遠くから破裂音が聞こえる。銃声だ。 だけどそれは昨日の様な切れ間の無いものではない。散発的な音だ。 寝床で目を覚まし、僕は身を起こした。 閉じられていたゼムリの目もそれに合わせて開かれる。 「おはようございます。アナンシさん。体調はいかがですか?」 「うん、悪くないよ。よく眠った気もする。君は?」 「実はあまり眠れなかったんですよ。多頭竜という怪物を見て、興奮してしまって」 ゼムリは年相応の少年らしくはにかんで見せた。 グロリアが教会の伝手で連れてきた暗殺者だが、小雨よりも表情は豊かだ。 僕は立ち上がると、簡素な椅子に腰を下ろした。 「そういえばゼムリ、いま『荒野の家教会』はどうなっているの?」 北方領はもとより、王国全土に権勢を誇った『荒野の家教会』も領主府との暗闘、北方の争乱、メッシャールによる侵略などでずいぶんと被害を受けたと聞く。 しかし、ステアも『荒野の家教会』から離れてしまった