) - カクヨム

    「なぁ、ゴールディ。こいつより上にあと何人いる?」 エランジェスはマルティルスという組織の上級幹部を足蹴にして背後に控えるゴールディに尋ねた。 五十代に差し掛かるかという年配の、マルティルスの顔は酷く腫れており、そのうえで鼻も潰れているために元の顔はさっぱり判別がつかない。 「あと、四人です。エランジェスさん。会長と副会長、それに理事長と幹事長が残っています」 妙な呼吸音を響かせるマルティルスをちらりと見て、ゴールディは応える。 凶暴さを売りにしていたマルティルスは、整った口ひげを蓄えており、常に不機嫌な目つきをしていた。 その冷たい視線にさらされるたび、ゴールディは尻の穴が冷たくなる思いをしたものだが、大勢に恐れられた眼はどこにあるものか、それさえはっきりしない顔立ちになっていた。 場所はマルティルスの私邸であり、周囲には彼の部下や用心棒だった連中の死体も転がっている。 冷酷で、凶暴なマ

    第446話 梯子 - 迷宮クソたわけ(イワトオ) - カクヨム
    stranger2ex
    stranger2ex 2021/08/10
    “組織によって長年に渡って虐げられ、牙を抜かれたゴールディには既に、逃げ出す勇気さえ用意できなくなっていたのだ。”
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