相模原市の障害者施設での殺傷事件は、障害のある人々に大きな衝撃を与えた。事件後に追悼集会を呼びかけた熊谷晋一郎・東京大准教授(42)は自らも脳性まひがあり、社会の中で生きづらさが生じる仕組みを当事者自身の視点で考える「当事者研究」を専門にしている。当時を振り返ってもらいながら、話を聞いた。【くらし医療部・堀井恵里子】 時代を半世紀、巻き戻すような衝撃 ――事件当時の思いはどのようなものでしたか? 熊谷さん 私にとって事件は、時代を半世紀巻き戻すような衝撃を与えるものでした。これまで障害のある私たちが、半世紀をかけて目指してきた方向性が、踏みにじられたようでした。その方向性とは、優生思想の否定や、障害はその人の体の中にあるのではなくて、社会との間にあるという「社会モデル」の考え方です。 でも私自身は、事件が起きた当初は湧き起こる感情を自覚できず、体調不良なのかなと自分の異変を解釈していました