ニコラス・G・カーの『ネット・バカ』(青土社、2010年7月)を読んでいたところ、ニーチェのタイプライターに関する以下の文章が気になった(pp.34-35)。 万策尽きた彼は、タイプライターを注文した。デンマークのマリング=ハンセン製ライティングボールだ。下宿に届いたのは一八八二年初頭のことだった。コペンハーゲンにある王立ろうあ協会の会長、ハンス・ラスムス・ヨハン・マリング=ハンセンによって数年前に発明されていたライティングボールは、奇妙な美しさを持った器械で、金色に飾り立てられたピンクッションのような形状をしている。大文字と小文字、数字、句読点から成る五二個のキーは、最も効率よいタイピングのために科学的にデザインされたという配列で、ボールの上面から放射状に突き出している。 ニーチェが使ったというMalling-Hansen Skrivekuglenは、現在もGoethe-National