(2020年3月17日公開) 担当:上野 将紀先生 所属:システム脳病態学分野 はじめに 私たちは普段,何気なく動作しているが,この動作が,脳,もっと言えば,神経細胞でつながった回路によって制御されているというのは,よくよく考えてみれば驚きである.脳は外部環境からの様々な五感情報の入力,あるいは自分自身に湧きおこる内的な動機を認知し,それに適応した出力を導きだす精巧な臓器といえる.出力にあたる主な要素が運動で,突きつめていえば,筋肉を動かすことにある.運動は多様だ.喉の渇きを感じコップへ手を伸ばし,熱いものを触れば手を引っ込める.職場に向かって歩き,ピペットを操作する.話し笑うことも,バスに揺られ座っている姿勢や呼吸すらも筋肉の所作といえる.この間に行われる運動の選択がどのようになされ,また600を超えるともされる全身の筋肉をどうやって協調的に動かせるのか.運動とその神経の仕組みはきっと精