著: 玉置 標本 (撮影:宮沢豪) とても漠然とした話なのだが、手に職を持った人、「職人」という生き方に憧れている。塗師、大工、寿司屋など、詳しい仕事内容を一切知らずにイメージだけで書けば、伝統文化に裏打ちされた確かな技術と美意識を必要とする、芸術家に限りなく近い職業。そしてなんだか上下関係とかが大変そうな仕事、それが私の中での職人だ。 不惑の歳をすっかり過ぎて、今から職人の道に進むことはまずないのだが、己の来世に向けて、あるいは道を探している誰かに変わって、18歳で進むべき職人の道を決めた方と会ってきた。昭和51年生まれ、私と同い年の刀鍛冶職人(刀匠)だ。 本当にここは令和の職場なのだろうか 各地で今シーズン一番の冷え込みを記録した二月の某日、群馬県桐生市にある将成鍛刀場へとやってきた。工藤将成さんが刀匠として独立し、14年前に構えた仕事場である。鍛刀場としては、かなり新しい場所だ。 冬
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