「なぜ、今辞めるのか分からない」。 ある富士通関係者は、同社の黒川博昭社長が2008年6月末に相談役に退き、4月1日に副社長になったばかりの野副州旦・前経営執行役上席常務が社長に就任する人事を不思議がる。「秋草直之会長のように社長在任6年、つまり来年でもよかったのではないか」と言うのだ。 3月27日の記者会見で黒川氏は、退任理由に「ワンマン・コントロールの弊害」を挙げた。「役員会などで意見を求めても、誰も発言しない」と吐露した。だがトップはそもそも孤独なものであり,最終決断は自身でするしかないのだから、それをもってワンマン経営とは言えないだろう。それなのに、敢えて“ワンマン経営”を強調した理由はどこにあるのか。 「私の能力が会社の成長の限界になってしまう」という黒川氏の発言からは,追い詰められた状況がうかがえる。黒川氏はプロフェッショナル化と分社化を推進することで、富士通の強さを鮮明にしよ